始末 5
断じて照れたわけではない。
そもそも、こんだけ体重ねておいてだ。
今更。
しかも35歳のおっさんである。
前世も合わせりゃ、70歳のおじいちゃん。
そんなピュアな訳あるか!
まぁ、性的経験に対して?
恋愛経験はびっくりするほど少ないが。
異世界に来てから。
ほぼ風俗。
女将もアレ恋愛とは違うし。
獣っ娘は奴隷だし。
もしかして、ストレートに愛情向けてきたの。
ノアぐらいかもしれない。
……いや、馬車の娘が居たか。
あれもそう言う意味合いより庇護を求めてた感はあるが。
結局俺が避けたちゃったし。
どうともならなかったのだから、カウント外は変わらず。
まさかそれが原因?
期間空きすぎて。
童貞レベルまで耐性が下がっている可能性。
セカンド素人童貞拗らせすぎでは?
そんな悲しい事実に気づいてしまった訳だが。
一旦置いて置いて。
それがあろうとも、断じて照れた訳ではいないのだ。
恥ずかしいとか。
断じてそんな童貞くさい思考回路はない。
俺が黙ったせいか、沈黙が流れる。
まぁ、深夜も深夜。
街もまだ寝ているぐらいの時間帯だし、それも当然。
さっきまでぐっすりしてた訳だし。
沈黙ついでに、ノアも寝てくれればよかったのだが。
どうもそうはならなそう。
横から視線を感じる。
見なくても分かる、絶対ニヤニヤしてる。
嫌ではないのだけれど。
何と言えばいいのか。
気まずいというか、いたたまれない気分だ。
さっさと寝ろや!
あからさまに、疲れてはいそうだったし。
俺のせいで起こしちゃっただけで。
眠いだろ?
ほっとけばすぐ寝落ちするかと思ったが。
期待薄。
どうも、しっかり起きてしまったらしい。
微妙な空気感。
このままは耐えられない。
……そういえば、
「話は変わるが」
「あ、先輩が誤魔化した!」
「うるさい」
ちょうどいいか。
少し、聞きたいことがあったのだ。
別に誤魔化してる訳じゃないよ?
ノアの戯言って事で。
……うん。
王都で発生した暴動の件。
これ、詳しく聞けていなかったから。
いやね。
ずっと気になってはいたのだ。
ただ、あれだけ華麗にスルーされて。
そのままベッドin。
戦闘が始まった。
正確には聞く暇がなかったのだ。
ピロートークとしてはどうかと思うが。
そもそも行為自体そんな可愛い物ではなかったし。
生きるか死ぬかの戦いだった。
戦場を生き抜いたのだ。
その後のトークが物騒でも違和感はないだろう。
文句を受け付けるつもりはない。
完全な俺視点。
自分本位の勝手な言い分ではあるが。
ノアの責任ってことで。
あの状態で気にならない訳ないのだ。
お預けして。
どう考えてもそれが悪い。
うん。
もちろん、口には出さないけどね?
「あぁ、その話ですか」
俺の疑問になんでもないように話し始めた。
3人揃って帰ってきた時点でそこまで心配はしてなかったが。
ってか、何かあったとも思ってない。
日も落ちかけだったし。
初日だ。
候補地も何個かあったはずだからね。
それなりに当たりだけつけて。
続きは明日以降。
そのつもりで帰ってきたのだと判断していたのだけど。
「結構手強かったですよ」
あっさり、そう言い放った。
ハズレたらしい。
予想外。
しっかり解決してきた様子。
流石、優秀やね。
この若さでAランク冒険者やってるだけあるわ。
さっきまで淫魔にしか見えなかった訳だが。
そこらへん。
案外、しっかりしてるらしい。
そして、俺が酒瓶の事で冤罪くらった理由も。
何となく察しがついた。
一仕事終えて来た所にアレはね。
まぁ、少々イラっとくるのも分からなくはない。
結構大変だったのだろう。
魔結晶の事を考えると、だ。
相当優秀な錬金術師がいたと思うのだが。
それこそ、歴史に名を残すような。
そのレベルだ。
ただ、優秀な錬金術師が魔術師として優秀かと問われれば。
それは必ずしも是とは言えない。
今回の主犯もそのタイプだったのだろうか?
本質は、研究者だった。
そういう事だ。
強力な魔道具を有してたらしく。
護衛はそれもあってかなり強力だったらしいが。
1人だけ。
そして、当の本人はそこまでだったとか。
それでも手強かったらしいけど。
技術力に比べればその力はだいぶお粗末なものだったと。
Aランク冒険者と、学園の教師と生徒。
強力なパーティーではある。
しかし、国相手に何かしようってやつには力不足感も否めない。
それでもやりきったのだ。
やりきれてしまったのだ。
まぁ、ノアは若くして到達したからな。
実力も詳しくは知らないし。
Sランク並みであってもおかしくはない、が。
どちらにしても。
そう簡単に勝てるような相手ではないし。
きっとそういう事なのだろう。
時間を与えてたら不味かったかもな。
護衛が1人しかいなかったのも、そこら辺が理由。
おそらくだが。
あまり信用してなかったのだろう。
その分、末端から辿る手がかりは少なくなるが。
代わりに本人が手薄になったと。
駒が市民ではなく。
騎士とは言わずとも、兵士並みであれば変わっていた可能性もあった。
それこそ。
市民を陽動する建前ではなく本当に国をどうこうしていたかも。
やつが加工する魔力結晶の性質上。
数は文字通り力になるし。
信頼のおける仲間であれば尚のこと。
……あぁ、そっか。
それの代わりがウーヌと港町との間にいた山賊だったのか。
俺が片付けてしまったが。
確定ではない。
でも、その説もありそう。
運が悪かったな。
まぁ、俺も散々迷惑被ったのだ。
牢屋に入れられるは、ノアに縛られるは。
結果死にかけたし。
散々な目に遭った。
俺もかなり運が悪かったし。
ここは、おあいこかな。
自業自得?
いや、奴がいなければこうはならなかった。
だから向こうのせいであり。
言うなれば、向こうの奴らこそ自業自得ってことで。
視線を戻すと、ノアが褒めてと言わんばかりの表情。
視線からも強い意志を感じる。
まぁ、俺も被害被ったしな。
初めは自分でどうこうしようとしていたのだ。
その分で言えば、助かったか。
「よく頑張ったな」
頭を撫でてやる。
嬉しそう。
さっきまでの様子はどこへやら。
こうやって見ると可愛いんだけどなぁ。
いや。
普段から可愛いけどね。
ただ、縛られた時。
アレはちょっと怖くもあった。
俺が適当やって、色々混乱させたせいもあるのだろうが。
多分。
溜まってたのも大きいんじゃないかなって。
直前でお預けされ。
その後一回やったけど、あの時は隣室にメスガキもいたし。
あれでも多少は遠慮してたんじゃないかなと。
冷静じゃなかったのだ。
……色欲って怖いね。
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