とあるカフェ
Kai
第1話 一人目
――――カランコロン
重たいドアを開き、とある客がやってきた。
「いらっしゃいませ。」
「あ......こんばんは。」
「こんばんは。」
その客は少し、立ち止まった。
どうやら、悩みを解決してくれるカフェがあると聞き、車で、眠たい目をこすりながら、やってきたのだが、そのカフェには、席が一つしかなかったのだ。そして、店内は、天井にぶら下がっている電球が、うっすらと光っているだけで、かなり暗く、不気味なカフェだった。
(席が一つのカフェって.....)
「いかがなさいました?」
「い、いえ....」
「お好きな席へどうぞ...。と言っても、席は一つしかありませんが....フフフ」
「は、はい.....失礼します.....」
そこで、ようやく店主と思われる人物をみた。おそらく、かなり年を取っていると思われ、身長も低く、帽子を深く被っているので、目も見えず、白い顎髭が生えていた。
そう考えていると、
「こちらが、メニューです。」
そういって、一つのメニュー表を、渡された。
メニュー:??? 値段:???
「あ、あの....メニューも値段もわからないんですが....」
「この店は、お客様によって、メニューも異なり、値段は、お客様が決めてくださって構いません。また、お会計は、現金でもカードでもそれ以外でも構いません。」
「え.....それ以外....?」
「はい。なんでも構いません。」
「は、はあ....」
その客は、かなり困惑していた。こんな店に訪れたことがなかったからだ。
「それで、今日はいかがなさいました?」
「あ....はい。実は、相談があって...」
「相談ですか。」
「はい...実は、かなり悩んでいることがあって....」
「そうですか。それでは、長丁場になると思うので、その前にこちらのコーヒーをどうぞ。」
「あ...ありがとうございます...」
そう言って、目の前に、コーヒーを置かれた。白いコップに、コーヒーが渦巻いていた。かなりいい香りがした。そうして、一口、流し込んだ――――
じんわりと胸が暖かくなるようなコーヒーだった。
「どうですか?」
「すごくおいしいです....」
「それは良かったです。自分でもかなり気に入っているコーヒーなんですよ。」
「へぇ....」
そこで、沈黙が訪れた。
客は、悩んだ。本当に、この怪しげな店主に相談して良いのかと
しかし、それでは、わざわざ真夜中にここに来た意味がないと思い、相談することに決めた。
「あ、あの....少し悩みを聞いてもらっていいですか....?」
「もちろんです。」
「あの....実は、僕....小説家になりたいです....。」
「ほう...良いじゃないですか。」
「ですけど、今は、会社員をやりながら、小説を書いてて....」
「はい。」
「正直、会社員をやっていると、残業もあったりして、なかなか小説を書く時間も当てられず....あと、自分が本当に、小説家として生きていけるのかがすごく悩みで....」
「なるほど.....」
そこでも、また沈黙が訪れた。
「あなたは、いつから小説家になりたいと思っていたのですか?」
「そうですね....小学生の頃から、本を読むのが好きで、大学生の頃、初めて小説をネットに上げてみたんです。実際、それは、すごく充実した時間だとは今になっては思えたんです。けど、実際は、ネットに上げてもなかなか人には読んでもらえず....そして、悔しくて、もう一回挑戦してみたんですが.....その小説も泣かず飛ばずで....そうして、小説家になりたいなとは思いつつも、自分の実力では無理なんじゃないかと思い、結局、就職してって感じで....」
「あなたの小説への思いはかなり強いのですね。」
「自分で言うのはあれですが....人一倍には持っていると思います...」
「そうですか....それでは、一つ質問させてください。」
「もちろんです。好きな小説でも、作家でもなんでも!!」
小説好きの彼にとって、店主が興味を持ってくれたのかと、すこし喜びを覚えた。
「あなたは、このまま小説家という道を諦めて、後悔しないですか?」
「――――っ...」
胸を突かれたような気分だった。
「それが、答えではないですか?」
客は気づいたのだ。自分は、自分の実力を言い訳にして、逃げていただけなのだと。
’’自分の後悔のないような人生を送りたい’’そんな気持ちを、後押しされたような気分になった。
「ちなみになんという名前で活動を?」
「’’シュトラール’’。ドイツ語で’’光’’や’’輝き’’を表す単語です。」
「それは、素敵ですね。」
そうしている内に、コーヒーの入っていた、コップの底が見えてきた。
「おかわりは要りますか?」
「いえ..今日は、この辺で失礼します。」
「かしこまりました。」
「それで、お会計なんですが、やはり、僕はお金で払います。」
「承知いたしました。」
「えっと、一万円でお願いします...。自分としては、本当にこれぐらいの価値のあることなんです。どうか、受け取ってください....」
「かしこまりました。ありがたく頂戴いたします。」
そうして、席を立ち、客は、最後に礼を言おうと、
「今日は、本当にありがとうございました。」
「いえ、私は何もしていません。決断をしたのは、’’あなた’’です。それを、どうかお忘れなく。」
「そうですね....それでは失礼します...。」
「ありがとうございました。おやすみなさい。いい夜を。」
――――カランコロン
そう聞こえて、客は店をでた。
その客は、一目散に車へとむかった。今すぐにでも、小説を書きたい。そんな気持ちだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜今まで、ラブコメを書いていましたが、今作品は、小説なのか....?初挑戦なので、暖かく見守っていただければ幸いです.....。
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