第181話 なんでやねん

「送還、フェニックス」

 とりあえず、返して誤魔化そう。

『な……』

 エセ関西弁の鳥が消えた。


「よし」

「何がよしだ」

 師匠から突っ込みが入る。

「え、何もありませんでしたよ? ね、みんな」

 どうして三人そろって横に首を振るのかな。

 師匠がため息を吐いた。

 その空気を変えるようにアリファーンが話題を逸らそうとした。

「ねえ、その鳥の置物? すごく綺麗だけど……」

 アリファーンが師匠の手にある木箱を覗き込もうとする。

 そうするとまた勝手に口が動いた。

「召喚、フェニックス」

『自分、勝手に呼び出しておいてすぐ返すってなんやねん!』

 ピシッと頬に翼のビンタが入った。全然痛くないけど。

「送還、フェニックス」

『お……』


「……」


 みんなの沈黙が痛い。

「ルオ、聞いていい?」

 アリファーンが沈黙を破る。

「聞いちゃだめ」

「ええ?」

 アリファーンが困った顔をしてちらっと小鳥を見た。

 また口が勝手に動く。

「召喚、フェニックス」

『もう、なんやねん!!』

「僕が聞きたいよ!!」

『大体、あんさん、誰やねん!?』

「ルオだよ!」

『ここはどこやねん!』

「ここは王都の貴族学院だよ!」

『どこの王都やねん!?』

「オーア王国のだよ!」

『オーア? なんや、あの子王国作ったんや。国作るとは言っとったけど』

 ん? なんか、ちょっと引っ掛かる言葉言ったぞ。

 俺の作った小鳥の像そっくりの炎を纏った鳥が、俺の目の前に羽ばたきながら浮かんでいる。

 その鳥は俺の周囲に目を向けた。

 すぐ隣のアリファーンと目が合う。


『なんや! そこにいたんかいな! アリフ!』

「え? 私? ア、アリファーンといいますけど」

『アアリファーン? 名前長くなってるやないかい! 久しぶりだからって遠慮する……』

 そこで炎の鳥は黙って目を眇めてじっとアリファーンを見つめた。

『あんさん、アリフやないやないか!』

「ええ? もとから違いますよ?」

『いや、血は感じるわ……そうや、そうやった。人の子はそない長く生きられへん』

 炎の小鳥は頭を下げてションボリと肩を落とす。翼を閉じたら落下した!

 慌ててアリファーンが両手で受け止めた。

『危ないとこやった。サンキューな。アアリファーン』

「アリファーンです」

『アリファーン、我と契約してくれへん?』

「はい?」

『よっしゃ! 契約成立やな! 名前を付け……』

「送還、フェニ……」

『待てや!』

 こんな変な鳥と契約したら、何とかまでむしられそう。


「あー、ちょっと良いかな? 話をさせてもらっても?」

 カオスな状況に、師匠が立ち上がった!


「……というわけで、このルオのスキルで呼び出されたと思われます」

『ルオ、あんさん、えらいスキル授かってしもうたな』

「……そ、それはどうも?」

 今炎の鳥はちゃっかりアリファーンの肩に止まっている。

「いままで召還したフェンリルは言葉を話さなかったが」

『多分、そっちは虚像やろな。我はアリファーンの血に惹かれたんやないかと思うで』

「わ、私の血にですか?」

『あんさんの先祖、我と契約してたさかい』

 なんか習ったぞ! 確か入学後の試験に出た!

「け、建国の……」

 あ、タビーが我慢できずに言っちゃったよ。

『我、あの子が作った国を見て回りたいわ。もちろん契約せんと、縄張りを動くことも出来ん。しかしなあ、問題が一つあるねん』

「問題とは?」

 師匠は冷静だなあ。

『今はルオのスキルで呼び出されてるんや。一時的にしろ、我はルオの支配下にあるんや。このくびきを外した状態でアリファーンと契約したいんや』

「なるほど?」

 師匠がちらっと俺を見た。

「そうすると、いらっしゃる場所に向かわないとなりません。どこでしょうか?」

『あんさんら、人が霊峰と呼ぶ山におんねん』

「霊峰、ですか?」

 師匠が胃のあたりを押さえた。

『そうや。我の縄張りや』

 霊峰にいるというものの正体がわかってしまった。


「師匠、魔法契約書買います」

「私も」

「俺も!」

「わ、私もです!」

「残念ながら俺もだな。……このアリファーンは王族で、すぐに動くことができません。夏ごろ向かいますのでそれまでお待ちいただけますか?」

『ええで。そうや、ルオ。時々呼び出してええよ』

「え、不敬なので呼び出すなんて……」

『呼び出してええよ』

「はい」

『ほな……』

「送還、フェニックス」

『別……』

 ぽんと姿が消えた。


 あ、師匠ががっくりと椅子に腰を下ろした。


「ルオ、報告、連絡、相談は?」

「申し訳ありませんでした!」

 俺はフライング土下座をした。

(主……)

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