生徒 4

「んっ、んん〜〜」


 誰に起こされるでもなく、自然と目が覚めた。

 よく寝た。

 気持ちのいい目覚めだ。

 たっぷり寝た実感という物は。

 その事実に関わらず。

 中々、他では得難い満足感を与えてくれる。


 視線の先、ぼーっと天井を見つめる。

 なんとなく視界がボヤける。

 多分、窓から差し込む朝日のせいだろう。

 徐々に光に目が慣れ。

 すると、見慣れない天井。

 俺の家じゃないな。

 行きつけの娼館とかでもなさそう。

 ここ、何処だ?

 ……あ、そっか。

 昨日は王都のホテルに泊まったんだったか。

 そりゃ見覚えも無いはずだ。


 初めて泊まったホテルである。

 半分寝ぼけながら周囲を見渡す。

 昨日見てはいるのだが。

 既に暗かったからね。

 人口の光で照らされるのと、朝日で照らされるのでは。

 かなり印象が少し違う。

 結構豪華な内装。

 それに、部屋自体も広めだ。

 大きな窓から日の光が差し。

 室内を照らしている。

 ってか、あれ?

 これ、朝日って感じじゃ無いな。

 もうお昼頃だったり?


 そこまで夜更かししたつもりはないのだが。

 心当たりがないでもない。

 まぁ、アレだ。

 久々だったからね。

 誤魔化すために変にカッコつけたりもしたし。

 照れてた。

 多分、ノアのツボを刺激していたのだろう。

 部屋に入るなり急に抱きついてきて。

 そのまま。

 ベッドに押し倒されてしまった。


 俺が求められる側なのはノア相手の時ぐらい。

 普段は大体娼婦だし。

 獣っ娘だって奴隷だからね。

 そもそも、俺が買ってる側である。

 受け身に回ることは少ないのだ。

 責めてもらうにしても。

 そうお願いしてやってもらってるだけで。

 ただのプレイ。

 あからさまに劣情を向けられるのとは別だ。


 しかも、時間が空いたのもあってか。

 これまで以上に激しかった。

 盛り上がってしまって。

 ノアが中々寝かせてくれなかった。

 ……ような。

 ちょっとうろ覚えのとこがある。

 あのままだと腹上死しかけてたのでは?

 いや、流石に冗談だけど。

 冗談だよね?

 まるでサキュバス。

 あ、ノアの場合はインキュバスか。

 そこはどっちでも良いけど。

 単に、それぐらい凄かったって話だ。


 思い出しただけでも、淫らな光景だった。

 ただ。

 寝起きで、そんなことを考えているというのに。

 俺の息子は元気がない。

 普段なら理性で自制する所なのだが。

 どうやら、全て搾り取られてしまったらしい。

 もう空っぽである。


 ふと横に視線を向けると、ノアの姿はない。

 昨日は一緒に寝たと思ったんだが。

 最後の記憶。

 軽く靄がかかっているけど。

 確か、生まれたままの姿のノアが抱きついて来て。

 可愛くおやすみのチュウのおねだり。

 さっきまでの貪欲な姿は何処へと思いつつも。

 愛おしさすら感じさせる。

 初々しさと淫乱な姿を併せ持つ。

 まさに、魔性の女って言葉がピッタリな行為。

 俺もしっかり魅了されてしまった。


 先に起きているのだろうか?

 すでに睡眠は十分。

 たっぷり寝て、もう眠くはないのだが。

 かと言って。

 そう直ぐに起きる気にはなれず。

 ベットの上をゴロゴロ。

 ふと、横にあるテーブルが視界に入る。

 そこに紙が置いてあった。


 どうやら置き手紙らしい。

 ノアが書いていったのだろう。

 学園に行って来ます。

 と、最低限のメッセージ。

 なるほど、お仕事か。

 まぁ、そりゃそうだよね。


 別に今日って休日でもなんでもないし。

 自由な俺とは違う。

 ノアは講師って仕事をしているのだ。

 学園の雇われ。

 当然の話ではあるが、急にサボる訳にもいかず。

 特にノアは真面目だからね。

 そんな選択肢初めから無かったのだろう。

 にしても、元気だな。

 昨日あんなにしたのに。

 朝、自力で起きて出勤して行ったって事でしょ?

 俺は昼までぐっすりだったというのに。

 そうか、これが若さか。


 ……いや、俺も前世じゃ社畜やってたし。

 終電で帰って始発で出勤する生活。

 まぁ、耐えきれず過労死した訳だが。

 一応社会人やってる間はそれをやってのけていたのだ。

 30代になっても。

 なら、若さのせいではない?

 異世界に来て、堕落してるだけ説濃厚だな。

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