ホラー小説 カクヨムキャンディーズvs落武者

永嶋良一

第1話 ともはっと城

ハナス 「スミレちゃん、のこちゃん。ここは、ともはっと城と言ってね、昔、『ともはっと』という一族の居城だったのよ」

スミレ 「わ~、でっけぇ石垣・・・石垣の石って、運ぶの大変じゃん」

のこ  「でも、石垣だけが残っていて・・・お城の建物はないんですね」

ハナス 「このお城で、昔、ものすごい戦いがあったのよ。で、お城方の、ともはっと一族が負けてね、そのときに、お城の建物は全て焼けてしまったのよ。それで、今はこうして石垣だけが残っているというわけ」

のこ  「はぁ?こりゃ、ビックらこいた、屁をこいた(ブー)」

ハナス 「のこちゃん、屁をこくのはやめなさいって言ったでしょ」

スミレ 「ねぇねぇ、聞いて、聞いて・・・のこちゃんの言った『はぁ?こりゃ、ビックらこいた、屁をこいた』って五・七・五の俳句になってるんだって。この前、ラジオで、なが痴魔ちま先生っていう偉い小説家が解説してたよ」

ハナス 「永痴魔先生?・・ああ、あの変態の、スケベの、女子トイレフェチの、いやらしい人ね。・・でもね、スミレちゃん。いくら俳句になっていても・・『屁をこく』という言い方は・・ちょっとねぇ。私たち、カクヨムキャンディーズは、3人とも26歳の花も恥じらう、うら若き乙女なのよ。乙女は『屁をこく』なんて、お下品な言葉は使わないでしょ」

のこ  「では、ハナスちゃん、私たち、乙女は何と言ったらいいのかしら?」

ハナス 「のこちゃん。私たち、乙女が使うのにふさわしい言葉は、『屁をこく』ではなくて、『屁をかます』でしょ。もっと丁寧に言うなら、丁寧語の『ぶち』を入れて・・・『屁をかます』という言い方ね」

スミレ 「お~、『屁をぶちかます』ってステキだねぇ。とっても、お上品で・・いかにも、清純な乙女の言葉って感じがするよ。のこちゃん、これからは『屁をぶちかます』を使いなよ」

のこ  「そうしますわ。私も『屁をぶちかます』って言葉は大好き! 何かいい香りが、お尻の辺りから漂ってきそうですわ。・・・さすが、ハナスちゃんねえ。物知りだわ」

ハナス 「いえいえ、のこちゃん。『屁をぶちかます』ぐらい、乙女の常識よ」


謎の男 「これ、これ、お主ら・・ここで、何を致しておる?」

のこ  「キャッ、この人、だぁれ?」

スミレ 「この暑いのに、落武者の格好じゃん。この城跡で、テレビの撮影でもしてんじゃないの?」

ハナス 「私たちは観光客ですが・・・あなたは、どなたですか?」

謎の男 「わしか。わしは、ともはっとじゃ」

ハナス 「と、ともはっとですって? では、あの、ともはっと一族の?」

ともはっと「そうじゃ。わしは、昔、この城で滅んだ、ともはっと一族の総大将、ともはっと井羅巣戸ぱんなこった・・と申す者じゃ」

スミレ 「ともはっと・いらすと・ぱんなこった・・・めっちゃ、なげぇ名前じゃん」

ハナス 「えっ、それでは、あなたは亡霊なんですか?」

ともはっと「そうじゃ。わしは昔の恨みを晴らすために、この世によみがえったのじゃ」

スミレ 「亡霊だってぇ!」

のこ  「はぁ?こりゃ、ビックらこいた・・・違った!・・ビックらし、屁をぶちかます、のこ姉ちゃん(ブー)」

ともはっと「へ、屁をぶちかます、だってぇ?・・・わっ、へ、屁が・・・め、目にみる。む、むせる!・・げほげほげほ・・」


ともはっと「・・・という次第じゃ」

ハナス 「よく分かりました。では、ともはっとさんは、昔の落城の復讐を果たすために、現代に亡霊として蘇ったわけですね」

スミレ 「現代に蘇ったら、ビックリすることばっかりだろうね」

ともはっと「若い女子(おなご)の言葉が代わっておって驚いた。・・・昔は、若い女子(おなご)が、『屁をぶちかます』などとは言わなんだが・・」

のこ  「でも、ともはっとさんは、敵のおちゃま一族をどうやって見つけるのですか?」

ともはっと「そこじゃ」

のこ  「えっ、どこ、どこ?」

ハナス 「のこちゃん、古いギャグはやめなさい。今どき、誰も笑わないわよ」

ともはっと「わしの時代でも、そんなギャグで笑うモンはおらなんだ」

のこ  「めんご、めんご」

スミレ 「でもさぁ、のこちゃんの言うとおりだよ。現代で、昔、敵だった、おちゃま一族を探すって言ったって、そんなの無理じゃんか・・・」

ともはっと「探すのではない。おちゃま一族もこの世に蘇らせるのじゃ」

ハナス 「蘇らせる? どうするのですか?」

ともはっと「我々の神、ぱんなこった魔神のお力を借りるのじゃ。ぱんなこった魔神に儀式をささげれば、憎き、おちゃま一族がここに現れるのじゃ」

スミレ 「ぱんなこった魔神だって? そんなのどこにいんのさ?」

のこ  「えっ、どこ、どこ?」

ハナス 「のこちゃん、やめなさいって言ったでしょ」

のこ  「めんご、めんご」

ともはっと「実は、あそこの古びた地蔵が、ぱんなこった魔神の化身なのじゃ。あの地蔵の前で儀式を行えばよいのじゃ」

スミレ 「儀式?」

ハナス 「よみがえりの儀式というわけですね?」

ともはっと「そうじゃ。ちょうどよかった。蘇りの儀式には、若い女子(おなご)3人の力が必要じゃ。お主ら、手伝ってくれ」


ともはっと「・・・というのが儀式の手筈てはずじゃ。まとめると・・これから、わしが魔神に呼びかける。それに合わせて、ハナスがボンボコと太鼓を叩く。スミレがカンカンカンと鐘を鳴らす。のこが『ぱんなぁこった』と唱和するのじゃ。そして、ここというときに、わしがとっておきの呪文を唱える。お主らは、その呪文の通りに行動するのじゃ。よいな?」

ハナス、スミレ、のこ「はい。分かりました」


ともはっと「では、魔神に呼びかけるぞ・・・・ぱんなこった魔神よ」

ハナス 「ボンボコ、ボンボコ」

スミレ 「カンカンカン、カンカンカン」

のこ  「ぱんなぁこった、ぱんなぁこった」


ともはっと「ぱんなこった魔神よ・・」

ハナス 「(大きく)ボンボコ、ボンボコ」

スミレ 「(大きく)カンカンカン、カンカンカン」

のこ  「(大きく)ぱんなぁこった、ぱんなぁこった」


ともはっと「ぱんなこった魔神よ・・」

ハナス 「(さらに大きく)ボンボコ、ボンボコ」

スミレ 「(さらに大きく)カンカンカン、カンカンカン」

のこ  「(さらに大きく)ぱんなぁこった、ぱんなぁこった」


ともはっと「ぱんなこった魔神よ・・」

ハナス 「(ますます大きく)ボンボコ、ボンボコ」

スミレ 「(ますます大きく)カンカンカン、カンカンカン」

のこ  「(ますます大きく)ぱんなぁこった、ぱんなぁこった」


ともはっと「やかましいわい! うるさすぎて、わしが全然しゃべられへんやろ、ボケ! もちっと小さくやらんかい」

ハナス 「(小さく)ボンボコ、ボンボコ」

スミレ 「(小さく)カンカンカン、カンカンカン」

のこ  「(小さく)ぱんなぁこった、ぱんなぁこった」


ともはっと「ぱんなこった魔神よ・・この世に姿を現したまえ・・この世に姿を現し、我を助けたまえ・・ぱんなこった魔神よ・・」

ハナス 「ボンボコ、ボンボコ・・あっ、お地蔵さんの眼が光った」

スミレ 「カンカンカン、カンカンカン・・あっ、お地蔵さんが怖い顔になった」

のこ  「ぱんなぁこった、ぱんなぁこった・・あっ、お地蔵さんが動いた」


ともはっと「よし、今じゃ。わしが、とっておきの呪文を唱えるぞ。これが恐怖の呪文じゃ・・・『全員、スカートをめくれ!』・・・さあ、みんな、呪文の通りにするのじゃ」

ハナス 「はぁ? スカートを?」

スミレ 「な、なんなの? それが呪文?」

のこ  「キャー、いやらしい呪文ですわ」


ともはっと「お主ら、早くせんか! 魔神がお怒りになるぞ!」

ハナス 「仕方がないわ! スミレちゃん、のこちゃん、スカートをめくるわよ」

スミレ、のこ「いいわよ、ハナスちゃん」


ハナス、スミレ、のこ「一、二の、三、そぉれぇ・・(スカートをめくる)」

ともはっと「おっ、ハナスはフンドシか! スミレは赤パンティじゃな! のこは・・・ぎゃび~ん!」

ハナス 「キャー、私たちがスカートをめくったら、お地蔵さんが、ぐんぐん大きくなったぁ」

スミレ 「な、なんなの、あのエロ地蔵!」

のこ  「そ、そんな・・・・・」


巨大になったエロ地蔵「わいが、ぱんなこった魔神でんねん」

ハナス 「なんてことなの!」

スミレ 「こんなの信じられな~い」

のこ  「ビックらし、屁をぶちかます、のこ姉ちゃん(ブー)」

ぱんなこった魔神「へ、屁をぶちかますぅ・・って何やねん! わっ、へ、屁が・・・め、目にみる。む、むせる!・・げほげほげほ・・」


     (つづく)

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