美鈴、なぜかモテてますね

 ここは主催者用観覧席。

 あれからドラバルトはここにくる。そして部屋に入るなり、自分を攻撃してくる者を倒していった。その後、血を流し床に倒れているマルバルトへと駆け寄る。


「……フゥー、よかった生きてる。だが……これは、どういう事なんだ?」


 そう言いドラバルトは、持っていた回復薬をマルバルトに飲ませた。

 するとマルバルトは、徐々に瞼を開いていく。


「ウッ……う、うん。……ドラバルト、か」

「いったい何があったのです!」


 ドラバルトはそう言い、マルバルトを心配する。


「すまん……まさか部下の中に、女神崇拝派の者が居るとは思わなかった。それも……一人ではない」

「なぜ父上を狙う必要が……」

「ドラバルトを裏切るように言われたのだ」


 マルバルトはそう言い無作為に一点をみつめた。


「もしかして、それを断ったのですか?」

「勿論だ。自分の子供を裏切る訳がないだろ!」

「そのせいで父上は……」


 そう言うとドラバルトは、苦痛の表情を浮かべる。


「ドラバルト、そんな顔をするな……お前らしくないぞ」

「そうだな。それで、父上を狙った女神推進派の者たちは?」

「もしかしったら、ミスズの所に向かったかもしれん」


 それを聞きドラバルトは、マルバルトをみた。


「やはりそうか……父上、申し訳ないが……俺はミスズの下に向かう」

「ああ、私は大丈夫だ。早く行けっ!」


 そう言われドラバルトは、頷き駆けだす。そして部屋を出ると、美鈴の下へ急ぎ向かった。

 それを確認するとマルバルトは、ゆっくりと立ち上がる。その後、部屋の中を見渡した。


(ドラバルトがやったのか? 数名の者が倒れている。見た限り……死んでいない。なるほど……里を出て、かなり成長したようだな)


 そう思いながらマルバルトは、目を細め笑みを浮かべる。そのあと、ゆっくりと歩き出し部屋の片づけを始めた。


 ✲✶✲✶✲✶


 ここは美鈴とミィレインが居る特別観覧席。

 美鈴とミィレインは、あれからずっとモドルグと話をしている。


「何度も言うけどね。ウチは女神崇拝派や魔王崇拝派の、どっちにもつく気なんかないから」

「それは困ります。ミスズ様がスイクラム様を嫌いなのは分かりました。ですが貴女には……勇者として……いいえ、女性ですので聖女ですね」

「あーえっと、ねぇ。勇者の次は、聖女? どんなに良い言葉を並べても、ウチはその気にはならないよ」


 そう言い美鈴は、モドルグを睨んだ。


「ああ……ここまで頑固な女性をみたことがない」


 モドルグはそう言い、美鈴の手をとる。そして、ウットリしながら美鈴をみた。

 そこにファルスが部屋の中に入ってくる。と同時に、今ある光景をみて目が点になる。

 そうモドルグが美鈴の手にキスをしていたからだ。

 因みに美鈴は、いきなりのことで困惑していた。勿論、顔は真っ赤である。


「ハッ、これはいったいどうなっている?」


 その声を聞き美鈴とミィレインとモドルグは、ファルスの方をみる。


「これは……ミスズ様のお仲間ですね。確か……ファルスでしたか」

「ああ、そうだが……ミスズをどうするつもりだ?」

「どうもしませんよ。ただ、ここまで芯の強い女性にはあったことがありません。そのためかは分かりませんが、好きになってしまったかもしれない」


 それを聞き美鈴は、更に困惑する。そう美鈴は、今でもエリュードが好きだ。

 だが先程マルバルトに、ドラバルトは美鈴のことを好きかもしれないと言われた。

 そして今、モドルグの口から好きになってしまったかもしれないと言われる。

 それらが美鈴の頭をグルグルと駆け巡り、どうしたらいいのか分からなくなっていた。


 一方ファルスはそれを聞き、なぜか今までにない感情を抱いていることに気づく。


(なんだ……この怒りにも似た感情は……)


 そう思いファルスは、無意識にモドルグを睨んでいた。

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