異世界帰りのヒロイン

夕日ゆうや

第1話 プロローグ

 僕は平々凡々な毎日を送っていた。

 中肉中背。

 平均点しかとれない。

 運動も中の下。

 変わらぬ景色。変わらぬ日常。

 それもいいことだとは思うのだけど、やっぱり少し退屈。

 もう少し青春を彩る刺激があってもいいんじゃないだろうか。

 たいして楽しいイベントもない。

 たまに誰と誰が喧嘩しているというのも聴かない。

 なんでだろう。

 こんなにも平穏な毎日が続いているのは。

 凡人なみにはラノベやアニメも見るけど、最近では当たり前すぎてにわかオタクと呼ばれることもない。

 多様性が騒がれているせいか、僕のキャラも希薄だ。

 少し弱気で、年頃の高校生男児にしては下ネタが苦手なことぐらいが僕の性格である。

 以上。

 この物語はここまで。




「おい。3組の本条ほんじょうが異世界帰りらしいぞ!」

 杵元きねもとくんがそう言って2組――僕のクラスに飛び込んできた。

 それから僕の学園生活が少し変わった。

 僕は刺激を求めて、少し前に踏み出した。

 嘘かもしれない。

 異世界なんて実在するわけがない。

 そんな当たり前な思考も、退屈な青い生活を送る上でちょうどいい刺激になるだろう。

 嘘でもいい。

 一過性の話題が青春を彩るのだ。

 僕は杵元くんと一緒に異世界帰りの本条さんを見に行く。

 隣のクラスでは瞬く間に人だかりができていた。

 本条さんを確認できぬまま、僕は朝のホームルームを終えることとなった――。

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