多種族世界の最弱種
@suritati333
第1話 きっかけ
「ひい、ふう、みい、よお、いい、むう、なあ...今月はちょっと寂しいなぁ」
壊れた家具の買い替えなど色々重なってしまった結果だ。残り少ない財布の中身を数えながら頭を抱える、まあ悩んだところで増えるものでもないので意味はないのだが。
うーむと唸っていると後ろでガタリと音が聞こえた。振り向くと扉が少し開いていた。
(あちゃー見られちゃったかな)
次の日の朝のこと、外行きの格好をしたニートな同居人が家から出て行こうとしていた。
「何してんの?ソフィ」
この天空族の銀髪少女は俺の幼馴染...というよりかは妹のような存在だ。
「ちょっと外に」
「ふーん...まあいってらっしゃい」
珍しいこともあることだ、引きこもりマスターのソフィが自ら外に出るなんて。着いていってやりたいところだが今から仕事だ。
「ん」
それだけ残してソフィは外に歩いて行った。ソフィは次の日からも俺が行った後に何やら外に行っている様子だった。
1週間ほどたった夜の日のこと、ソフィが俺の部屋に入ってきた。何やらいつもと違う様子で手には袋を持っていた。
「これ、使って」
手に持った袋が机に置かれるとチャリチャリと音が聞こえ中に何が入っているかは容易に予想ができた。
ソフィは引きこもりだった、それには色々な理由があり仕方ないと思っていた。そんなソフィが頑張ってお金を稼いできた、それは嬉しいことだった。
とりあえず袋を手に取り中を覗いてみると
「へっ...?」
袋の中には金貨が6枚も入っていた。金貨6枚とは60万トリスの価値がある。ちなみに俺の月給は20万トリスだ。
「ソフィ、これどうやって...?」
(盗み?それとも体を売りでもしたのか?)
かなりの金額を目の前にした時に思いついたのはネガティブなものばかりだった。
心配そうに見つめる俺に気づいたのかソフィは懐からあるものを取り出した。
「攻略者カード...?もしかしてダンジョンで稼いできたの?」
「うん、アルにあげる、それ」
そう言いながら6枚の金貨を指差す。
「いや、流石にこんな大金は受け取れないよ。ソフィが稼いだお金なんだからさ」
「私はいい、それよりも家のお金に」
やっぱりあの日渋そうにお金を数えていたのが見られていたのだろう。しかしこんな大金をいきなり出されてどう反応していいのかも分からず黙ってしまう。
「迷惑だった...?」
「あ、いやっそうじゃなくて...ううん、ありがとうソフィ、このお金は大切に使うよ」
申し訳なさから受け取るのを渋っていた。だがいいのではないか、別に俺が私利私欲のために使うわけでもないし、俺とソフィが生活をするために使えばいいのだ。
それにこんなにも頑張ってくれたソフィの頑張りを受け取らないのではなく正面から受け止めてあげた方がいいじゃないか。
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