第8話 下層で大暴れ


「ハハハ! そんなもんか私の騎士達は!」


 私は崩れ落ちそうな城壁正門から下層部へと侵入。待ち受ける王国騎士や国軍兵をなぎ倒している。もちろん真剣で斬っているのではなく、鞘に収めながらの峰打ちだ。


 正門で騒いでいたマキュリーあほは恐らく瓦礫に埋もれただろう。やったぜ。


 私の後ろに続く訓練兵5名も、各自得意な武器で騎士達と戦っている。


「お前達1つ教えてやる。何が出来るか、ではなく、何をすべきか。これを頭に叩き込め!」


 訓練兵へ向けた言葉だが、同時に私になぎ倒されている騎士たちにも聞こえるように言った。意図を汲み取れたのなら強くなり、汲み取れなかったのならば考えさせる。そうして精神面での成長を促し、自分の行う事に意味を持たせる。


 これが騎士道であり、これが私の下に就くということ。


 ま、私はすべき事を考える前に私情を優先してしまうわがままな子なんだけどね。


「騎士長ぉぉ!」


 ズウゥゥゥン――ッ!


 私の後方からヤツの声と崩壊音が聞こえる。せっかくヒヨコ共をなぎ倒して楽しんでいたのに。


「ほら、遊んでやるから着いてこい」


 私はマキュリーを挑発して広場へと誘い込む。ヤツも私以外にお興味は無く、一直線にこちらへ向かってきた。



 ――――下層噴水広場――――


 

 約3メートルほどの赤黒いハルバードを持ち、怪力と野生の勘で武功を上げ『聖騎士』に選ばれたのが、この狂騎士バーサーカーマキュリー。背丈は高めの黒髪目隠れ陰キャデカ乳。


 サンクロス王国騎士には3人の『聖騎士』がいる。戦闘力や防衛力が頭抜けて秀でた者に聖騎士の称号を与えていて、マキュリーの他にあと2人いる。この2人は王国騎士の要であり大事な柱となっている。


「騎士長ぉ、そろそろアタシとデート行きましょおよぉ」


 この女は自我が強すぎて、もはや騎士ではなく飼い犬として飼っているまである。マジでめんどくさい。


「無理。というか、こんなところにいていいのか?」


 私は中層の方を指さした。


 中層もなかなかの崩壊っぷりで、おそらくマーズが暴れているのだろう。


「大丈夫ですよぉ。だって……」


 マキュリーが急にハルバードを振るってきた。剣で受け止めるが、相変わらず一撃が重い。


 続けざまにマキュリーは1歩踏み込み、剣で受け止めている私を強引になぎ払った。受けていた剣とハルバードの斧部が干渉し、金属音と火花が散る。軌道を逸らして身を引き、吹き飛ばされるのは阻止した。


「元々アタシ、騎士長を抑えるつもりでここにいますから」


 普段髪の毛で目が隠れているマキュリーだが、髪の隙間から覗く目には自信と殺気が満ち溢れていた。


 元々はこんなにも戦闘狂ではなく、ただ少しおかしな女の子だった。まだ私が訓練兵上がりのヒヨコ騎士だった時にマキュリーと出会い、そこから彼女は段々と力をつけた。

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