転生少女と継承者2
「……そういう事だったんすね……」
アニエスが呟いた。
「うん。……君が魔法薬を生成したのなら、あのドラゴンは倒されそうだね。別の魔物を作ろうか」
「やめるっす!!」
アニエスが叫んだが、ロックは床にもう一つ魔法陣を書くと、自分の左腕を切り付け、持っていた石に血を垂らした。透明な液体が生成され、魔法陣の中に流れ落ちる。
すると、魔法陣が微かに光り、次の瞬間、魔法陣の中から多数の蛇が出てきた。
「知ってた?魔法薬を生成するだけじゃ魔物は生まれないんだよ。正確な魔法陣を作らないといけない」
ロックは、笑みを浮かべてそう言った。
アニエスは、何とか身体を動かそうとするが、全く動けない。蛇の姿の魔物は、一斉に倉庫を出て行った。
「ねえ、アニエス・マリエット。僕と一緒にこの国を壊さない?君が味方になってくれたら助かるんだけど」
「……断るっす」
「そう、残念だな。……君を敵に回すと面倒臭そうだし、死んでもらおうか」
ロックは、壁に掛けてあった剣を取り出した。この倉庫には剣術の授業で使う武器や防具が沢山収められているので、当然剣も簡単に手にする事が出来る。ロックは、剣を握ったままアニエスの方に歩いてくる。
「さようなら、アニエス・マリエット」
そう言ってロックがアニエスの胸に剣を突き刺そうとした時、勢い良く倉庫の扉が開いた。
「アニエス、大丈夫!?」
倉庫に入って来たのは、エルネストだった。
「殿下!気を付けて下さい、ロックは魔物を生み出せるっす!」
「何だって!?」
「とにかく、魔法陣を何とかしないと……」
「あー……また面倒な事になった。仕方ない……なっ!」
そう言ってロックはエルネストに斬りかかった。エルネストも側にある剣を手に取り、応戦する。金属のぶつかる音がして、剣が交わった。
ロックは一旦身体を引いて低い位置から攻撃するが、エルネストはひらりと攻撃をかわしてロックに斬りかかる。ロックも身体をしなやかに動かして右、左と色々な角度からエルネストに刃を向けるが、エルネストを傷つける事が出来ない。
そしてロックがエルネストの胸を一突きしようと勢い良く前に出たが、エルネストは素早くロックの後ろに回り、ロックの首元に剣を突き付けていた。ロックは剣を落とし、降参のポーズをする。
「……エルネスト殿下、剣術大会の時より強くなっていませんか?」
ロックが、笑みを浮かべて言った。
「アニエスを守る為に、努力したからね。……魔法陣を解いて貰おうか」
「自分で解いて下さい。解き方くらい教えて差し上げますよ。……アニエス・マリエットが生成した魔法薬を魔法陣に垂らすだけです」
魔法陣を書いた本人以外が作った魔法薬を使うだけで良いらしい。エルネストがアニエスの足元にある魔法陣に魔法薬を垂らすと、アニエスの手足が動くようになった。エルネストは、蛇を生み出した魔法陣にも魔法薬を垂らした。
「そうだ、この魔法陣から蛇の魔物が出てきたっす。今頃皆を襲っているかも……」
「じゃあ、早く戻らないと」
エルネストは、ロックをロープで縛り上げながら言った。
「ロック、この本もらっていくっす。魔物を倒すのに役立つかもしれないので」
アニエスは、赤い表紙の本を手に取った。
「……お好きにどうぞ、僕は罪人なんだし」
「この本は国が管理する事になるでしょう。でも、……日記の部分だけでも写本にしてあんたに渡せるよう、国に掛け合いたいと思っているっす」
どんな人物であっても、マリユスはロックの父親だ。思い出は残してやりたい。
「……君って、変わってるね」
「よく言われるっす」
そして、エスネストはロックを引き摺り、アニエスは本を抱えた状態で、倉庫を飛び出して行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます