学祭 12
……え?
現在進行形で王都のあちこちでテロが発生してる訳だが。
もしかしてだけど、これ。
俺が対処しないとダメなやつか?
目の前で真っ二つになってる男は、まぁね。
降りかかってきた火の粉だから。
それを払っただけ。
闘技場で観戦してるところに大規模魔法をぶっ放されそうになったのだ。
そりゃ、対処ぐらいする。
こいつは置いておくとして、それ以外の連中。
外で暴れてる奴ら。
そっちまで対処するのは何と言えばいいのか。
少し、違う様な気がしないでもない。
確かにこのままほっとけば結構な人数死ぬだろうけど。
今も結構な被害が出てるだろうし。
更に拡大していくのは目に見えている。
だが……
そんなこと言ったら、ねぇ。
この世界でも、前世でも。
毎日のように世界のどこかで人は殺されてる訳で。
片手間で助けられる範囲ならともかく、今回のこれはかなりの大規模。
貴族街中心ではあるが、王都全域へのテロと言っても問題ないレベル。
メスガキやノアと違って。
被害者に特段思い入れもないし。
これを助けるなら今まで無視してたそれはどうだったのかと。
世界のどこかで日々犠牲になっていた人間。
それと何が変わるのって話だ。
積極的にどうこうしようとはあまり思えないな。
それに、王都のあちこちで魔力の反応が見えるが。
多少戦力があったところで、ね。
流石に王都を落とせるとは思えないし。
魔力は無限では無いのだ。
確かにかなり大きめな魔力の反応ではあるけど。
だからこそ。
こんな魔法数発打ってガス欠になるのが関の山。
これはテロで、戦争では無いのだ。
被害は大きくなるかも知れないが、それでも限定的。
王都にはノアのようなAランク冒険者がウーヌとは違い複数人いるし。
冒険者以外にも、英雄級の人間が多数。
騎士団の隊長クラスとか。
後は、王宮魔術師なんかもそう。
ここら辺はそれぐらいの実力はあるはずで。
多数の被害者が出ることは間違いない。
しかし、それ以上はない。
他の場所はほっといても大丈夫でしょ。
さっきのは差し迫っていたから俺が対応しただけ。
別に国に金もらってる訳でも無いのだし、守ってやる義理もないか。
それよりも、だ。
少し気になる事がある。
犯人の事だ。
ここまでの才能を持ちながら凶行に走った理由。
つまりは動機だ。
単独犯なら、まぁ。
そういう気狂いもいるかで済んだんだが。
今回のは複数人。
しかも、同じような魔力を持ち。
大規模な魔術を使える才能まで同レベルで持ち合わせていると来た。
さすがに、明らかな違和感を覚える。
あの規模の魔法を放てる人間。
そもそもの母数が少ないってのはもちろんなのだが。
前提として。
社会でそれなりのポジションを築けたはずなのだ。
よほどのやらかしをしなければ。
それだけの戦力。
それだけの価値。
この世界は身分制度の強い世界ではあるが。
たとえ身分が低かったとしても。
力さえあれば冷遇はされない。
ノアが平民出身でありながら講師をやってるのと同じ。
魔力のせいで個人の影響力がバカ高いからね。
戦場でも、平時でも。
強いってのはそれだけで尊敬を集められる。
その上で凶行に及んだ。
被害を与えられたとしても、限定的で。
それどころか、他の戦力に制圧。
最終的には間違いなく殺されるであろう。
この作戦に命を賭けた。
他国からのスパイ?
その線も多少疑いはしたが、無いな。
流石に勿体無い。
庶民でありながら重用されるってのは、それだけ貴重だから。
こんな雑な作戦。
仮に成功したとしても術者は助からない可能性が高いのだ。
そんな人材を浪費する様な事。
仮にやるとしても、敵国の真ん中でフリーにする様なことしない。
絶対に護衛として小隊を派遣する。
そもそもの話だ。
不意打ちするにしても、普通に街の外から魔法を打てばいいだけ。
要人には届かないかも知れないが。
壁を破壊し、庶民に打撃を与えるだけで効果抜群。
しかも、魔力を切らしても撤退が容易で。
少なくとも今回の作戦に比べればはるかに安全性も高い。
それだって危険ではある。
最も効果的な運用場所は戦場だろう。
前線ではない。
後方、自軍の陣地内から放つのだ。
守りはガチガチ。
それだけで士気も上がるし。
撤退する必要もなく、自陣で安全に魔力の回復に努める。
良いことづくめ。
断じてこんな使い捨て気味に使う戦力ではない。
だから、テロなのは確定だと思うんだけど。
それにしては規模が異常。
何か妙に嫌な予感ってやつを感じる。
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