薄幸の深窓令嬢が転生したら最凶の呪言師でした

四十万定六

第0話 サビ出し

「まあいいや。

 アルル。オメエには神様1.5柱分の神力が宿ってる。まずはそいつを使いこなすようになれ。」


「ええええええええええええっ!!」


 どう言う事なのでしょう。意味がわかりません。


「まずは狙い通りに攻撃を出せるようにならないと、危なくってしょうがねえ。

 コントロールできなくても、オメエが納得できない結果にはならねえはずだが、それも俺の予想にすぎねえ。

 だからよう。ちょっと行って来い!」


と言うなり、ガルバさんはボクを引っ掴んで湖へと放り投げました。



「えっ? えっ? えーーーーーーーーーーーっ?」


 とにかく頭の中は???でいっぱいです。


「忘れてた!! 敵には『ゆ、ばんほー!』だかんな!!!」


 なにか叫んでいます。


「うわああああああーーーーーーーーーっ!」


 湖の真ん中まだ放り投げられたでしょうか。そろそろ水に落ちるはずだと構えていたのに、いつまでたっても衝撃が来ません。

 思い切って目を開けると、トンネルのようなものの真ん中を飛んでいるみたいです。

 後ろは真っ暗、前にはとても小さな光が見えます。そして、その光はちょっとずつ、ちょっとずつ強くなって行きます。


 そんな事をもう随分長い事、考えていたように思うのですが、ようやく光はかなり近くなっていました。その時間は5分にも、5年にも思えるほど、感覚が曖昧になっています。


 光の中に草原の景色が見えています。それくらい近付いたと言う事でしょう。着地の衝撃に備えていたのですが、突然、視界が360度開けると同時に、ボクの体は宙に浮いて止まっていました。

 トンネルを飛んでいた勢いは、抜けた瞬間に消え失せたのです。


 広い草原の向こうに森が見え、その奥に高い山が聳え立っていました。でも、それ以外の方向はモヤがかかって見通せません。

 多分、晴れている方に向かえと言う事なのでしょう。


 下へ降りるイメージをすると、ゆっくりと高度が下がっていきました。

 地面に降り立つと、さっきまでは見えなかった、村の真ん中にある広場に降り立っていました。


「おおっ! 新たな勇者様が現れたぞ!!」


 第一村人のおじさんがボクを見るなり、まるで決められていたかのようなセリフを言いました。


「どうか、村長の話しを聞いてください。」


 どうやらボクに拒否権は無いようです。


「あの山にある洞窟の中に、バルザスと言う魔王がいるので、やっつけて下さい。」


 そんなお話でした。


 バルザスがいる事で魔物が凶悪化しており、村もたびたび襲われるのだそうです。

 魔物はバルザスが発する瘴気から生まれるらしく、倒すと消えてしまうそうです。

 そして、バルザスを倒す事で、勇者は元の世界に帰れるのだそうです。


「旅に出る前に、勇者様の力をお示し下さい。」


 村人に引き止められました。何をすれば良いのでしょう?


「魔王の住む山に向かって、何でも構いませんので、攻撃を放って見せて下さい。」


 随分と遠いので、ようは空中に魔法を放って見せろと言う事なのでしょう。


「山に近付くほど敵が強くなります。勇者様のお力に合わせて、行動範囲を絞らせていただきます。」


 なるほど。やはりゲームのようです。充分強くなるまで、先には進めないようですね。


 いつの間にか村人達が集まって来ました。ボクは小さな子供、、、あれっ、そういえば目線が高いようです。

 それに私が着ているのは、水色のワンピースに麦わら帽子、白いソックスにローファー。

 これは白夜が最期に来た洋服です!!


「う、うそっ!?」


 今、私は白夜の姿でした。どこも苦しくありません。まさか、この体で元気に歩ける時が来るなんて!!


「勇者様、お願いします!!」


 村人に促され、右手の人差し指を目標の山へ向け、ピストルのように構えます。

 この構えは『れ◯がん』って言うんだそうです。以前、看護師さんが教えてくれました。


 そして、ガルバさんから教えてもらった呪文。


『ゆ、ばんほー!!』


と言おうとしてトダっちゃいました。


“YOU B※MHO※E!!”


 なぜか、流暢な英語になっちゃいました!

 でも、意味は分からないのですが、なぜか言ってはいけなかった言葉のような気がするのです。


 すると、指先に何かは分からないのですが、物凄く沢山のものが凝縮されて来るような流れが渦を巻き始めます。それが、突如強烈な光を放ったかと思うと、真っ直ぐに山へと向かって発射されました。

 その軌道付近にあるものは全て吹き飛ばされ、森には木のトンネルが突如として現れます。あっけに取られる暇もなく、謎のエネルギー弾は巨大な光線となって山にぶつかると、強烈な光を放ったのです。


 モクモクとキノコ雲が立ち上がり、土星の輪のように爆風が発生すると、一気に広がり村まで到達しました。もの凄い突風で村人が何人も吹き飛ばされましたが、私はなぜか平気です。

 さらに遅れて


ズドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


 もの凄い爆音がやってきました。雷の一万倍は大きく、恐ろしい音です。村人たちは怯え切っていました。


 辺りがようやく落ち着きを取り戻した頃、今度は突然の雷雨に襲われます。村人達と一緒に、近くの家に避難しました。


 ガルバさんが言っていた、『危なくって仕方がない』はこう言う事だったのですね。


ズズーーーーーーン


 近くに何やら重たいものが落下したような音がしました。

 急いで村人が様子を見に行こうとしたのですが、反対に外から一人の女性が向かって来たのです。

 その姿を見るなり、


「バルザス! 何しに来やがった!!」


 いきり立つガルバさんを無視して、ツカツカと私の目の前まで来るなり、


「わらわを配下にお加え下さい!」


 妖艶な美女に跪かれてしまいました。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この場面は、本編に改めて登場します。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る