第13話 ダンジョン攻略3回目 part3 ボス部屋へ

 さあ、愈々いよいよ最終決戦だ。


 全員で車座になり、ゆっくり、と時間を掛けて朝食を摂った。

 オレは、ふと、思いついた事をマータに進言した。

「おお、それは良いですね、是非やりましょう!」

 マータも賛同してくれてやり方を全員で共有する。

 そして、その場で肩を抱き合って全員で円陣を組んだ。

 最初の発生はオレにと近衛の2人に言われて僭越ながら声を張りあげた。


「ラスボスを倒すぞ ――――――っ!!!!!」


 オレの叫びに全員が唱和する。


「「「「「「「お ――――――っ!!!!!!!」」」」」」」


 勢いがついた。

 そして、オレたちはボス部屋に突入したのだった。


 待つほどもなくボス部屋の中央に煙が生まれ、それが3体の魔物を形作ってゆく。

 巨大なオーガ(上位種に間違いあるまい)1体とハーピィ(ティアラをしている方)2体だ。

 いつものオーガは2メートルくらいだったが、ラスボスは3メートルを超えているかも知れない。

「『ネームド*』というヤツだなっ!」

 マータが解説してくれた。

 長く群のボスを務めていたり、魔人から名前を貰ったり、後は突然変異的に生まれる『上位種』で、魔物でありながら固有の名前を持っている事から『ネームド』と呼ばれるのだそうな。


 敵が3体の場合のフォーメーションは、

 中央の敵にマータ、

 左がチチとピー、

 右がオレとプー、

 2列目にイクイクとチンチン、

 最後列にヒメ、だ。


 何度も実践で練度をあげてきた陣形だ。今回はマータに負担が掛かるが頑張って貰うしかない。

 それだけオレたちが左右の2体を早めに倒す事だ。

 チンチンの闇魔法『行動遅延スロー』が早くも起動して、左右のハーピィの飛翔を遮る。

 その間隙を使ってオレたち4人で2体を攻める。

 右の個体にオレが上段から切り掛かると、左へ躱したハーピィの脇腹をプーのロングソードが突き通す。

 そいつが、ぐらり、とよろけたトコロをオレが横薙ぎに首をねた。

 魔物とはいえ〝女顔〟なので、心が、ちり、ちり、するが致し方ない。

 左のハーピィを見ると、チチたちも押し気味だ。

 オレはプーに目配せしてマータの援護に向かう。

 ネームドオーガの巨大な刀をマータが幅広のロングソードで受け流す。彼女の胆力と腕力に敬服する。


 ―― が、ヤバいっ!


 ネームドオーガの頭上に魔法陣が構築されてゆく。

 ただのオーガのヤツでもオレの『※ スキル【かばう】』でやっとだった。

 その上位種のコイツの魔法はどれだけのモノか?

 あの魔法さえ発動させなければオレたちにも可能性はある……筈だ。

 と、その時 ――

 いつもの金属的な声が頭の中に響いた。


  ※ スキル【魔法陣解除キャンセラー】を獲得しました。


 何ともで笑うしかない。

 しかし、有効な魔法に違いない。

 使い方は……頭の中に浮かんだ。

 腰撓こしだめにした掌底を対象の魔法陣に向けて放つ。〝かめはめ波〟の片手版?(笑)とでも言えば良いか。

 まあ、やってみるのが早い。


 腰撓こしだめにして、「はあっ!!」っと掛け声と共に掌底を魔法陣に向けて放った。


 ネームドオーガの頭上に展開されていた巨大な魔法陣が一瞬で消え去った。


「「「「「「「なあっ!?」」」」」」」


 全員が呆然と見詰めているが、呆けている余裕はない。

「マータ、喉だっ!」

 オレの叫びにマータが反応し、高く跳躍した。

 幅広のロングソードをネームドオーガの首元目掛けて突きだした。

 が、流石は『ネームド』だ。

 軽く弾き返された。

 オレたち2人もマータに並びネームドオーガを牽制する。

 その時、もう1体のハーピィを倒したチチとピーがネームドオーガの背後に廻って行くのが見えた。

 前から3人でつついてこっちに注意を引かせてチチたちに背後からアタックして貰う。

 一瞬で5人の認識が共有される。

 しかし、それに気付いたネームドオーガが刀を背後に一閃する。


「きゃあああああああっ!」


 ロングソードごと跳ね飛ばされたピーの悲鳴があがる。

 ピーを守るように前にでたチチがネームドオーガの返す刀を受け止める。

「お、重てえっ!」

 足元が、ずずずっ、と床を滑る。

 しかし、逆に前の守りが薄くなった。

「マータっ!」

「おうっ!」

 オレたちは同時に地面を蹴ってネームドオーガの喉に手にした刀とロングソードを突き入れた。


 ―― げぼっ、ぐがはっ、ぼふぉっ!!!


 赤黒い血の塊がネームドオーガの口から迸る。

 更にネームドオーガの肩を踏み台にマータが宙に浮いた。

 そのまま、渾身の一閃っ!

 ネームドオーガの首が飛んだ。

 中空で何を足場にあの幅広のロングソードを振れたのか。恐るべし、マータの筋力。

 しかし、首をねた反動で壁に激突して床に崩れ落ちた。

 慌てて駆け寄るオレに笑う余裕すらあった。何とも凄い武人だ(笑)。


 こうして、オレたち8人は1人も欠く事なく、ラスボスを討伐したのだった。



 ヒメが全員に回復魔法を掛け、チチが簡単に装備の手入れをして、さて……


 ボス部屋の奥に鎮座していた『宝箱』を全員で囲んだ。


 ヒメとチンチンが抱き合って泣いている。

 いや、まだ早い。

 近衛の2人に促されてオレが『宝箱』の蓋に手を掛けた。

 『ミミック*』の可能性も無きにしも非ずだ。オレの左右からマータとイクイクが警戒してくれている。

 数センチ蓋を持ちあげて、問題なさそうなので大きく開いた。

 しかし、中に入っていた〝モノ〟を見てオレは瞬時に蓋を閉じた。

「ど、どうした?」

「何か拙いモンかにょ?」

 皆んなに緊張が走る。

 オレは全員に少し下がるように指示してからイクイクだけを手招いた。

「どうしたにょ?」

 あまり緊張感のない顔でイクイクが訊いてくる。

「ちょっと見てくれ…」

 オレはそう言って蓋を半分くらい開けた。

「これは、何かにょ?」

 『宝箱』の中央に鎮座する〝モノ〟を見て、イクイクが首を捻る。

「見た事ない?」

「初めて見るにょ…」


 そこにあったのは〝電マ〟だ。


 誰が何と言おうとも、それは〝電マ〟だ。

 日本が誇る〝エログッズ〟だ。

 いや、待て……この世界に『電気』などというモノはない。どうやって動かすのだ?

 オレは手に取ってスイッチを押した。

 何も起こらない。

 どうしろと言うのか?

 動かない〝電マ〟で、どうやって『呪いの解呪』をするのだ?

「魔力を注入するんでないのかにょ?」

 流石は魔法使い、目の付けドコロが違う。

「やってみて」

 イクイクに渡そうとすると、

「トノがやるにょ……『呪いの解呪』もトノがやるのだから、魔力もトノが込めるにょ♡」

「やり方、判らん」

「頭の中で魔力を思い描いて、それを指先から『そこ』に流す気持ちで……」

 言われたようにやってみると〝電マ〟が、ぼうっ、と光った。

 もう一度スイッチを押すと、


 ―― ぶぶぶぶぶぶぶぅんっ!


 と、先端部分が回転を始めた。

 紛れもなく〝電マ〟だった。

「どうやって、何に使うにょ?」

 不思議そうに顔を寄せるイクイクの腕を掴んで耳元で囁いた。

「そのまま、動くなよ」

 そしてイクイクの肩に回転している〝電マ〟を押しつけた。

「ひぃ!、あひぃ!、あおぉおおおんっ♡」

 イクイクは一瞬、びく、びくっ、と震えた後、狼の遠吠えのような声をあげた。

「気持ち良かろう(笑)」

「や、やあん……にゃん、にゃのにょ?」

「これは、凝ったトコロを解す道具だ」

 イクイクは少し頬を染めてオレの耳元で囁いた。

「す、少し…………濡れた、にょ♡」

 そんなオレたちの様子を見て、皆んなも側に寄ってきた。

「そ、それをチンチンに使えば……首輪の呪いは『解呪』できるのですか?」

 ヒメが不安そうに訊いてきた。

「まあ、おばばさまの予言通りなら……ですが」

「じゃあ、直ぐにやってくださいっ!」

 チンチンを前にだして勢い込むヒメを手で押さえた。

「気持ちは判りますが、少し準備も必要かと」

「そ、そうです……ね…」

 チンチンも不安そうに見あげてくる。

「一旦、宿に戻りましょう」

 オレは皆んなを見廻してそう言った。

 これを〝使え〟というのは……つまり〝肩凝りを解しても〟意味はないのだろう。


 オレは、心を鬼にして(笑)チンチンの〝あそこ〟に〝電マ〟を押しつける決心をしたのだった。



            【つづく】

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