第285話 ガラスペンと変化

 今日は朝から工房だ!

 エリックにお弁当をもらって工房に向かった。

(ガラス作る?)

 朝から元気なラヴァは心なしか、炎が艶めいて見える。

 いっぱい魔力を吸ったのだろうか。

「作るよ! ラヴァの力が必要なんだ」

 そう言うとラヴァはふんすと鼻息荒く俺の肩で足をふんばった。

(僕、頑張るね!)

 めっちゃ可愛い。

「頼もしいなあ。お願いねラヴァ」

(うん!)

 ラヴァの頭を指で撫でて、ガラス管を置いてある場所に向かった。

 作業服を着て、ゴーグルをかける。

 色を付ける金と銀、色ガラスも何種類か用意した。

 ペン先は前に作ってたあったものを使う。


 まずは軸からだ。

「ラヴァ、炎をお願い。少し細く」

(わかった!)

 ラヴァが口から細く炎を吐き出す。

 炎がピンセットで持った金属片に当てられて燃えて煙がガラスに付着する。

 ガラス管も熱くなって溶けだしたところを成型する。

 内側に色と模様を。

 表面はクリアガラスで、中に浮かぶようにする。

 球体を軸の前後につけて、持ち手は少し太めに。

 先端にペン先をつけて、調整する。

 冷えてきたガラスペンにちゃんと模様が入っているか、色味はどうか、確認する。

 ペン先の付いている球に透明度の高い緑色がうっすらと浮かぶ。

 軸はペン先の方が濃い藍色で、先端に向かって薄くなる。

 そこをネオンのような緑の筋が螺旋を描いて、先端の球に向かう。

 先端の球の中に緑色の石が入っていてクリアガラスの中に金箔のかけらが入っている。


「いい出来だと思うけど、どうかな?」

(綺麗!)

「そう? 嬉しいな」

 ペンを徐冷庫に入れて屋敷に戻ることにした。

「あー、もう夕方だ」

 グーとお腹が鳴る。

(お腹なった)

「お昼、食べたんだけどなあ」

(健康!)

「健康? 育ち盛りって言って」

(育ち盛り!)

「そうそう」

 それがフラグとなったのか、なんなのか。

 その夜からあちこち痛み出した。


 痛いと訴えたら、大人たちは口を揃えて言った。

「成長痛だな」

 父が顎を撫でながら言う。

「ですね」

 師匠も頷く。

「まあ、もうそんな年なのね」

 母が少し寂しそうにつぶやく。

「声変わりはまだね」

 母が言ってはっとした。

「僕、大人になってきている?」

(大人?)

 母が笑う。

「背は伸びてきているから、きっとゼオくらいにはなると思うわ」

 今は母と同じくらいの背だ。

 もっと伸びるのだろうか。

 せめて師匠くらいにはなりたい。

「この痛いの、薬とか?」

「病気じゃないから、ポーションとかは効かない。痛み止めも必要はない」

 師匠がスパっと斬り捨てた。

「え、えええ?」

 けっこう痛いんだけど!

「鍛錬は痛みがある時は休め」

「そうなの?」

「痛みは身体の悲鳴みたいなものだ。無理はしないようにするんだ」

 師匠は俺に言い聞かせるように言う。

「はい」

 足や背中が痛いので無理をしようにもできないなと思った。


「ルオ様、紅茶をお持ちしました」

 ベッドで唸っていたらギードがやってきた。

 そういえばギードは背が高くなっていたからこの痛みも経験したのかな。

「私も夜、かなり痛みましたよ」

「そうなんだ」

「痛みが治まってくると、今度は喉の調子が悪くなります。声変わりですね」

「あ、そうか。ギードも声が低くなっているから……」

「体が大人に変化していくのですから大人のようになります。あと一カ所、変化があるはずですが、それはまだのようですね」

「あと一カ所?」

「変化が来ればわかりますよ」

 ワゴンをベッドに横づけしたギードはそこで紅茶をカップに注いだ。

「変化かあ。ありがとうギード」

 昔は渋く感じた紅茶も、今では美味しく感じる。

 味覚も子供から、大人へ変化しているのだろうか。

「美味しいよ、ギード」

「ありがとうございます」

 ギードは嬉しそうに微笑んだ。


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