生徒 13
これ、本当はトラウマの原因をどうこうする方向性から。
ゆっくりと時間を掛けて解決するんだろうけど。
……ごめん、面倒臭い。
それに、そこまで時間を掛けるつもりもないのだ。
俺は別に教師ではないし、そっちは勝手にやってもらうとして。
多分、ノアとかその辺りが何とかするでしょ。
今は目先の問題をどうにかしようかと。
要は魔法さえ使えればいい訳で。
魔力の制御を安定させられれば、それでいいのだ。
たとえトラウマが残ったままだったとしても。
それで魔力が乱れなければ。
魔法自体は問題なく発動出来る。
これだけに絞れるのであれば、話は簡単。
メスガキの障害になってるのは相変わらず心理的な問題であるが。
本来、この手の病はかなり面倒で。
物理的な怪我なんかと違って目に見えないし。
治し方も結構な遠回りが必要。
ポーション使ってはい終わりとは行かない。
しかし……
根本的な解決を望まないのであれば、もっと別の手段が取れる。
過去がどうだとか、記憶がどうだとか。
そんな話は全てどうでも良くて。
突破すべきは今現在の心理的な障害に限られる。
そもそも、メスガキの体自体には何ら問題はないのだ。
言い換えて仕舞えば思い込み。
要は、それを塗り替えてしまえば解決。
自分は魔法を使えると言う強い自己意識。
これを与えるのだ。
トラウマすらも塗り替えるほど、強烈に。
「ちょっと体に触れてもいいか?」
「……変態」
「いや、そういうのじゃなくて」
罵りつつも手を出してくれた。
本当、口は悪いが良い子ではあるんだよな。
可愛いやつめ。
「ひゃっ、何これ」
「心配しなくていい、すぐ終わる」
そのための手段だが、単純に魔法を使おうかと。
回復魔法ではない。
どちらかといえばバフ魔法の一種か。
戦争に向かう兵士を初め、彼らの恐怖を和らげる為に用いられる魔法。
別に薬でやってもいいんだけど。
これ麻薬に近いからね。
結構依存性強いし、子供に使う物じゃない。
効果としては抗うつ剤とかそんな感じ。
知ってるか?
前世じゃ、抗うつ薬が下水を通って川に流れ込み。
取り込んだザリガニが強気になって暴れてるとか。
攻撃的になり、鳥に攻撃し。
当然敵うわけもなく食べられるという。
それぐらい無鉄砲になれるって事だ。
冷静な判断が出来なくなるって意味じゃデメリットもデカいが。
むしろ、それぐらいの方が。
過去のトラウマに苛まれてる訳だからね。
彼女にはちょうどいい。
トラウマを突破するにはきっかけが必要なのだ。
PTSD治療とか。
麻薬でよくなる例もあるみたいだし。
ただ、これだけじゃ時間がかかる。
動かし方を知らない、トラウマがなくなっただけでしかない。
経験値が不足しているのだ。
正しい方法を教える必要がある。
本来、これにも膨大な時間がかかる訳だが。
俺にはチートがあるのだ。
そこは、直接魔力をコントロールしてやればいい。
一発で正しい魔力の動かし方を教えられる。
後は体で覚えてもらうだけ。
……うん、案外すぐ解決出来そうだな。
「どうだ?」
「えっと、何も変わらないけど?」
ま、すぐ実感出来る物でもないか。
麻薬と違って副作用も少ないしな。
幻覚とか。
そういうの見えるタイプじゃないし。
自覚症状は少なめか。
「このまま、魔法を使うぞ」
「え?」
「俺がお前が魔法を使うのに邪魔な障害を全て取り除く」
「そんな事出来るの!?」
「いいから」
「……あぁ、もう分かったわよ」
ちょっと集中するか。
魔眼に魔力を流し。
メスガキの体内の魔力の流れ、回路。
それを鮮明に。
脳裏へと描写しイメージを固める。
緊張しているのだろう。
少し手が震えてる。
大丈夫、失敗はしないから。
なんせ俺がサポートするのだ。
いや、こういうのは俺も初めてだけど。
そこはね。
チート能力あるし、多分問題ない。
「ファイア」
空中に火球が生成され、射出。
壁にぶつかった。
傷にならないのは一緒。
でも、明らかに威力が強い。
余波がこっちの方まで。
ちょっと熱かった。
「これを私が……」
「そうだ、正真正銘君が使った魔法だ」
魔力を操りはしたが、ブーストはしてない。
正真正銘メスガキが使った魔法。
驚いている。
あからさまに威力上がったからね。
彼女の能力的に、俺が使った魔法は認知できないだろう。
当然、魔力を操作されてる事なんて想像の外。
手を少し握られただけ。
それでここまで分かりやすい変化である。
今までずっと解決出来ずに悩んできた問題が、一瞬で。
そりゃ、驚きもするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます