ケモミミ幼女にTSさせられて破滅するはずが、なんか違う展開になるお話

うにとかに

第1話

 高い魔法技術を持ち、栄華を誇る王都にも、闇の部分は存在する。

 

 王都の中心部から遠く離れたスラム街。そんな治安の悪い地域に、店を構える一人の男性が居た。

 その男性は奴隷商。おそらく20代後半の男性、噂では異世界からやってきたとされている男性は今、手首を縛られ店内の柱に括り付けられていた。

 

「くそっ、離せ! おめぇら何しやがる!」


 そんな男性の前には、ボロボロの布切れをまとい、首輪をつけた幼い少女たちが立っていた。

 普通の人間はもちろん、エルフ、獣人など、その種別は様々だ。

 その中の一人、手に何やら薬瓶のようなものを持つ一人の少女が男性に言った。

 

「あなたは私たちに酷いことをしてきました。今度は、あなたが同じ目に合う番です」

「なっ、てめぇ、やめろ!」


 男は複数人の少女の顔を押さえつけられる、少女が手に持った薬を無理やり飲まされた。

 

 男の心臓がドクンと強く鼓動する。顔に生えていた無精ひげがすべて抜け落ち、荒れていた肌が白くきめ細かくなってゆく。

 

 手、足、胴体、体全体が小さく小さく縮んでゆく。その背丈は薬を飲ませた少女よりも小さく、おそらくは10歳に満たないくらい背丈だろう。

 

 髪質が硬く荒れた物ではなく、細く柔らかいものに変わり、肩にかかるくらいまで伸びる。

 

 彼の耳の位置が上へ上へと移動し、人間の耳から獣の、犬の耳へと変化した。

 

 背部からは人間には存在しない、毛におおわれた尻尾が生えてくる。

 

 そして、彼の男性としての象徴である股間のふくらみがどんどんと小さくなり、完全に消失する。

 

 体が小さくなったことで両手が解放されたものの、その姿は男性の姿は見る影もない、だぼだぼになった衣服を着た、可愛らしい幼い少女の姿へと変化していた。

 

「くそっ、お前ら許さねぇぞ...」


 そう声を発する元男性の少女。低かった声は影も形もなく、甘く高い声へと変化していた。

 

「いいざまですね、ユキさん」


 ユキ、そう呼ばれた元男性の名を呼んだ少女は、ユキを見下しながら言い放った。


「これから、これまで私たちが受けたことを、あなたにも受けてもらいます。皆さん、入ってください」


 そう少女が言うと、三人の女性が入ってきた。

 

 一人は人間の女性。栗色のロングの髪が特徴で、王国司書の制服を着ている。


 もう一人はエルフの女性。露出の高く、それでいて高価なドレスを身にまとっている。

 

 最後は全身傷だらけで褐色肌の、ウサギ耳を持った女性。体の一部に鎧をまとっている。明らかに闘士風の女性だ。


「おめぇらか...はっ、俺が昔売り飛ばした奴らじゃないか。どうせ俺に仕返しでもしに来たんだろう。これもお前らの差し金か」


 かつて自分が売り飛ばした奴隷の少女たちが成長し、ユキの前に居る。そして今ユキは、ユキと彼女たちが出会ったときと同じ背丈。

 

 普通であれば、ユキの立場になれば絶望するだろう。実際、ユキも強がりながらも、絶望的な表情を浮かべている。

 表向きは。

 

(よっしゃああああ! 長年待っていた展開が来たあああ!)


 ユキは心の中で、大歓喜していた。それもそのはずである。ユキは一種の、破滅願望持ちであった。


(17歳の頃、神様のミスだかなんかで異世界へ転移されて、どうせなら美少女になりたかったのに、そのままの姿で強い筋力と魔力だけ転移させられ、苦節11年)


 奴隷商なんて始めたのも、彼女たちを辛い目に合わせていたのも、ようやく手に入れた獣人の少女になる薬を、奴隷たちにわざわざ存在を説明し、わかりやすい場所に置いていたのも、全てこの時のためであった。

 すべては、『美少女になってぐちゃぐちゃにしてもらうため』。


(ついにこの時が来た。このあと俺は痛い目にあわされ、懇願しても解放してもらえる、苦痛と望んでない快楽でぐちゃぐちゃにされるんだ。そのために薬には、感度を大きく上げる薬も混ぜておいた。その苦痛が何十年続いたっていい、死んじまってもいい。やりきったぞ)


 ユキへと迫ってゆく三人の女性。


「く、来るな!」


 ユキは拒絶するふりをしながら、この先に待つ苦痛の予感に歓喜していた。


〇〇〇


 王都の一角にある貴族の屋敷。その中、巨大なソファには、ユキを捕まえた三人の女性。

 そんなユキはというと、ソファの中央に座らせられている。それも、最高に可愛らしいピンク色でふりふりのドレスを着せられ。

 周囲には、菓子やジュースをいつでもユキへ与えられるよう、複数人のメイドが待機している。

 

(あるぇ?)


 予想していたものとは全く異なる状況に、ユキは首を傾げた。


「おいお前ら! なんで俺に、なんというか、復讐しないんだ!?」


 ユキがソファから飛び降り、耳と尻尾を立てながら怒鳴るが、その可愛らしい容姿と声から、まったく怖さを感じない。

 そんなユキの言葉に、三人の女性は。

  

「復讐です?」

 

 司書の制服を着た黒髪の人間の女性が、首をかしげる。

 

「復讐ですかぁ」


 露出度の高い赤いドレスを着たエルフの女性が首をかしげる。

 

「復讐ねぇ」


 闘士である、褐色ウサギ耳の女性も、首を傾げた。そして、ウサギ耳の女性は続ける。

 

「復讐も何も、ユキ、お前があたしらにしたことを思い出してみろよ」


 そう言われ、ユキは過去、彼女たちに行った仕打ちを思い出そうとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る