第17話 魔法、魔法、魔法

 俺は気合いをいれると、安物の指輪を光らせ、魔法の発動に入る。


 今回はまず、一回、中級の魔法を最初に使用する。普段、モンスターを殲滅に使用している初級魔法の複数使用に比べると使用する魔力量は段違いなのだ。


 理解力スキルのお陰で失敗することはないが、それでも貴重な魔力がもったいなくて、気合いの入り方が違う。


 光らせた手を地面につけながら、俺は使用する中級魔法の名を告げる。


「探査」


 地面につけた手のひらから魔力が広がっていく。

 それは王城の範囲を軽くこえ、その周囲の状態をソナーのように伝えてくる。


 得られた情報に反応してフル活動する、俺の理解力スキル。

 その「探査」魔法で得られた情報をもとに、それ以上の推察と推理で、理解力スキルから莫大な情報が俺へと、フィードバックされる。


 そう、この「探査」こそが、使用魔力量がもったいなくてなかなか使えない、俺の奥の手の一つの中級魔法だった。


 そしてこの中級魔法は、俺の理解力スキルと物凄く相性が良かった。


 ──まあ、単体では効果が微妙なのが、外れスキルの外れスキルたる所以だけど


 俺がそんな中級魔法の結果に満足していると、レーシュたち三人が不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「こほん。あー、次だから」


 三人とも、何も言わない。ただ、考えている事はよくわかった。王城ごと、ここら辺を更地にする魔法を使うからしばらく護衛をお願いと俺が言っていたのに、言ってた本人がただ地面に手をついているだけなのだ。そして、探査自体は何が起きているか、周囲から見てもわからない。


 三人が疑問に思って当然だろう。


 ──まあ、その隠蔽性も、探査が中級とされる理由なんだけどね。調べている事が相手に気づかれないアクティブソナー、みたいなものだし。


 そんな疑問を胸に秘めていても、レーシュたち三人は、文句の一つも言わない。それどころか、俺の事を信じてくれているのか嫌な顔一つせずに、王城から出てくるモンスターが俺へと近づかないように、対処してくれていた。


「三人とも、俺の近くに」


 その信頼を損なわないように、俺は一言声をかけると、続けて魔法を使用する。

 今回はいつもの、コスパのよい初級魔法だ。


「水滴」「変質」「潜れ」


 産み出したのは、無数の水滴。

 前回は毒に変えたが、今回はその水自体の特性を変質させ、浸透性を上昇させる。

 それを先ほどの探査と俺のスキルによって把握した、地面の中の最適な場所へと潜らせていく。


「ここら辺と、ここら辺か。よし」「振動」


 四度目の初級魔法。地面の中で、浸透性をあげた水滴を振動させる。


 突如として、大地がゆれる。次の瞬間、王城がゆっくりと地面へと沈み込み始める。

 支えを失った王城の建物が軋み、柱や壁が折れ曲がることで、雑然とした音が周囲に響きわたる。


 そう、大地を液状化させたのだ。

 中にいるモンスターごと、王城が地面へと沈み込み呑み込まれていく。


「え、」「うそ……」「すごいっ」


 レーシュたち三人の驚きの声を背に、王城はすっかりとその姿を消したのだった。

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