ロリ騎士長の英雄譚
@Nola_neko
第1章 戦地演習・大規模攻城戦
第1話 アーサーとキャリバーン
『サンクロス王国』は四方が高い城壁に囲まれ、上層、中層、下層と、土地が段々になって住民の区分けがされている。上層は王族や貴族が住み、中層では騎士や労働者が仕事に励み、下層には多くの国民が暮らしている。
法は王であり、王は法。宗教は自由で各々が正しいと思うものを信じている。
「騎士長、本日の守備位置はこちらでよろしいでしょうか」
「騎士長、訓練兵の修練終わりました。彼らに一言お願いします」
忙し。
毎日白銀の鎧を着込んで修練場へ出向き、兵達の守備位置を考え、修練の経過を見守る。これが王国最高戦力である私、騎士長『アーサー』の仕事だ。
不満がある訳では無い。暖かい家を与えられ、暖かい食事を毎日食べられている。生活は多少裕福で現状にとても満足している。
ただ、もっと敵国や魔族と戦いたい。私が前線に行って敵を蹴散らし、もっと自分が強いと実感したい。
王の剣となり盾となる。王から直々に騎士長に任命されたあの日から、私はこの身を王へ捧げざるを得なくなった。特別忠誠心が高い訳ではなく、剣の才があった訳でもない。愛国心は多少なりともあるが、身を捧げるまでとはいかない。
ならばなぜこの私が騎士長に昇りつめたのか。
それは、1本の剣を見つけたところから始まった。
――――とある農村――――
どこにでもある小さな農村の小さな娘だった私は、親にそっくりのこの金髪が気に入っていた。村の人達は黒か茶の髪色が多く、周りからも羨ましがられていた。
ある時仲良しだった友達に連れられて、少し遠くの山まで山菜を取りに行こうと誘われた。私は手鎌と籠を背負って友達と山へ向かった。
山の中腹まで来たところで私達は急な傾斜の森林を見つける。とても怖くて近寄りたくないな、なんて考えていると、友達が傾斜の下を覗くように言ってきた。
怖かったけれど、友達が見たものを自分も見てみたかった。私は怖い思いを押し殺して傾斜の下を覗き込む。
しかしそこには何も無く、ただ沢山の木々と落ち葉があるだけだった。
ドン――
私は背を誰かに押された。恐怖や怒りよりも先に疑問が頭に浮かんだ。私を押した人物なんて1人しかおらず、一体なんのために私を突き落としたのか。
考える間もなく木や盛り上がった根に身体を打ちつけ、直後全身に激痛が走る。打ったところが痛くて熱い。泣き叫びながらゴロゴロと傾斜を滑り落ちていく。
傾斜が緩やかになり滑るのが止まる頃には、立ち上がれないほどに体力を削られた。
助けを呼ぶ気力も起き上がる力も無かった私は、もう死ぬんだなと子供ながらに察した。視界がぼやけ、意識も朦朧としてきたその時。
岩に刺さる黄金の剣を見た。
触れられる位置にあったその剣に私は手を伸ばす。すると剣は勝手に岩から抜け落ちて私の目の前へ倒れた。
ボヤけながらも覚えているのは、その剣がこの世の何よりも美しく輝いていて、触れると痺れる感覚があった、という事だけだった。
しばらくして私は村の人に助けられた。その際私は、刃がむき出しの剣を抱きかかえて倒れていたという。傾斜から転げ落ちた時の傷はいくつもあったが、刃物による切り傷はひとつも無かったそうな。
こうして私は発見した黄金の剣に『キャリバーン』という名前をつけ、剣の修練を積み、男尊女卑や敵軍、魔族をなぎ倒し、22歳で騎士長となった。
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