引きニートの冒険譚 短歌の部 二十首連作部門

秋嶋二六

引きニートの冒険譚

今時の ネットに商品 ないなんて 思いもよらず 途方に暮れる


ほしいもの 近場の都市に あるそうだ 行ってみるしか 決意に燃える


引きこもり いざ外出と 決意する だけど着ていく 服があったかな


押し入れを 漁ってみれば 出てくるわ 買った覚えが まるでない服


こんな服 どこで買ったの お母さん 原色の生地 目を刺す痛み


Tシャツに チェックのシャツを 合わせれば 昔のオタク 現れ出でり


引きニート 季節を忘れ 夏盛り 灼熱地獄 何この苦行


ただ一歩 歩いただけで 汗しとど 頭上の湯気で 陽炎できる


最寄り駅 辿り着いたは いいけども すでに体力 残りもわずか


券売機 切符の買い方 忘れてる 惑うその様 迷子の子供


苦労して 乗れた電車は 冷房車 心地がよくて 寝過ごしかける


ついにきた 家を離れて 幾数里 冒険の果て 涙がにじむ


限定の 言葉に弱い 日本人 値段高騰 歯軋りしきり


買ったとも 買ってやったさ 限定品 電車賃まで 使い込んだが


歩くには かなり遠いよ 帰り道 疲れた身体 悲鳴を上げる


やっとこさ 帰ってみれば 玄関の 前にパトカー 停車している


何事か 隠れて中を 窺うと 捜索願が 出されるところ


こりゃヤバい 慌てて家に 入ったら 母は狂乱 父は激高


お騒がせ 警察帰って 説明会 事情を知って みんな呆れる


それでもさ 勇気を出して 外に出て 悪くはなかった ちょっと成長

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