第121話 円満解決
「うーん、ルーンはAクラスなんだっけ?」
「そうです」
「そうだなあ。週に一回くらいお昼一緒するとかかなあ?」
めっちゃ妥協してるよ!
「お昼一緒に!?」
あ、目がキラキラした。
「その時は食堂でね。……タビーも」
「はいはい」
よかった~! 一人で対応は怖すぎる。
「よし、仲良くしろよ!」
「はい」
「はい」
「はい」
ストーキングさえなければいいよ!
「しかしルオ、よくわかったなあ。グフルーンが名前だって」
んんん?
「え?」
「……エルフは家名がないから、里の名前、父親の名前、自分の名前の順に名のるんだ」
「師匠がグフルーン連呼してたから……」
えー、そうなんだ。まあ、平民も家名ないけどね。○○町の何とかって感じみたい。
「は、初めてです! 愛称呼びなんて……う、嬉しい、です」
またもじもじしてる! もしかしてこっちが地なの!?
思わず、師匠、タビーと視線を交わしてしまった。
「あー、まあ、僕もルオって呼んでよ。みんなそう呼ぶから……」
(仲良くするの?)
頭の上から顔を覗き込むラヴァが聞いてくる。
(まあ、敵対はしないかな?)
俺は念話で答えた。独り言になっちゃうからね!
びくっとエルフが震えた。きょろきょろしてる。
「い、今、幼い、子供のような声が……」
頭の上からテーブルにスタッと飛び降りたラヴァが右の前足をあげる。
(ラヴァ。よろしく)
エルフが目を見開いてラヴァを凝視。
それから、俺を見て口をパクパク。俺は頷いた。
次に師匠を見て口をパクパク。師匠も頷いた。
最後にタビーを見て口をパクパク。タビーも頷いた。
「……〇△◇~~~~!?」
声にならない悲鳴を上げていた。あっれ~~?
「あれ? ラヴァのこと気が付いてたんじゃなかったの?」
「せ、精霊、様!?」
「学院には火トカゲで登録してるからルーンもそう思ってて」
「火、火の精霊、様?」
「そう。サラマンダーのラヴァ」
(うん。僕ラヴァ)
もう一回ラヴァは前足をあげた。
可愛い!
エルフは口を両手で押さえて身悶えた。
まあ、可愛いから仕方ないよね!
「は、初めてご拝謁いたしました……」
頭下げそうなんだけど、やめてね。
「え、でも、ほかの生徒にも、見えてます、よね?」
「うん。今、ラヴァは器に入ってて受肉してるからね。もちろん見えなくなることも可能だよ」
(僕すごい?)
ラヴァがキラキラした目をするから頭を撫でた。
「受肉!? そ、そんな、伝説のような……」
「まあな。普通はな……」
師匠は遠い目をしない! タビーも!
ジーッとエルフとラヴァが見つめあっている。
大人しいから放っておこうかな。俺は冷めかかった紅茶を飲んだ。
「あ、一つ、質問があるのですが……」
「なに?」
「ヴァンデラー先生とル、ルオ、はもしかして師弟関係なのですか?」
師匠が俺を半目で見て息を吐く。ごめんなさい。
「ルオは俺の弟子だ。こいつが学院に入学するから王都に戻ってきたんだ」
「そ、ういえば、ヴァンデラー先生は、放浪の賢者と呼ばれて、ましたね」
「放浪」
思わず繰り返してしまった。
「ルオを弟子にしたから、とりあえず今はしてないな」
「そうだったんだ~」
「子供のお前を連れて放浪の旅には出られないだろ」
「確かに」
「わかり、ました……とりあえず、吹聴はしないようにします……」
「すまないな。そうしてくれ」
とりあえず解散。
グフルーンは寮なので、馬車寄せまで送ってくれることに。
「あ、きた。じゃあね」
俺は来た馬車に乗ろうとした。
「また明日な!」
タビーがそのまま歩いて帰ろうとした。
「あれ? 今日馬車は?」
「いや~最近は歩いて帰ってるんだ。そんな距離でもないし」
「送っていくよ。いいかな?」
御者に聞くと頷いてくれた。
「いいって、乗って」
「悪いな」
タビーが馬車に乗ろうとすると、足にアームが貼りついていた。
「~~~~!!」
グフルーンは両手で口を押さえて叫ぶのを止めたみたい。
「じゃ、じゃあね?」
口を押さえたままグフルーンはこくこくと頷いて見送ってくれた。
「まあ、あんな感じなら、友達になってもいいんじゃないか?」
「あのまま大人しければね~アームこんにちは」
(こんにちは!)
ラヴァも降りて挨拶した。
(こんにちは。主を送ってくれてありがとう)
「どういたしまして。ずっと待ってたの?」
(主が結界から出たのがわかったから、土の中を移動した)
「え、タビーの家から?」
(そうだ)
土の中を瞬時に移動? 凄い! 土精霊凄いな!
「結界の中には入らないよう言ったからな」
(あの結界ちょっと怖い効果ついてるから触れないよ)
「え、そうなの? 撃退とかかな?」
(わからないけど、怖い感じ)
「じゃあ、近づかない方がいいんだね」
(僕、平気)
「ラヴァは従魔登録したからだよ」
(そうだっけ?)
「そうだよ。門でしたんだよ? このメダルをしていれば通れるようにね」
ラヴァの首にリボンでつけているメダルをちょんと突く。多分、メダルのなんかを感じてるのかも。
それからタビーの家の近くまで送って別れた。
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