第14話 旗よ何処へ
トミヨ婆さんもまた、僕が騎士学校に入学するまでにスキルのことを調べ上げたかったようで、かなり困窮しながらも過去の研究資料や歴史的に有名な研究者の【スキルブック】を読み漁っていたようだった。
「制限はあったかい?」
「いえ、回数や上限は今のところ無いと思います」
「ふむ……」
まだまだ謎が多いこのスキルだが、トミヨ婆さんは“ある書籍”に似たようなスキルをいくつか見つけたと言う。
その中でも――。
「スキル【
「ああ」
スキル【変化】は今から遠い昔に実在されたとされる魔人のスキルであった。その効力は相手の容姿、
「お前さんのスキルはあくまでも相手と同格のステータスを自身に付与する。【変化】は言わばコピー能力とも捉えられ、そこに上書きするかのようにステータスを上げ続けられる」
「それって最強なんじゃ……」
だが、僕の能力はそれに近いモノである。だからこそ使い所と使う相手を見極め、このスキルを操れるようにならなければならない。
「また何か分かったら教えておくれ」
「はい。ありがとうございました」
僕はトミヨ婆さんに別れを告げ、最後の訓練を行うため警備隊本部へと足を向けた。
「回復役はまだか!?」
「物資の到着が遅れています! 至急回復役を!」
本部内は何やら物々しい雰囲気で皆慌てふためいていた。血の匂いが辺りを漂い、担架で運ばれている者も1人や2人ではなかった。
「おお、バルトくんか。すまんねこんな状況で」
「副隊長、その腕は?!」
「ああ、これかい。ちょっとヘマをやらかしてね」
副隊長の左腕は包帯でぐるぐる巻きにされ、木の板で固定されていた。
何があったのかと聞くと、近隣に魔物の群が発生し、警備隊はその対応に向かった。幸い死者は出ていないものの、魔物の群は未だに増え続け、怪我人が絶えないのだという。
「隊長さんは無事なのですか?」
「ああ、あの人は無傷で前線にいる。だが、そろそろ限界が近いはずだ。何か手を打たなければと思うのだがね……」
こんな時、力になれればいいけど僕のスキルはまだ謎が多い。盗賊相手に善戦したとはいえ、魔物にも通用するとは限らない。
僕が唇を噛み締めると、副隊長は吹き出すように笑いだした。
なんだか嫌味な感じで腹が立ったが、客観的に見ればひと月ほど訓練を受けただけの10歳の子どもが自分の力不足を悔やむなど可笑しな話である。
「ありがとう、バルトくん。君のおかげで良い案が浮かんだよ」
「は、はぁ……」
彼は「じゃあ、また。試験頑張ってね」とだけ言い残すと足早に去って行った。
最後の最後にお礼も言えぬままになってしまったけど、今この現状では仕方がない。警備隊と隊長、副隊長の武運を祈るとしよう。
「退いてくれ、退いてくれ!!」
家に帰る途中、早馬が一頭町中を爆走してくる。どうやらそれは警備隊本部に向かっているらしく、副隊長の名案というのもコレだと察した。
「避けないと轢かれるぞ!」
疾風の如く過ぎ去った早馬の上には、王国騎士団の旗が
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