君が好きだってバレた!!!
磨白
先輩を好きだってバレた!!!
「あ、先輩もういたんですね」
僕が吹奏楽部の部室に向かうと、先輩は既に楽器の準備にとりかかっていた。
「何だい?居たら悪いのかい?」
そう言って、僕の方は振り返らずに楽器のチューニングを続ける先輩。
後ろ姿もいいけど、話すときくらいこっちを向いてほしいものだ。
まったく。
「ねぇ先輩?こっち向いてくださいよ。せっかく可愛い後輩が部活に来たんです
よ?」
先輩にそう頼んでみると
「君はいつも来てるだろうに」
そう言いながらも渋々こっちに体を向けてくれた。
しかし、手はまだクラリネットを触っていて、意識もそっちに向いているのがわかる。
「一回楽器置きません?」
「嫌だね。私は練習しにきたんだ。君と話しに来たわけじゃないの。片手間でも話してあげてるんだから感謝してほしいくらいさ」
そういう先輩に少しムッとする。そんなに楽器が大事だろうか?
「後輩はもっと大切に扱ってください?」
何言ってるんだみたいな顔をして僕を見つめる先輩。
そんな変なこと言ってないですけど!?
「あのね、君がクラリネット担当ならまだしもパーカションだろ」
「同じ後輩だから平等です」
「私が優しくする理由はない」
「えー、じゃあ先輩が優しくしてくれるんだったらクラリネットしようかな。教えてくださいよ先輩!」
すると先輩はため息をついて「嫌だね」と一言。楽器も持たず部室から出ていってしまった。
えぇ、流石にウザかったかな…嫌われた?
少し反省。
「よう、早いな」
落ち込んでいると、部室に知り合いが入ってきた。
「あ、やっほ。クラリネット」
「人を担当楽器で呼ぶんじゃねぇよ!!!」
ったく、とそうつぶやくと彼は僕の横に座った。
「さっき先輩とすれ違ったんだけど、もしかして二人だったのか?」
「そう!最高だったよ。パーカションだからって適当に扱われたけどな!クラリネットのお前が羨ましいぜ!」
そうやって脇腹をつついていると、彼は真顔で
「いや先輩、俺と一切話したことねぇぞ?」
と言った。
「え?でも先輩、クラリネットの後輩には優しいって……」
「んなことねぇよ。適当言ったんだろ」
……え、ってことは
「先輩は嘘ついてまで僕と話したくなかったってこと!!?」
という結論に至った。
「ま、まぁ、んなことないだろ。ははっ」
「乾いた笑みじゃねぇか!!!」
「残念だったな、お前あの先輩の事好きなんだろ?」
もうすべてが終わったみたいな話し方をするクラリネット。
「まだ告白すらしていないから!!!」
「好きなことは否定しねぇのな。まぁ、頑張ればいいんじゃねぇか?」
そういうと彼は席から立ち上がる。
「そろそろ練習だろ?お前もさっさと準備してこい」
「はーい」
もう特にここに居る理由もないので僕は自分の楽器を取りに倉庫に行くため、部室のドアを開けた。
「え?」
眼の前にはドアの前で突っ立っている先輩がいた。
あ、楽器取りに来たのか。忘れってったもんな。
「……君が、後輩と話してたから、待ってただけだから」
あ、なるほど。部室がちょっとガヤガヤしてたから入りづらかったのか。
「すいません、入りづらかったですよね」
「……」
相変わらず無言の先輩。
気まずい。いや、いつも気まずいんだけど…
「あの?先輩」
「…て……から」
「へ?」
小さい声で先輩が何かを言う。
「すいません、聞こえーーー」
「き、君が私を好きだなんて、知らなかったし!知ってたらもっと優しくしたから!聞いてたのはわざとじゃないからね!!!」
そう言うと顔を赤くした先輩はどっかに走って行ってしまった。
…顔が熱くなる。
ここの部室、壁薄いんだった。
君が好きだってバレた!!! 磨白 @sen_mahaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君が好きだってバレた!!!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます