第20話 夏だ! 海だ! BBQだー!①
週末。
ついに海に行く日を迎えた。
ちなみにあれから、日帰り旅行から二泊三日の旅行へ変更した。
せっかくなら近くの水族館にも行きたいとなると、1日じゃ足りないとなったからだ。
「着替えなど、忘れ物はありませんか?」
柊さんが荷物を見渡しながらそう聞いてきた。
大丈夫!
俺はサムズアップして答える。
遥も笑顔で「大丈夫!」と答えた。
「じゃあ、出発しましょう」
家を施錠し、荷物を車に積み込み、出発する。
◆◆◆
車を走らせ、はや2時間。
前方に海と建物が見えてきた。
「お、あそこかな?」
「ええ、そうですね。まずはチェックインしましょうか」
「了解————あ、なんかメールきた」
ポンっと軽い音が鳴り、スマホの電源が付いた。涼さんからメッセージが届いたみたい。
「ロビーで待っているんだって」
「分かりました。では、そこで合流しましょう」
橘さんの返答を待って「もうすぐ着くからロビーで合流しよう」とメッセージを送った。
そして車を止め、ホテルへと向かう。
ロビーに入ると、既に涼さんと成瀬さんが待っていた。二人とも笑顔で手を振っている。
「長旅お疲れ様です。無事に着いて良かったです」
「お疲れ様、やっと来たね。待ちくたびれたよー」
「おはようございます」
「おはよう!」
「早いね」
二人と合流し、一緒に受付へ向かう。
四人の高身長に受付の人は少し気圧されていたが、滞りなく、チェックインすることができた。
それにしても、違和感があるくらい人がいない。
周囲を見渡しても誰もおらず、唯一居る人は受付のお姉さんだけだった。
柊さんから「チェックイン時は混乱を避けるため人払いをするそうです」とホテル側からの話は聞いていたが……。ここまで居ないとは驚きだ。
やっぱりどこに行っても、男がいるだけで混乱になる可能性があるんだなぁ。さすが貞操逆転世界。
そう考えつつみんなに続いて、部屋へ向かい始める。
「そういや————」
涼さんが何か思い出したようで話し出した。
「結構厳重な手荷物検査を入る時受けたんだよ」
「聞いてはいましたけど、身体の隅々まで検査されるとはね……」
柊さんが言っていたやつか。
男を含めたグループが予約する場合、全ての宿泊客に一度手荷物検査を受けてもらうことになるって。
にしても、それで男が泊まりにきてるってバレそうなんだが? 大丈夫か? そのシステム。
「過去に、男性の友人女性に発信機と盗聴器を付け、部屋へ侵入するという事件が起きましたので、厳しくなっているんでしょう」
「なるほどなぁ、しょうがないかぁ」
涼さんは納得した様子だが、俺は不安を覚えつつそうこう話をしていると、部屋に到着した。
ドアを開けると、まず目に飛び込んできたのは広々としたリビングスペースだ。
そして大きな窓からは海が一望でき、白いカーテンが風に揺れている。
リビングには、ふかふかのソファとガラスのコーヒーテーブルが配置されており、落ち着いた雰囲気が漂っている。
「うわ、すごっ! めちゃくちゃ広いな」
俺が驚きの声を上げた。
過去に行ったことのあるホテルよりもすっごい豪華なところだ。
「うん、ここならみんなでゆっくりくつろげそうだね」
と遥も頷く。
さらに奥に進むと、奥にはダイニングテーブルがあり、その横にはキッチンも完備されている。自炊ができる設備が整っているのは便利だ。
「朝食はバイキングがあるのですが……他の利用客と男性が出会うことで起こりうる混乱を招かないため、こちらを利用して欲しいとのことです」
「まぁ、仕方ないね。営業を止めるわけにもいかないだろうし」
「そうなんだ、すごいね。今日はバーベキューをする予定だけど、朝食とかは自炊してもいいかもね」
と俺が言うと、成瀬さんも同意した。
そして、ホテルの目玉と行っても良いだろうベッドルームがある。大人数用のようでベッドではなく布団を敷く形のようだ。
部屋の隅に布団が畳まれている。
「これは……」
「うん」
「ですね」
「ええ」
四人が何か通じ合ったような雰囲気を出す。
「後でじゃんけんをしましょうか」
寝る場所を決めようと考えているのだろうか?
今夜は戦争が始まりそうだな……。
「とりあえず、見て回って荷物も置けたし、ビーチに行く?」
「そうしましょうか」
「行こう!」
「あ、更衣室があるからそこにいきましょう」
柊さんが教えてくれた。
「了解!」
みんなが返事を返す。
そして必要な荷物を持って部屋を出る。
◆◆◆
俺は一足先に着替え終わったため、浜辺で待っていた。
さて、誰が最初に来るかなぁ。
予想していると、後ろから声が聞こえてきた。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
最初に来たのは遥だった。
その後ろには涼さんと成瀬さんも続いていた。
みんな前回の買い物で買った水着を着ている。
「いや、全然。みんな似合ってるね!」
そして柊さんだ。可愛いと評判の水着らしいからね。どんなのだろうなぁ。
「すみません、お待たせしました」
柊さんがついに到着した。
視線を移すとそこには、黒い日傘に太ももの上部分までを覆った黒いワンピースの水着、と全身を一色で統一した柊さんがいた。
柊さん黒似合うね。
俺はふとそんな感想が頭に浮かんだ。
「ど、どうですか? 正直、ハードル上がりすぎちゃって緊張しているんですが……」
恥がしそうに頬を掻く仕草をする。
「めっちゃ似合ってるよ! 普段の真面目な様子とはまた違った可愛さが出てる感じがする」
奇抜な格好ではなくて安心したね。ここでマイクロビキニとかきちゃうと逆に反応に困るし……。
「ではみんな揃ったことですし、遊びましょう!」
成瀬さんの合図でみんな一斉に浜辺を走る。
一目散に走って海へ近づき、両手をあげてはしゃぐ遥。
「青い空! 広がる海! そしてきらめく砂浜! 海だーー!」
大声で叫んだ。
すごく楽しそうだ。
その様子を見ながら俺はパラソルの設置をしている。
「うわっ、つめたっ! やったなぁ!」
涼さんと遥が海水を掛け合って戯れてる。
「勢いよく入っていきましたね」
隣で座っていいる柊さんが話しかけてきた。
「だね〜」
「阿宮様は入らないのですか?」
「もう少し、ゆっくりしてからにしようかな」
俺はそう返答し、戯れる二人を眺めていた。
「ねぇ、阿宮くん。日焼け止め塗ってくれない?」
隣で寝そべって背中の紐を解き、日焼け止めを手渡してきた。
「えっ!? いいのか?」
「な、成瀬さん、何を言っているのですか!」
照れたり驚いたりし忙しいぞー、柊さん。落ち着くのだ。
「海に男の子と来たんだから、せっかくなら日焼け止め塗ってもらわないとじゃない?」
微笑んで答える成瀬さん。
スベスベの肌に触れ、塗り広げる。健全な行為のはずなのになんとも言えない恥ずかしさと背徳感がある気がする。
「はい、塗れたよ」
「ありがとう」
「……私も塗ってくれませんか? 肌の出てる部分のみでいいので」
隣で大人しく見ていた柊さんも塗ってほしくなったようだ。
そのため、先程まで成瀬さんが寝転がっていた場所をたたき、来るように促す。
腕や足、背中に塗った。
やはりなんだろうか。この気恥しさは。
日焼け止めを塗ってあげるのが初めてだからか?
そうこうしてるうちに日焼け止めを塗り終え、ゆっくりしてると突然、顔に水がかかった。
なんだ!?
うわっ、しょっぺ。これ、海水じゃん!
水が口に入り、かかったものが海水だと判明する。目を開けるとこっちを見て笑う遥と涼さん。
犯人発見。やり返してやろうじゃないか。
「やったなぁ?」
海水をかけられた仕返しにと俺は海へと走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます