第16話 プラ装備のジョブに遅れをとるはずがない

家に帰って王仁のダンジョンについて調べる。

王仁ダンジョン、下級の中では出てくる魔物が強いダンジョンだ。ここの魔物はゴブリン。下級ダンジョンは全国に100を超えて存在し、ゴブダンジョンはもっともポピュラーだ。

ゴブリンの中でも種類が別れていて、鎧を装備した前衛の他、槍を使うもの、弓を使うもの、魔法を使うものもいる。これらが2~6体程度の集団で動いているらしい。

かなり手強い様に思えるが、ゴブリン自体は身長120cm程度と小柄で、体力も弱いので力押しが効くとのこと。また知恵も使わないので単純に戦力で上回る事が出来れば安定して狩れるとされていた。

中級以上のダンジョンだと罠を仕掛ける場合があるし、隠れたり連携したりと別物だそうだ。

色々情報を集めた俺の結論としては「盾役が大事」という事。

一番近い人間を襲ってくるので盾役が前に出ていれば後衛は自由に動ける、耐久も無いので遠距離攻撃で処理していけばいいだろう。


「盾役は俺だな!」

覚えたばかりの【防御】が光るし、蓮が斬撃を飛ばせると言っていたから相性はバッチリだ。ちょうど良すぎるな、玲司は俺達のスキルを聞く前に複数候補を頭に入れていたのでは?

咲耶といいんちょと玲司はまだレベルアップを経験してないから何か武器を用意しないとな。またダンジョン前に売ってるんじゃないか?

ちょっと偵察に行くことにした。中には入らないよ…たぶん。


王仁のゴブダンジョンは下級の上位だけあり、葛の葉の狸ダンジョンの様な浮ついた雰囲気は無かった。ダンジョンから引き上げてきたパーティを見かけたが、みんなしっかり鎧を着込んでいた。後衛は軽装備なイメージなんだが?まさか全員前衛なんだろうか?

金属鎧を売っている店があったので情報を集める為に聞いてみる。




「こんにちは、これからここに潜る準備をしてるんですが、おすすめ教えてくれませんか」

「えぇぇ、お客さんまだ高校生くらいじゃないの?ここ危ないの分かってる?」

そっちもまだガキじゃねぇかと言いたい。女子中学生くらいにしか見えん。

「クランの参謀が選んだのがここでして、下見と情報集めしてるんですよ」

「ふーん、まぁいいけどさ。ここに潜るなら鎧が必須だよ。革鎧でもいいけど手足首頭もしっかり守る必要がある」

確かにみんなそうだった。ゴブリンの攻撃ってそんなにきついの?


「あの、ゴブリンの攻撃ってそんなに強烈なんですか?後衛はあまり狙われないって聞いたんですが」

「攻撃力は弱いよ、後衛を狙う知恵も無い。でも矢を撃ってくるからね、狙いも上手くない。きちんと目視出来ていない所から突然矢が飛んでくる事もあるんだよ?運が悪けりゃプスっと刺さっておしまいってわけ」

なるほどそういう事か。避けきれない前提で鎧を着るわけね。でも、お高いんでしょう?

「後衛用なら樹脂製のアーマーでも弓なら防げるよ。おすすめはチェインメイルとフルフェイスガードとネックガードレッグガードに防刃手袋と靴のセットだね。全部で55,000円から置いてるよ。樹脂製のアーマーは軽いけど間接は守れないからね、運が悪けりゃ刺さるよ」

ふむ、意外と安いのでは?昔の全身鎧は数百万円と聞いたことがある。お手頃で助かります。


「あんたたぶん前衛だろ?剣や槍を想定するなら金属の方が良いよ。攻撃をズラして鎧の表面を滑らせるんだ。樹脂やチェインだと刃が立っちゃう事が多いし衝撃がモロに来るよ」

ふむふむ、やっぱり男なら金属鎧だよなぁ!黄金の鉄の塊を装備すれば皮装備のジョブに遅れを取るはずがない。

「金属鎧は高いからね、全身鎧と下履きのセットで250万円からだよ」

「たっっっか!!!」

車買えるじゃん!免許ないけど。

「ここは中級ダンジョンへ挑戦する前の修行の場でもあるからね、専業探索者への登竜門だよ。装備を買う金も無いお子ちゃまには早すぎってこと」

ぐぬぬぬぬぬ、くやちい。



「一応70万用意してます。中古とかありませんか?戦えたらいいですから」

「結構用意してるじゃん、それだけあるなら初心者用のダンジョンに行けば楽ができるよ」

「初心者用ダンジョンで稼いできたんですよ、それでレベル上がって防御系のスキルを覚えたんです」

防御系っていうか【防御】だけど。

「へぇ!そりゃ見くびって悪かった。また少年が遊びに来たのかとおもっちゃった。うん、そういうことならお姉さんがいいのを見繕ってあげよう。中古の良いのがあるんだよ、調整してあげるからこっちに来な」

「あざま~す」

お姉さんには見えないが突っ込まないぞ、かあさんの例もあるしな。女性の年齢には何も口出ししないのが正解のはずだ。


「ほらこれだよ!かっこいいだろう?」

奥に入って見せられたのは真っ黒でやたらごつい鎧だった。

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