転生少女と文化祭4

 医務室で手当てをしてもらった後、アニエスとエルネストは手分けしてロックを探す事になった。


 ロックのクラスは裏庭の野外ステージで楽器の演奏をするはずだ。アニエスが野外ステージに向かっていると、不穏な気配を感じた。アニエスは踵を返し、近くにある倉庫へと向かった。


 倉庫に到着すると、扉が少し開いているのが見える。そして次の瞬間、倉庫の中から鷹のような姿の鳥が飛び出してきた。よく見ると、脚が三本ある。魔物だ。


 アニエスは、透明な液体を纏わせたナイフを魔物に向かって放り投げた。ナイフは魔物に命中し、魔物は悲鳴を上げて地面に落ちた後、動かなくなった。アニエスは魔物が絶命したのを確認した後、ナイフを抜いてポケットに仕舞い、倉庫に足を踏み入れた。中に人影がある。


「あれ、入って来ちゃったの?結界を張っていたんだけどな」

 そう言ってアニエスに笑いかけたのは――ロックだった。


「……ロック様、どういう事っすか。あなたが、魔物を生み出していたっすか?」

 アニエスは、ロックを睨みつけた。

「そうだよ。あのドラゴン、倒したの?」

「今、騎士団の方々が対応してくれているはずっす。ロック様に貸して頂いた石と私の血を反応させたら、魔物を弱らせる液体が出来たので、それを使って頂いてます」

「ふうん、もしかしてと思って石を渡してみたけど、あの魔法薬を生成出来たって事は、君はやっぱりあの血筋なんだね」

「血筋とか今はどうでもいいっす。それより、どうしてこんなこ……と……」


 アニエスがズカズカとロックに近付こうとしたが、急に体が動かなくかった。何とか視線を床に移すと、床には魔法陣のような円形の模様がチョークで書かれていた。


「ああ、その魔法陣の中に入ると、体の自由が利かなくなるよ。……面倒くさいし黙ってるつもりだったけど、せっかくだから君に教えてあげよう。……僕が魔物を生み出しているのはね、僕が……マリユス・ヴィトリーの、息子だからだよ」

「……え……?」


 アニエスは、そう呟く事しか出来なかった。


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