三馬鹿と合宿

蠱毒 暦

事前準備

0話① 佐藤やまねの場合

僕の部屋で荷物の準備をしていると、襖がゆっくりと開いた。


「…準備は順調ですか?」


「うん…もう少しで終わりそうかな。」


姉さんが僕の荷物をチラリと覗いた。


「……やまね。ちゃんと筆記用具は入れましたか?」


「…あ。バックに入れっぱなしかも。持ってくるね。」


「空の水筒があると、現地で水を補給する時に便利ですよ。今回は違いますが、海外に行くなら、日本の食べ物を幾つか持っていくといいですよ…インスタント味噌汁やカップ麺…粉茶辺りがオススメです。」


「それは確かに…入れとくよ。」


姉さんの言われた通りに物を入れていく。


「沖縄に行くなら、水着も必須ですね。確か海水浴をするのでしょう?ちゃんと用意しているのですか?」


「ちゃんとそれは用意して…あれ?姉さんに僕、その事伝えたっけ??」


「………言ってましたよ。昨日、楽しそうに話していたでしょう?」


「…そうだったっけ?」


(姉さんがそう言うなら、そうなんだろうな。)


「本音を言えば私も……その合宿について行きたいのですが。」


「ダメだよ。姉さんは…体が弱いから。それに、心配しなくても大丈夫だよ。ただの合宿だから。」


「………合宿だからこそ心配です。私の愛しい弟が…どこぞの馬の骨に襲われないかが。」


途中から何を言っているのか聞こえなかった。


「……?昔よりも成長したから、心配しなくても大丈夫だよ。姉さん。」


「そうですか。」


心なしか姉さんが僅かにシュンとしていたような気がしたが、気のせいだろう。


「…では念の為、こちらでも手を打ちますね。」


「……?」


そう言った姉さんは微笑んでいた。

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