減らず口
「許さないからな、許さない…」
減らず口。
彼女はその様に判断した。
これ以上、他の女に目を向けない為に。
彼女は奈流芳一以に一手を打った。
「ちゅっ…はぷっ」
先ずは言っても分からない口を塞ぐ。
口を開いて、奈流芳一以の口と重ね合わせた。
舌先を以て奈流芳一以の口の中を浸蝕していく。
「んぐっ…ぐ、ちゅっ…」
奈流芳一以は驚きながらも、彼女の行動を受け入れてしまった。
変に否定する様に口を離してしまえば、歯が唇や舌にあたって傷つける可能性もあったが、それ以上に、彼女を否定する行動に繋がる為だった。
だから、彼女が呼吸をする間を待った。
無造作に唇を貪った為に、呼吸をする事すら忘れている。
だから、宝蔵院珠瑜が一瞬、口元を離した隙に合間を以て奈流芳一以は言う。
「珠、珠瑜、こんな所で」
行うのであれば、せめて部屋だろう。
扉を開ける為に鍵を取り出す奈流芳一以。
だが、視線が扉の方に向けられると、彼女は自分だけを見つめさせる為に両手で奈流芳一以を抑え込んで顔を此方に向ける。
「絶対に、ボクのだ…ボクだけの」
大きく口を開く。
白い歯が見えたかと思えば、奈流芳一以の首筋に唇を近づける。
「かぷっ」
吸い、そして、歯を立てた。
かなり、強く、血が流れ出しそうな程に、だ。
「いっッ、か、噛み痕を残すなッ」
奈流芳一以は痛みを我慢しながら、彼女を抱きながらドアノブを回した。
そして、部屋に入り込むと同時に、玄関先で奈流芳一以は斃れる。
その上に、宝蔵院珠瑜が馬乗りになった。
「嫌だね、キミの願いなんか、聞いてやるもんか」
衣服を脱ぎだす。
体に纏った窮屈な服を脱ぐと、胸元を曝け出した。
「ボクだけいれば良い…キミだけは」
下着を外して、玄関先で奈流芳一以を抱き締める。
「ボクだけの、味方だろう?」
耳元で、彼女がそう囁いた。
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