第6話 後編 クラゲの館

地球防衛隊は9割が野郎で構成されている。

さらにその9割はムサイ系男子だ。

ツバサのような美少年や、榊のような美形はごくわずか。

そんな生活環境で日々のムラムラをどうにかしようとするのだから、多少の人権には目をつむるしかない。


ツバサには”隙あらばどうにかなんないかな”と思っている危ない先輩たちがいっぱいいる。

そんな野獣が暴走しないのは、やはり榊のおかげだった。

榊の階級は特殊で、榊の人生全てを国家に譲渡する代わりに強い権力が与えられていて、不逞の輩にその場で制裁を加えることができるのだ。




クラゲ星人の触手が、ツバサの体に纏わりついていく。

それはもちろん、まだ大人になりきれないアレにもである。


(あー、やらしいなぁ、おい。さっきは撮られたらどうのこうのって言ってたけど、むしろ立派っていうか、なんて言うか、才能? エロの才能? 素人好きな俺としては、カイの動画はストライクだったけど、ツバサのこれはこれで……。あ、そろそろ本格的に……。いや、ヤバいなこれ。ちょっと、諸兄には見せられない……)



『このままだと、今からするアレには、カイ君からトレースしたアレですることもできますが、どうしますか?』


「な、なるほど……。どうしよう……。でもそれに慣れたら、本当にカイとするときに感動が薄れちゃうっていうか……」


『あ、意外ですね。お二人はまだ付き合ってなかったんですか?』


「たまたま僕が、カイのアレにアレしたことはあるんですが……」


『え、それも意外です。てっきり、ツバサ君がカイ君のアレにアレされる方だと思ってました』


「それが、意外に無理矢理アレされてるカイが可愛いくて……。ついついいじめたくなってしまうんです……。なんか思い出したら興奮してきました……」


(気持ちはわかる。カイのアレはアレで才能だな)



デンは、ツバサの自己申告通り興奮したアレをアレしながら、アレにアレをほどこしつつ、ゆっくりアレしたり激しくアレしたりと、ツバサの中の方までマッサージをした。


ツバサの可愛らしい声が、双子クラゲのいやしの館に響いた。



♢♢♢



ツバサはふわふわの毛布に包まり、添い寝をするデンに触手枕をされていた。

妙にデンが男前に見える。



『いかがでしたか?』


ドクが煌に聞いた。



「最高だね。うん、ホント、君たちの友好の気持ちはひしひしと伝わった。準友好型宇宙人を卒業する日も近いね」


『ですよね! ですよね! 僕たちの夢は、早く友好型宇宙人に昇格して、マッサージ店を始めることなんです!』


風俗店の間違いかな?とは思ったが、「夢があるのはいいことだ」と、煌は言った。



『お兄さんも、どうですか?』


興味津々ではあるが、パトロール時間の終わりも近いし、ツバサと違って、階級的に武器を体から離すことが許されない。



「……三分くらいの、ベリーショートコースはありますか?」


『もちろんです! お忙しい紳士のために、がんばります!』


ドクの一本の触手が、煌の下半身に触れようとしたときだった。


ドクの伸ばした触手の先がチリッと焼けた。

空き家が、ミシッと音を立てる。



「……お前たち、静かに裏から逃げなさい……。鬼が来たみたいだから……」


煌が言った。


危険を察知したクラゲ星人たちは、窓からするりと出て、裏の林に逃げた。

ツバサも急いで服を着た。



「煌先輩! これって……!」


床、天井、壁に連続した切れ目が入っている。



「……鬼切丸で、家が輪切りにされたのさ……。俺と、ドクの触手の隙間ギリギリに攻撃された……。はぁ……行こうか」


煌とツバサは、空き家を出た。



外には、鬼切丸を抜いた榊と、傍で緊張しているカイがいた。


「やあやあやあ、よくここがわかったね」


「最近、闇営業してるクラゲがいると聞いたから。空き家は怪しいだろうと思って」


「おー! さすが。今俺たちは、ちょっと宇宙人の生活相談に乗ってたんだ」


「そう。直感的に煌が危ない目に遭ってるんじゃないかと思って威圧をしてみたけど、余計だったかな?」


「うん、素晴らしいタイミング、さすがの神技だったよ。(もう少し遅かったら、俺の先っちょが焼き切られてたな……)」


「なら良かった。彼らはいなくなったみたいだね。帰ろうか」


「ああ、帰ろう。帰ろう。今日は、平和な一日だった。だから早く鬼切丸しまって」


煌は、榊に早くパトロールカーに乗るよう促した。

後ろからツバサとカイも着いて行った。



「ツバサ……大丈夫だったの?」


「うん……今日もクラゲ星人とは仲良くしたよ」


ツバサからいい匂いがする。


「そう……」


カイは複雑な気分だった。


「……カイ……」


ツバサは声をかけたが、カイはどことなく寂しそうな顔で、それ以上の会話もなく歩いた。

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