迦神杯バトルロイヤル

アタラクシア

プロローグ

第0話 廻

「ねぇおじいちゃん。1番強い格闘技ってなんなの?」


ある豪邸の一室。祖父の義真廻楽ぎしんかいがくの膝の上に座り、悠々とジュースを飲んでいた孫の迦神かしんが言い放った。


「最強の格闘技……?」

「うん。パパがね、最近ボクシングにハマってるらしくて。でも格闘技っていっぱいあるでしょ?どれが1番強いのかなって」

「へ、へぇ……パパが……」


最近会社が不安定になりつつあるのはそのせいか。と、心の中で息子に悪態をつく。


廻楽は考えた。最強の格闘技とは。金は余るほどある。何度も格闘技というものは見てきた。なんなら習ったこともある。だからこそ――この永遠に解けないとも言われる謎の深さはわかっていた。


しかしまだ幼い孫に曖昧な答えを返すのは将来に影響するやもしれない。


「えっと……」


それに気になる。――最強の格闘技がなんなのか。



「――あ」


そんなこんなで閃いた天啓。自分が誇ることの出来る最高の物。それは資産。使っても使っても使い切ることができないほどの資産。その使い道が思いついた。


「――見てみようか」

「え?」

「最強の格闘技。なにか見てみよっか」

「――見るー!」



かくして切られた戦いの火蓋。最強を決めるゲーム。最愛の孫の名前を付けた戦いの名は――。


『迦神杯バトルロイヤル』

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