第20話 告白


 翔は大樹の家には今までも度々一緒に勉強するためにやって来ていた。


 翔は高校2年のゴールデンウイークの時の事だが、皆でアウトレットモールに出掛けた時大樹が急にいなくなったので探し回ったところ、何と木陰で凛と大樹がキスをしているのを目撃して以来、あの手この手で2人を引き裂こうと試みたが、もう手の施しようがない。


(あんな奴のどこが良いんだよ。運動だって勉強だってルックスだって俺の方が上なのに……何故だよ?大樹に夢中になり、この俺様は蚊帳の外かよ)


 そこで……どうしても凛を諦め切れなかった翔は、親切心を装って大樹の母亜美に現状を話した。

 それは受験も大詰めに差し掛かった。高校3年の夏休み中の事だ。

 大学受験では志望校別に対策をしていくことが重要だ。そのため、志望校別の受験対策ができている予備校に通っている2人は、志望校が同じという事もあって頻繫に家を行き来している。


 高校3年生の夏休みに入ってすぐの事だ。


「嗚呼……もうこれが最後のツーリングになるかも知れないね。と言って多摩川までツーリングしようという話になったのですが、妹の愛ちゃんがいたので近場で済ませました。八王子市内の「富士森公園」に行きました。スポーツ施設が充実している公園で、緑豊かで広々とした場所で、木々も多く季節豊かな花々も咲いているため、散歩する感覚でサイクリングするのにぴったりなスポットだったのでみんなで決めたのです」

 以前大樹が田口にこの様に答えていたと思うが、翔も最後の思い出にと思い参加したのだが、改めて凛と1日中接して見てやはり凛しかないと改めて再確認した。


 今までは受験に追われて恋はおざなりになっていたが、気持ちを抑える事が出来なかった翔は考えた。


「そうだ!大樹と凛がまだ高校生なのにⅭまで行ってしまっている事を伝えたら、絶対に2人を引き裂くに決まっている。そして……凛を俺の者に……」


 だが、大樹がいる前ではこの話は出来ない。そこで……大樹と待ち合わせの時間より早目に大樹の家に到着した。この日は親戚の家に出掛けていて帰って来るのが午後2時頃になると言っていたので、30分ほど早く到着して母亜美に話そうと思った。


「嗚呼……翔君……上がって頂だい。もうすぐ翔も帰って来ると思うから……」


「ハイ!失礼します」

 大樹の母亜美が冷たい麦茶とお菓子を持って来てくれた。


「ありがとうございます。あっ・・・お母さん……チョットいいですか?」


「な~に?」


「あのですね……こんなこと言っていいのか……こんなこと言っていいのか……迷いましたが……あのですね……実は……大樹の事なのですが、実は……大樹が……クラスの女の子と交際しているのですが、それがですね……それがですね……もう……もう……最後まで行っているのです。要は……まあⅭまで行っているという事です」


「ええええええ……まあ本当に困った子ね!」


「もし……もし……妊娠でもしたら大変な事です」


「まあうちの子は男の子だから……痛手は少ないけれど……お嬢様の方がねぇ。ところで……お相手のお名前はご存知かしら?」


「ハイ!水島凛という女の子です」


 見る見る顔色が変わって行く亜美。実は大樹と凛は異母兄弟で、凛は清と泉の間に誕生した娘で、大樹は清と亜美の間に誕生した息子だった。


 亜美は何という事になってしまったのか?これは何とかして2人の間を引き裂かなくてはと奔走する事になる。


 ★☆


 茜は高校2年の夏休みにバイトが辞めて困り果てて店長に頼まれて、凛を紹介した。


 凛はアルバイトなんか全くやる気はなかったが、大親友茜に頼まれ仕方なく夏休み中だけという条件付きでバイトを始めたが、何だかんだと半年近く続ける羽目になってしまった。


 こんな事もあり茜と凛と桐谷は一緒に出掛ける事が多かった。だが、既に茜と桐谷は恋人同士だったが、一緒に3人で出かけている内に桐谷が凛の事を好きになり3人の関係にひびが入ってしまった。


 それはある日の事だ。3人はコンビニの仕事帰りカラオケに行った。茜がトイレに行った隙に桐谷がいきなり凛に近付きキスをした。


 だが、トイレから帰って来た茜は桐谷の只ならぬ態度に何かあったのではと勘ぐった。それからというもの……何か分からないが、桐谷が凛を見る目が違っていたので益々何かあったのではと気が気ではなくなった。


 その後も何度か3人はショッピングに出掛けたり、カラオケにと何度も一緒に出掛けたが、とうとう只ならぬ現場を見てしまった。


 またしても懲りずにカラオケに行った時だ。凛が拒絶しているにも拘わらず無理矢理キスをしているではないか。


 いくら凛が拒絶していても、それでも……茜にすればそれは絶対に許せない行為だ。


 こんな事もあり事件が起きてしまった。茜の兄優は桐谷とは義兄弟で優は桐谷に積年の恨みがある。最近は妹の彼氏だから優に対してお手柔らかになったが、それまでは散々継母と2人で虐めてくれた。


 その恨みは消えていない。



 一方の広瀬家では大問題が勃発していた。それは……言うまでもない。大樹と凛は血の繋がった兄弟。亜美はこれは絶対にあってはならぬ事と、苦しみぬいている。


「あなた……ウウウッ( ノД`)シクシク…どうしたらいいの……ウウウッ;つД`)わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」


「本当に……本当に困った事だ。これは何とかしなくては……」



 ★☆

 茜の兄優は桐谷の事を気に食わない。それは桐谷は継母の連れ子で2人で優をないがしろにして、散々虐めていたからだ。


 そんな時妹茜から連絡がきた

「優……学校では見かけるけど夏休みに入ってから会ってないね?相談があるんだけれど……」


「おう!明日でも久しぶりに原宿に行こうか?竹下通りをぶらぶらして食べ歩き、そして……レストランで話聞くよ。茜のおごりという事で……」


 こうして双子の優と茜は原宿に向かった。


 竹下通りをぶらぶらして人気のクレープ屋さんでクレープを買い食べ歩きした後、喫茶店に入り食事を取った。


「ところで……相談て何だよ?」


「凛がさ……正幸と急接近しちゃって……頭に来てるのよね?」


「だって……凛は……大樹がいるだろうが?」


「だから……正幸が夢中になってるって訳よ。許せなくて……」


「アイツ気に食わねーんだよな。正幸は腹黒いヤツさ!」


「……でも……でも今更正幸と別れるなんて出来ない」


「アイツに騙されているんだよ」


「凛が……凛が……変なオーラ出して男を誘惑するんじゃないの?」


「確かに……凛に夢中になってるヤツ絶対に多い気がする」


「もう……何とかして。許せない!」


 だがこの話には続きがある。この話に翔が加わり更には達也が加わる。いよいよ話も終盤に差し掛かって来る。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る