第17話 長屋王から藤原四兄弟、そして橘諸兄へ

「奈良時代、権力を握っていた藤原不比等が亡くなるとタイトル通りに長屋王→藤原四兄弟→橘諸兄の順に権力が移動していきました。それでは、今回は此処まで、パーソナリティーはふーぎと、突っ込み太郎でした。それでは、まったねぇ」



「終わるな、終わるな、終わるな! タイトルで全て終わらそうとするな! ってか、俺の名は突っ込み太郎じゃねぇ、俺の名は……」



「誰も貴方の名に興味ないので結構ですよ。さて、前回の続きを語りましょうか。藤原不比等が亡くなると長屋王に権力が移ります。長屋王はこれまで見逃されていた。役人の不正やサボリにメスを入れ。ちゃんと処罰しろと式部省(人事を担当する省)と弾正台(役人の不正を取り締まる庁)に直訴していきます。そして、その生真面目さから疎んじら始めます」



「真面目に働いて疎んじられんのかよ」



「奈良時代……と言うより江戸時代に入るまで。儒教に基づく礼が浸透しておらず。真面目に働くってなに美味しいの? 天皇に尽くすってなに? 意味分かんない。ってな感じで、官僚、貴族の規範意識がすっごく薄かったのですよね。ですので、天皇主催の式典をサボるのは勿論。不正もやり放題。当時は、そんなハチャメチャな状況だったのです」



「マジかよ!」



「長屋王は、小姑のように疎まれながら政務を行っていました。……そんな中、未婚、45歳、元正天皇が退位して、元正上皇となり。聖武天皇に天皇の座が譲られます」



「だから、その未婚の説明いらないよね!」



「聖武天皇は取りあえず。政務云々より自分の母である。鬱病の藤原宮子(みやこ)を喜ばせようと、大夫人と言う名称を与えようとしますが。其の名称は律令の規定では皇族にしか与えられませんと、公然の場で長屋王に反論され。聖武天皇は先の発言を撤回せざる負えなくなり。即位早々に面目を失ってしまいます」



「生真面目なのは結構だか、融通は利かなそうだな。長屋王」



「融通は利きませんが、長屋王の権勢は確実に高まっており。藤原四兄弟は焦り始めました。このままだと、聖武天皇の後釜は藤原氏が立てる皇太子ではなく。長屋王が立てた皇太子になると危機感を抱き始めたのですね」



「だが、父である。藤原不比等が長屋王を立てろって言ったんだろう。なら、もう長屋王に従うしかねぇんじゃねぇのか」



「それ故、藤原四兄弟は色んなことを踏まえ、必死に考えました。どうすれば、このまま天皇と蜜月の関係が続き。あわよくば長屋王に隕石が降り注がないのか。都合よく長屋王の一族に雷が振り落ちないのか、ものすごく考えました」



「もう、そこまで行くと妄想だよね!」



「長い間議論して、良い案を思いつきます。……そうだ、長屋王の一族を自死に追い込めば良いんだ」



「そうはならんやろ」



「なっとるやろがい。……善は急げです。京にいる兵、凡そ千人ほどを率いて。長屋王の邸宅を取り囲み。邸宅前にて、ない罪を糾弾し。長屋王を自死に追い込むことに成功し。長屋王の妻と三人の息子達も首をくくって死にます。仮に、自死しなかったら惨殺されると分かったからでしょう。こうして、藤原四兄弟の最大の政敵はいなくなり。ハッピーエンドを迎えます。やったね、藤原四兄弟ちゃん、また甘い蜜を吸えるよ」



「おい、馬鹿やめろ!」



「藤原四兄弟はハッピー、ハッピー、ハッピーって謳いながら。藤原不比等の娘であり、聖武天皇の妻の藤原光明子(こうみょうし)に皇后の位を授けます。皇后の地位は本来、皇族でなければ得れない位ですが。長屋王が亡くなったため藤原氏に反対する者はおらず。光明子は皇族以外で初めて皇后の地位を会得します。そして、藤原四兄弟は」



「増長するんだろう」



「相次いで亡くなりました」



「えっ!」



「死ぬペースが速すぎて。これって長屋王の呪いじゃね? って思う速さで死んでいきました」



「えっ、マジ? どうなんの。朝廷の政務どうなんの?」



「最大の派閥である藤原氏が壊滅したため。皇族出身の橘諸兄(たちばなもろえ)が台頭します。橘諸兄は唐から戻ってきた軍事の天才、吉備真備(きびのまさび)、そして聖武天皇の母である藤原宮子を鬱から回復させた。僧の玄坊(げんぼう)を用いて。政務を立て直そうと動きました。……因みに、聖武天皇の母である藤原宮子は、皇族や伝統ある血統ばかりいる宮中でただ一人、新興の藤原氏であった為。肩身が狭く。聖武天皇を産むとノイローゼとなって身体が動かず。玄坊が回復させるまでただ一度も聖武天皇と会うこともなかったとされています。初めて聖武天皇と会ったのが、生まれてから36年後だったみたいですよ。……母の肩身の狭さを知っていたからこそ、聖武天皇は皇族に近しい称号を与えて、宮中の居場所を創ろうとしたのでしょうね。……まぁ、ノイローゼの最中に、そんな大夫人なんて称号贈られたら。余計に心労が祟ると思いますが」



「うーん。……せやな」



「さて、今回はこの辺で終わりましょうか。次回、聖武天皇はっちゃけて橘諸兄、その後始末に追われる、の回です。まったねぇ」

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