2.気がつくと、アサドは医療ベッドに寝かされていた。
アサドは「管理No.93201」の世界で「火炎の魔王」として君臨していた。
最後の記憶は勇者一行に敗れたシーン。
その後どうなったのか、その辺の記憶はない。
(ここは……?)
アサドは身体を起こそうとしたが、
(うッ)
身体が動かない。
激しい痛みが走る。
(重症らしい)
アサドは思った。
すぐに意識を失った。
*
次に気がついた時に、アサドは隣に他の患者を発見した。
同じ医療ベッドに寝かされている。
(5人……いや、自分も含めたら6人か)
皆、全身包帯でグルグル巻きにされている。
頭すら動かせないので見れないが、恐らくは自分もそうなのだろう。
「気がついた?」
ドアを開けて入ってきたのは白衣の女。
髪は後ろで束ねており、顔立ちには幼さが残っている。
「まだ寝ていた方がいい」
女はアサドに語りかけ、枕元へと寄ってくる。
医療機器の調子を見ているのだが、アサドにはその知識がなかった。
(コイツ、何をしているのだ?)
不審に思ったものの、身体が動かないのでどうしようもない。
「これは、おまえら患者の体調を計測する機械だ」
女は話しかけてくる。
「危険はないから安心しろ」
しばらくの間は、女がやってきて勝手に話しかけてくるという状況が続いた。
やがて、包帯が取り払われ、アサドは身体を起こすことができるようになった。
「私は、スン・メイホウ(孫美猴)という」
女は言った。
「お前の名前は?」
「アサド」
アサドは答えると、質問をした。
「コイツらは何だ?」
「お前と似たような存在だ」
メイホウはフッと笑う。
「どこぞの世界で魔王をしていたらしい」
「なんだそれは?」
アサドは訝しむ。
「魔王は我一人のみだ」
「お前はどんな魔王だったのだ?」
メイホウは聞いた。
「火炎を操る魔王だな」
「火炎の魔王か…」
メイホウはどこか懐かしむかのような表情をした。
「ここは?」
と、アサドの隣のベッドに寝かされていた男がしゃべった。
「お前らは何者だ?」
「私はスン・メイホウ。
コイツはアサド、火の魔王だとよ」
「何ッ!?」
男は驚いたような顔をしたが、
「痛ッ」
すぐに顔をしかめて呻いた。
「まだ安静にしていろ。
アサドは回復したが、お前はまだまだ傷が治っておらん」
メイホウは機械のチェックをしつつ、言った。
「お前は何の魔王なんだ?」
アサドは疑問を素直にぶつけた。
「水龍」
男は簡潔に答える。
「フッ、どうやら魔王ってのは言葉少なめらしいな」
「フン」
メイホウとアサドは、一瞬顔を見合わせ、そしてそっぽを向く。
「ここはどこだ?」
水龍の魔王は再び聞いた。
「お前はケガをしている。瀕死の重傷だ。だから治療をした。
今は安静にしていろ」
メイホウは同じくらい簡潔に答えた。
「う、む、そうか…」
水龍の魔王は、そう言うと大人しくなった。
眠ったらしい。
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