第2話


シンパは今日の作業を終え、世話になった人々に挨拶を済ませていた。


「おい、シンパ」


最後の豆のスープを食べ終えて帰ろうとするシンパは呼び止められる。


「今日、お前最後だろ」


「へ、へい。お世話になりました」


「ほら」


一足の新しい靴が渡される。


「いつもボロボロを履いてるだろ。餞別ってやつだ」


シンパは今まで共に働いてきた仲間の顔を見た。

一人一人がシンパに別れの言葉を送ってくれた。

一緒に働いているだけ、そう思っていたがシンパが考えるより強い繋がりだったようだ。

シンパは気づけば涙を流していた。

渡された靴を抱えたままボロボロ泣いた。

しばらく落ち着くまで仲間と最後の時を過ごした。

それからシンパは大急ぎで帰路についた。

息を切らせて走りいつものパン屋の裏口の扉を叩く。

いつも通り半分開いた扉から代金と紙袋の受け渡しをする。

代金を数え終え閉まろうとする扉をシンパが慌てて止める。


「あ、あの実は引っ越すことになりまして、これで最後になります。い、今までありがとうございました」


あっそ、と小さな声が聞こえ扉が閉められる。

一瞬呆気に取られるがすぐに帰路につく。

毎日夜遅くにくる客。

元々よく思われていなかったのだ。

気にしなくてもいいそう言い聞かせて自宅へ急いだ。

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