第2話
前回のあらすじ、タイランの従者登場。
「明日出発します」
「明日出発します!?」
朝食を終えた後、ゴロゴロしようとしたところでリリーに呼び出される。応接室チックな所には他の勇者パーティーの仲間とメイがいた。
ちんちくりんのリリーは投げナイフを使って戦い、感情を読み取ることが出来る能力を持っている。度々俺の邪な感情を読んでは蹴りを入れてくる。四天王戦の時にはナイフを壁に当てて跳ね返したり、自由落下でナイフを敵に当てたりなど無茶苦茶なちんちくりんだ。
「次の目的は南の街と決めていたんですが、王都と街の間にある村からの商品が届かないと、馬鹿がごねるので、不本意ですが早めに出発します」
馬鹿って王様の事だろうか...
「商品てなんだよ、そんなに大事なものなのか?」
「馬鹿が言うにはとある画集だそうです」
「画集って... ああ... 」
重度の女好きがごねるほど手に入れたい画集、いかがわしいやつだこれ。
「お父様が絵画好きとは知りませんでしたが、そこまで大事な画集なんでしょうか」
なにもわかっていないスズは天然というか純粋というか。
スズはこの国のお姫様で、魂を操って、主に治癒をする事が出来る能力を持っている。見た目と喋り方はおっとりしているんだが、手持ちの杖を使わずバリバリ拳で殴ってくるし、物語のことになると怖い一面を持っている。
ちなみに俺の魂はクソ女神が管理しているので、治療は出来ませんとな。クソゲーです。
「とにかく、画集を持ってる商人をとっ捕まえて、そのまま四天王を倒せば良い訳だろ?どうせ倒すんだから今も後も変わんねえだろ!」
タイランが豪快に笑い飛ばすが、俺としては一週間... いや一ヶ月は休みたい所存です。
「まああなたの考えている事はわかりますよ、どうせ走りたくないから休みたいとかでしょう?」
はいその通りです。なにも言わなくても感情を読み取ってくれるの超便利。
「今回は南の街まで距離があるので、走らなくていいですよ。タイランには全力で走ってもらいますから、これで良いですよね?」
嘘つけ、どうせ荷台で筋トレでもさせるんだろう。
「私からは何もさせませんよ、好きなだけ休んでいてください」
ほう?
「俺は荷台で思う存分ダラける。これでいいか?」
「ええ、構いませんよ。私からはなにも言いません」
「よし!じゃあリリーの気が変わらない内に出かけるぞ!」
「今回は屋根付きの馬車を用意してもらってるので、出発は明日になります」
今回の四天王が一発目みたいに精神系じゃなければ俺以外の三人でボコればいいだろ。さすがに二回連続で精神系はネタが無さすぎて心配されるレベルだぞ。
それだと毎回俺がついてくる意味もなくなる訳だが。
「リリー様、少々よろしいでしょうか」
「メイですか、久しぶりですね。私に敬語はいらないんですよ?」
勇者パーティーの一員といっても平民だからか気を遣うリリー。
あれ、でも言葉遣いを気にするんなら、リリーさんってタイランもスズも呼び捨てじゃなかったっけ。
「いえ、タイランお嬢様のご友人ですので。それよりもお願いしたいことが... 」
「ああはいはい、どうせまた稽古でもつけて欲しいって言うんでしょう?そこの脳筋じゃダメなんですか?」
タイランに向けて顎をクイっとやる。当然タイランさんは血管ピクピクで...
「リリー、パワーでは俺の方が上なんだぜ?」
そういう所だぞ、タイラン。
「はい、わたしの武器では素早い敵と相性が悪いので、リリー様にお願いしたいのです」
確か今朝起こされたのは片手剣だったか... 小回りが利きそうで素早い敵との相性も悪くないと思うんだが?
リリーに特訓と称してされた事を思い出すが、そこには擬音が大量に混ぜられた、リリーの感覚によって成される教えしか出てこない。
リリーが... 稽古?
「おいド阿呆う勇者、私が感情を読み取れるのを忘れたんですか?」
げ、また蹴られる...
「まあ、いいでしょう。私にだって稽古が出来るって事くらい見せてあげます。メイ、ついてきてください」
「ありがとうございます。それでは中庭でお願いします」
「治療が必要になるでしょうから、スズ... とド阿呆勇者も見学してください」
え、俺部屋に戻って寝ていたいんだが。
「いっでええええぇ!」
スネを蹴られたので渋々着いて行く。四天王を倒したばかりなんだからゆっくり休ませほしい...
*************
道中メイは部屋に寄り、武器を取ってくると言い、先に向かわされた俺達。場所は結構広い中庭で、周りに花壇があるだけの、ドンパチやるにはぴったりな場所だった。
リリーは中庭のど真ん中で足周りを入念にストレッチをしている。
「なあ、稽古って言ってもリリーに教えることが出来るのか?」
一緒に端っこに座っているスズとタイランに聞く。腕組みをして擬音しか発さないリリーを見てきたので少し不安だ。
「教える、と言いましても、タイランさんも似たようなやり方ですし、私はリリーさんのように厳しくは出来ませんから。結局は、私達三人の内誰に頼んでも同じなんですよ」
「うむ、ちなみにスズに頼むとひたすらボコボコにされるぞ。稽古相手をいつも手当てしてたから、そういうのが得意になったんだ。まあ、今は能力があるからもっと過激にボコせるけどな!」
スズにボコられたのを思い出し、少し身震いする。格闘派治療役のスズは恥ずかしいといった風に、昔の事ですから、なんて口にする。
ていうか厳しく出来ないって言ってるけど、一番厳しく出来てるじゃん...
「と、とにかくですね。メイさんもそれは分かっているんです、短い付き合いではありませんし、稽古をつけるのも始めてではないですから」
「へえ、じゃあなんでわざわざリリーに...」
「んなもん、模擬戦しかないだろ!」
あ、なるほど。なんとなくリリーのこれまでの特訓内容の理由が分かってきた。実践形式以外ないのかリリーさんよ...
「もちろんリリーさんもそれは分かっています。だからリリーさんは、足周りを入念に解しているんですよ」
「へえ... 」
... よく分からないから黙っておこう。
「お、メイが来たぞ。やっぱあの武器はカッコいいよなあ、さすが俺の従者だ。」
中庭の入り口を見ると、メイが歩いてくるのが見える。重たそうな何かを両手で引きずりながら歩き、リリーに挨拶をする。
「あれは... ハンマー?」
「い、一度触らせてもらったんですがとても重かったです... 両手じゃないと持ち上がらなくて... 」
いや持ち上げたのか!?俺の身長位あるし、頭の部分とかめっちゃでかいんだが...
メイは所々尖っている金属のハンマーの、重たい頭の部分を地面に、自分の手前に持って行き、柄の部分を両手で握っている。
「スズ!開始の合図をお願いします!」
「え、えーと... それでは、始め!です...」
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