第17話 漆黒の聖なる深淵的な何か
「どう?カッコイイでしょ?」
「滅茶苦茶かっこいいじゃないですか!!」
イイね!まず黒というのがいい、黒い戦士って感じ?闇属性的な?ダークヒーローみたいな?いやこれは【黒】じゃなくて、【漆黒】と呼ぶべきだね、すごくイイ!
更にこのゴツさがイイ!肩の部分からは角みたいなのが突き出ているし、篭手には謎の鋭い刃?トゲ?が腕に沿うように付いる。兜は口元まで完全に覆っていて目の部分は格子状のガードと完全に覆うバイザーを分けて上げ下げ出来るようになっている。全体的に大きく分厚く威圧感があり、良くわからない装飾がロマンを掻き立てる!指の部分までしっかりと漆黒で統一された重鎧!Dark Knightsって感じだ!!
「うんうん、少年なら気に入ってくれると思ったよ。これは注文を受けて私が作った自信作なんだけどね、折角作ったのにすぐに返品されてね、断ったんだけどゴネるから仕方なく安く買い取ったんだ」
「え?何か問題があったんですか?」
「いやー、なんか見た目が?感性が合わなかったっていうか、やり過ぎたっていうか。それと結構重くなっちゃってね。……角の部分とか」
「ええ?最高じゃないですか?」
「う、うん。そうだよね最高だよね。少年は良く分かってるよ」
こんなにカッコイイ鎧なのに何が駄目なんだ?変な人もいるもんだ。
「これは本当に良い物なんだよ元は!使ってる金属も魔石を消費してウーツ鋼に五重炭素を練り込んだやつで、硬くて重くて熱も湿気も通さないんだ」
ふむ、硬さで攻撃を防ぎ、重さで飛ばされず、火も水も恐れない完璧な鎧ってことだな!SUGOI!
「それでこの鎧なんだけどね、全身鎧だし、本当にお金かかってるから……、えーと、今ならこれがたったの300万円!」
「えっ!たかっ!」
「だったんだけど、中古だし200万円なんだよね!」
「あの、予算70万なんですけど」
「あーそっか、いや、んー、分割でもいいよ?」
「あの、俺まだ未成年ですし、ちょっと高いかなって」
まだ初心者ダンジョンしか行ってないのに装備で借金は駄目だろ。
「分かった、じゃあ仕方ない、いや、そうだな、今は70万でいいから後払いで130万だ!」
えぇぇ……、なんか必死過ぎて怪しくなってきたぞ。これ大丈夫なのか?もしかしてボッタクリとか?
「あ、その顔は疑ってるな?物は本当にいいんだよ!ちょっと扱いにくいだけで」
クッソ怪しい。駄目だろこれ、冷静に考えると角とかいらんし。
「分かった!分かったよ!この盾もつけてあげるよ!お客さん上手だねぇ、この盾は何も問題ない普通の大盾だからね、これだけでも20万はするから。これをセットで70万!後払いで150万!」
普通に20万増えてるじゃないか。
「この盾は問題ないって、こっちの鎧は問題あるって事なんじゃ?」
「うっ!うっ、うぐぅっ」
駄目みたいですね。
「この鎧はね、とあるボンボンに依頼されて作ったんだけどさ。粘りのある硬くて重い金属で分厚く作ったもんだから重すぎて動けないんだと」
そりゃそうなるだろ。
「顔以外はしっかり密閉されて熱も通さないんだけど、装備してる本人の熱と蒸れが逃がせなくて…、でも仕方ないでしょ?一方通行な排気なんて滅茶苦茶高額になるんだよ?」
威勢の良かったお姉さん(?)はしょんぼり萎びれてしまった。要するに使い手のことを考えずに作ってしまって返品されたって事ね。
「だけど物は本当にいいんだ、下級ダンジョンならオーバースペックもいいとこ。これがあればゴブリンの矢どころか槍も魔法も関係ないよ」
過剰スペックは褒められないのでは?まぁそれはそれとして気になっていることがある。俺の【防御】スキルだ。
防御行動に補正がかかるって事だが、重い鎧を装備するのは防御行動に入るのか?ダンク職用のスキルと考えれば鎧や盾の扱いを含んでいる可能性が有る。
「お姉さん(?)、一度着用してもいいですか?」
「っ!あぁもちろん良いよ!気に入ったら買ってね?」
自分では付け方が分からず、お姉さんに付けてもらった。本当は鎧下などがあったほうが良いらしいが、お姉さんいわくこの鎧なら着心地さえ問題なければ大丈夫とのこと。
肘等の可動部の内側は金属リング・樹脂・稼働する金属板で守られ、指は鎖帷子みたいなグローブを嵌めてから刺々しい篭手で指まで覆う。手首も指も全部リング・樹脂・金属板で加工されていて本当に良いものだと感心した。
付けて貰う時に距離が近くて緊張してしまいました。だってぼく中学生だもん。
「どうだい少年?強くなった気がするだろう?」
どうだろうか、目の部分のガードで視界は阻害されるし、バイザーは濃いサングラスみたいで暗い場所だときつそう。だけど。
「凄く動きやすいですよ!何も付けてない時より快適です!」
どうやら【防御】の効果がでているみたいだ、重い鎧なのに羽の様に軽く感じる。しかも空調が入ってるかの様に快適だ。
「ほ、ホント!?じゃあ300万でお願い!後払いでいいから!!」
「なんで上がるんだよ!あ、いや上がるんですか。おかしいでしょ」
「頼むよ少年、それには素材だけでも300万以上かかってるのよ。注ぎ込んだ技術と手間もあるし元値は1000万だったんだ。扱えるなら最高でしょ?ね?」
「いやいや」
「いやいや」
長時間の交渉の結果、60万支払って鎧一式と大盾を購入し、残り250万は俺が稼げたら払うという事になった。稼げたらってなんだよと思うが、折角作った品を使ってもらいたいという気持ちは本物だったらしい。彼女が言うにはこの装備があればゴブリン虐めて払えるでしょとのこと。納得して購入したし安くしてくれたのは分かってるけど、予算を大幅に超える物を上手く買わされてしまった。油断してるとまた何か買っちゃいそう。
鎧は俺に合わせて微調整してくれるというので預けて帰った。
これで俺の準備は完璧だな!
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