第8話 スライム星人

「大丈夫ですか?」


二人は倒れている人に駆け寄った。

可愛い女の子だった。


『あ……すみません、ちょっと立ちくらみをして』


「立ちくらみってレベルじゃないくらい、倒れてますけど……」


カイが言った。



「……検査機の反応を見る限り、スライム星人ですか?」


ツバサが言った。



『はい、人間に擬態しながら生活しています』


女の子に化けたスライム星人が答えた。



「大丈夫そうですか?」


『ええ……大丈夫になってきました』


スライム星人は体を起こして、カイとツバサをじろじろと見た。



「何か……?」


カイが訊いた。



『あなたの方が素人っぽくていいかも』


急にスライム星人は、体を透明なスライムに変え、カイにまとわりついた。



「うわっ!!」


「カイ!!」


スライム星人が、カイの全身の表面を覆った。


ツバサは、凝固スプレーを出してスライムを固めて砕こうとした。


が、体を操られているカイがうまくかわすので、なかなかスプレーがかからない。


そうしている間に、スライム星人がカイから離れた。

そして、カイそっくりの形に変身した。



『本物の地球防衛隊の男の子になれるなんてラッキー! 稼がせてもらうからねっ』


そう言ってスライム星人はまたスライムの形になり、道路の排水溝に入って逃げていった。



♢♢♢



――1週間後――


二人は、榊と煌に呼び出された。


「最近、カイとよく似た少年ポルノ動画が出回ってるんだ。まさか、本人じゃないよね」


榊が言った。



「俺じゃありません!! あのスライム星人ですよ!!」


カイは叫んだ。



「なら良かった。一応、確認でね。人間の児童ポルノ規制が強化されている分、宇宙人がなりすまして出演している事件が増えているんだ。だが、宇宙人は架空の人間になったり、二次元情報からは変形できない。”型取り”が必要なんだ。だから、この出演者は、先日報告があったスライム星人だというのは明白だ。まずはこのスライム星人の居場所を突き止めて、逮捕しよう」


榊が言った。



「随分、凝った作りのシリーズものになってるんだよ。タイトル一覧見てみ」


煌がタブレットを二人に見せた。




――待望の地球防衛隊シリーズ! なんと、本物の少年隊員が出演!――


『憧れの地球防衛隊に入るには、秘密の採用試験を受けなければならない! 少年Kの【自主規制】が【自主規制】で【自主規制】される! この快感に耐えられたら合格!』


『過酷な訓練! 鬼畜上官の【自主規制】が少年Kの【自主規制】を【自主規制】して、【自主規制】になってしまう! これぞ愛の鞭!』


『連帯責任! 任務の足を引っ張った少年Kには、チームのメンバーからのお仕置きが待っていた! 彼らに囲まれた少年Kは、【自主規制】を【自主規制】されて、さらには【自主規制】されてしまう! 彼らが満足するまで終わらない!』


『想像を超える快感……! ついに宇宙人と対決する少年K! だが、好奇心旺盛な宇宙人たちに【自主規制】を【自主規制】されて、【自主規制】が【自主規制】になったり【自主規制】になって、【自主規制】【自主規制】【自主規制】だった! 本物の宇宙人の生出演! 無修正ノーカット!』



「もうやめてっ!!」


カイは机に突っ伏した。



「なんか人気出ちゃって、売上ナンバー1らしいよ」


煌が言った。



「そんな追加情報いらないです……」


カイが答えた。


ツバサがお試し動画を再生した。


大抵は嫌がる少年Kが弄ばれるが、最後はKもノリノリに……みたいなパターンだ。



「俺はちゃんと捜査のために全部見たけど、やっぱり嘘くさいというか、素人っぽくしてるだけで演出だな、とは思うよ」


煌が言った。



「煌、動画の評価じゃなくて、捜査に対するコメントをしてよ」


榊がたしなめた。



「ん? ああ、まあ、今回が初めてじゃないだろうから、他の少年少女ポルノも見て、共通点を見つけて制作側から叩いてもいいだろうし、そういう奴らがいそうな場所に直接乗り込んでもいい気がする」


動画がある分捜査自体は楽だし、バックに怖い組織がいても、榊の権力と鬼切丸があれば裁判なしでその場で粛正できる。



「早く捕まえたいです……親が泣きます……」


カイが言った。

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