幼馴染はたそがれたい

秋月睡蓮

第1話海老

いつも教室の窓を平沢明日香は見つめている。カリカリと黒板の音が響く教室ではやけに画になる。

俺はそんな幼馴染を見て馬鹿だと思った。いや正確には馬鹿だとわかっているからあえて触れないでいた。

「何で海老フライと海老の天ぷらってこうも味が違うのかな…」 

呟いた横顔こそ誰もが息を呑むほどの美しさでも、発言で台無しである。俺は何も聞こえなかった事にして板書を続ける。馬鹿は伝染る。そしてそれを治す薬はないという。なんともやっかいきわまりない。

気づけば俺のノートも海老フライと海老の天ぷらの違いを書き始めていた。俺の結論は単純に衣が違うこと。揚げる温度が違うこと。この二点だと思う。しかし、明日香はどう思っているのか気になってしまった。

「お前は何で違うと思う?俺は2つの点からくる問題だと思っているが…」 

俺が結論を話すと明日香は目を見開いたがすぐに鼻で笑った。腹ただしい。

「悠一の結論は早計すぎるんじゃない?」

「何?」

俺の結論にケチをつけてくるとは偉くなったものである。

「そもそも使っている海老は同じなのか?そして起源となる国はどこなのか?そこでも変わってくるんじゃない」

勝ち誇るように笑われていうようなことではないが確かに一理あった。オリジンを追求するとは馬鹿も侮れん。

なんて馬鹿やっている間に授業は終わっていた。

「今日の晩ごはんハンバーグがいいな」

「海老どこいった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染はたそがれたい 秋月睡蓮 @akizukisuiren

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る