第9話 説得は誠意よりテクニック
「別れたのって5時半くらいだっけ?それからどれだけやってたの?」
「ん~、蓮と少し話してたから、潜ってたのは3時間くらいかな。あの後は人が減ってすごい捗ったんだよ」
「なるほど…昼間と同じくらいの時間で3倍以上狩ったのね。それなら時間をずらすだけで十分稼げるね」
「知ってると思うけど狸ダンジョンは大体2000匹前後でレベルが上がってドロップが無くなるはずだから。長期間稼ぐのは無理なんだ」
これがなきゃ簡単に稼げるんだけど、これがあるから値段を保ってるんだよな。上手く出来てる。
「そうだったわね、稼ぎの上限が決まっているならその稼ぎで装備や道具を買って次の攻略準備をしなきゃいけない。そうなるとプール金の割合を減らせないのね」
色々考え込んでいる。これはいけるのでは?
「いいんちょ!いや松原智子!」
「え!?は、はい!」
「俺は玲司、蓮と組んでクランを立ち上げて本気で探索者に挑戦する。松原には俺達のリーダーになってほしいんだ!」
「はっ、はぁぁ!?」
「俺と蓮だけじゃ馬鹿だからすぐ死んじまう、玲司がリーダーになったら賢すぎてついていけない、いいんちょが丁度いいんだ!」
「そんなこと急に言われても…ん?」
「頼むよいいんちょ、俺達頑張って働くからさ!」
「待って、それって私が賢くないからってこと?」
………はっ!つい本音が!!
「いやそうじゃないんだ、えーと、いいんちょは賢さが目立たないっていうか、馬鹿とかじゃなくて、その、いいんちょは可愛いからな!」
「そんなんでごまかせるわけ無いでしょうが!馬鹿にするな!」
「ぐぬぬ」
これは失敗したか?諦めて3人でやるしかないか。いい考えだとおもったんだけどな。
「いいんちょ、落ち着いて考えてみてくれ。いいんちょにも利がある話だと思う」
「1日で5万円も稼げたのは驚いたけど、社くんが一人で頑張ったからでしょう?私が同じ様に出来るとは思えないし、リーダーなんてもっと無理だよ」
「そうか。すまん、勢いばっかりでちゃんと考えてなかった」
「いいよ、社くんいっつもそんなだしね」
にこりと笑顔を見せて許してくれるいいんちょ。やっぱり優しいやつだ。
「悪かった、今日はもう帰るよ。寿司とドーナツ食べてくれよな」
「うん、ごめんねありがとう。」
「いや、俺が悪かった。いいんちょの気持ちを考えられてなかった、いいんちょと一緒に頑張っていけたら最高じゃんって気づいて暴走しちまった」
「え。うん。え?そんなに?」
ん?
「あぁ、俺と玲司と蓮は高校にも行かないけど、いいんちょがリーダーしてくれたら今までみたいに楽しくやれるんじゃないかなって」
「そ、そうなんだ。ふーん」
流れ変わったな。ここは押すしかない!
「蓮も同じ気持ちだったぞ?俺達は本気でいいんちょにリーダーをして欲しいんだ!」
「っ!」
「いいんちょならきっと最高のリーダーになるよ!」
「そ、そんなの無理よ。私を乗せようったって駄目!」
「いいんちょなら出来る!一緒にがんばろう!」
「一緒とか言っても誤魔化されないから!他にも良い人いるでしょ!?」
「松原智子と頑張りたいんだ!」
「くぅぅぅぅぅ、こんなのズルい」
「智子!俺と一緒になってくれ!!」
「がはぁっ!!」
勝ったな。
「ううぅっ、私チョロいのかな」
チョロい。
「いや本音だって。俺達頑張るぜ、きっと稼ぎも多くなるさ。それにレベルが上がったらいいんちょも大きくなるかもしれないぞ」
いいんちょはちっちゃい事を気にしているのだ。
「ちんちくりんで悪かったわね!しっかり働いて稼いできなさい!」
「そのつもりだ。いいんちょも頼むよ。それじゃ賢達も待ってるだろうし、また明日学校で話そう」
「そうね、今日はありがとう。また明日」
「あぁそうだ。いいんちょ、髪結んでない方が似合ってるぞ。じゃあな」
いつもと違う髪型のいいんちょが可愛くて、つい熱くなってしまった。
ちっちゃくて黒髪ストレートロングの女の子が見上げて睨んで来るとかズルいよな?玲司のやつが羨ましいぜ!
これでダンジョンに潜る体制作りは一段落かな。あー疲れた、ダンジョンで戦うだけで暮らしていきたいな。
俺は家と玲司に連絡を送り、今晩も狸ダンジョンに潜ることにした。
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