幕間 ヴェールが剥がれる日

あの後…谷口くんに聞くと、どうやら溺れていた僕と残雪さんは谷口くんや山崎くんと少女によって助けられたらしいけど…


「し、信じらんない…わざわざあたいを呼びつけて突然、人命救助しろとか…ふざけないでよ!?」


「ごめんね、ライカちゃん…今度、ちゃんとお礼するから…この通り!!」


「折角…遊べると思って水着も選んだのに……って、きゃぁぁ!!あたいの服についたらどうするのよ!?」


「悪い…酔っちまって……お、おぇぇぇ…」


「…視界最悪だけど、あれじゃない!?ライカちゃん…救命ボート出して、後でかき氷奢るから!!」


「かき氷!?かっ…か、か…勘違いしないでよね。あたいはそんな低俗な報酬に釣られた訳じゃないんだからねっ!?」


といった感じで助けられたらしい。もしまた会えたら、その金髪の少女にもお礼を言わないといけないなと思う。


後日。残雪さんに会えて、あの時の感謝の言葉を伝えたついでに、あの不思議な体験についてあの言い振りから何か知っていそうだったから試しに聞いてみたら、


「……?何の話。」


終始、疑問符を浮かべていたから…きっと僕が溺れていた時に見た幻覚だったのだろうと、そう思う事に決めた。それにしては…結構リアルだった気がするけど。


「…身支度は済ませましたよ。やまねはどうですか?」


「あ…うん。すぐ行くね!!」


落ちていた2年前の夏合宿の写真をピンで刺して居間にあるお爺ちゃんの墓前に花を手向けてから、僕は待っているであろう姉さんがいる玄関へ走った。


今日は7月23日。僕の誕生日で、昨日…谷口くんがくれた最新の人工知能が搭載されたVRMMOのβ版に参加する日だ。


正直言って、姉さんを遠出させるのは気が引けたけど…


(ゲームとかあんまりしない姉さんが結構乗り気だったし、たまにはこういう日もあってもいいよね。)


「では…行きましょうか?」


「うん!」


そうして色んな楽しい思い出を胸に抱きながら、その一歩を踏み出したのだった。


                   了



















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