第7話 月夜の公園
──────5月に入って少しずつ夏の匂いがしてきた頃。 僕は翔を夜中に連れ出した。
「かけ、ちょっと出かけない?」
「どこ行くの?」
「別にお前置いてってもいいけど。」
「やだ!僕も連れてけ!」
「眠くないの?」
「大丈夫。」
僕は翔の手を取って、鍵を持って家を出た。
この日は日中が暑くてまだその余韻が残っていた。
5分ほど歩いていつもの公園へ。
翔をベンチに座らせて隣に座った。
「今日も月が綺麗だね。」
「ね。綺麗。」
僕は自然と翔の肩を抱き寄せていた。
「なんかさ。」
「うん?」
「いつもと変わらない。でも、何かが違う。」
「なんの話し?」
「僕らの関係性の話。」
「変わんねーよ。でも、お前の指にはそれが付いてる。」
「…責任だよね。稜太を死なせない責任。」
「……。」
翔は何かを感じ取っていた。
「いいよ。重いなら。別に出してる訳でもない。」
「感じ取れちゃうの!だから…」
「だから?」
「僕は無力だなって思う。なんにもしてあげられてない。」
「俺、最近真っ直ぐ家に帰ってない?」
「帰ってきてくれてる。」
「なんでかわかる?」
「僕がいるから。僕がうるさいから。」
「なんでお前はうるさくなるの?」
「僕のわがまま。」
「どんな?」
「…稜太とお話して、稜太とご飯食べたい。僕の作ったご飯食べてもらって、いつもみたいに『美味しい』って言ってもらいたいから。」
「だから下手な事はしない。こんっっなに可愛いやつが家で待ってんのにおかしなことできるわけねーだろ。」
「けど、たまに感じるの!…その、、稜太の心の穴みたいなの。」
「埋められるのお前だけだからな?でもこうやってピンピンしてお前の手引いてここまできてんのは、お前が都度その穴埋めててくれてるから。だからこうやってお前の頭撫でられてる。」
「…でも僕、なにもしてあげれてない。」
「特別な事なんていらないの。俺が欲しいのはお前。その瞬間その瞬間生きてる
「…なんかやだ。稜太が言うとちょっとえっちに聞こえる。」
「『
「バカ。」
翔は僕を引き寄せてキスした。
そして…僕の頬を指輪の石で撫でた。
「……今度さ、剣山とかそういう系で撫でて欲しい。」
「また新しいの見つけちゃった?」
「…うん。」
「ねぇ、僕、つけ爪付けてみたい。」
「似合うと思うよ?」
「でもさ、水仕事がね…」
「ゴム手はけば?」
「あんまり好きじゃない。やっぱり直接洗いたいし、キュッキュしたい。」
「じゃあ俺が洗い物するよ。」
「いいの?」
「いいよ?昼食ったもの置いとけ?夜洗ってやるから。」
「悪いよ…」
「お前が可愛くなるなら。」
「…そういうとこ好き。」
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