また新たな世界が作られたら、あの場所で待ってる。
磨白
また新たな世界が作られたら、あの場所で待ってる。
君は私にとってのヒーローだった。
比喩とかじゃなくて本当の話。この世界は君を中心に回っていて、絶対に私は君を好きになる。
君は主人公で私はヒロイン。いつ終わるかも分からない永遠の話。
二人でエイリアンを倒したり、怪獣と戦ったり、魔王を倒しに行ったり。
名前が変わっても、私は君を忘れなかった。
君が私に告白して、私がそれに頷く。
幸せに二人が包まれたところで、その世界は崩壊する。
次に君と会うときはまた始めましてだ。
あぁなんて、最悪な呪いだろう。
私にとって大切なエピローグが書かれない、サビで急に終わる曲みたいな私の人生。
それでも君はどうしようもなく私を好きにさせた。
期待させた。この世界の続きを。
今回の世界は普通の学生だった。
もう、いろんな世界を経験しすぎて何が普通の学生かわからないけど。
この世界でも君はいつものベタな告白をする。
『放課後あの場所に来てほしい』
なんて手紙を私の靴箱に入れて呼び出して。
私がわからなかったらどうするの?って思いながら、”あの場所”に向かう。
君ならここ以外ありえないから。
そわそわしながら待ってる君を見つけた。
これから君にとっては一回目で、私にとっては何百回も聞いた同じような告白をするんだろう。それでも嬉しかった。
「ふふ、こんなところに呼び出してどうしたの?」
私は君に後ろから声をかける。驚いたような顔をして振りかえる君。
「びっくりした、居るなら居るって言ってよ」
「ごめんね、驚かせたくて」
こうやって茶化さないと今でもやってられない。
告白されるってわかってるとわかってるで逆に心の準備ができないもんなんだよ。
「えっと、まずは卒業おめでとう?」
「なにそれ同級生でしょ?変なの〜!」
「うるさいな!こういうのなんて言ったらいいかわからなくてさ」
君は頬を染めながらそう返す。
あぁ、なんて可愛いんだろう。
ちょっと嫉妬しちゃうくらい。
「素直に言えばいいんだよ、ほらここに居ると勇気が出るんでしょ?」
私はあの場所に少し早咲きで咲いている桜を指さしていった。
「そう、だね。あはは、蜷帙↓縺ッ隕九∴繧九s縺�縺ュにはお見通しか」
もう、名前がありすぎてそれが本当に自分の名前かもわからないけど、名前を呼ばれるとなんかテンションが上がる。
君は大きく深呼吸して
「満開の桜みたいな君が好きです。僕と付き合ってくれませんか?」
君にとって一番の褒め言葉に、
「もちろん」
君が一番望んでいる言葉を返す。
私と君は結ばれて、そしてキスをする。
その瞬間に世界は少しずつ壊れていった。黒くなって行く世界。【 】なんて良くわかんない文字が流れて、削り取っていく。
既に君は止まっていてなにも話さない。
消えていく手を伸ばして、私は君に触れようとした。
もしこの世界の【観測者】が満足して、
【制作者】がエピローグを書く気になったら、私達は本当の意味で幸せになれる。
だから私は頑張って演じようと思う。
この世界が本当に素晴らしいものだって。
最後にとびっきりの笑顔を浮かべて、最高のハッピーエンドだって言い張って。
ー好評なら続きを書きますー
青い桜が散る中で、私は何回目かも分からない世界の終わりを目にした。
また新たな世界が作られたら、あの場所で待ってる。 磨白 @sen_mahaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます