港町事件簿 探偵事務所編 怪盗シャドウ

@minatomachi

第1話

門司港にある三田村・藤田探偵事務所。香織と涼介は、事務所内で次の依頼を待ちながら、雑談をしていた。壁には解決した事件の証拠写真が並び、机の上には未解決の資料が積まれている。


香織が軽くため息をつく。「今日は静かね。何か事件があればいいけど。」


涼介が新聞を広げながら、冗談めかして言う。

「まあ、こういう日も悪くないさ。毎日事件があったら、身が持たないよ。」


その時、ドアのベルが鳴り、村井直子が緊迫した表情で入ってきた。

「三田村さん、藤田さん、助けてください。大変なことが起こりました!」


---


香織と涼介はすぐに直子を迎え入れ、彼女をソファに座らせる。涼介が水を差し出し、直子の落ち着くのを待つ。


「何があったんですか、村井さん?」

香織が穏やかに尋ねる。


「実は…私は門司港美術館の学芸員です。今日、奇妙な予告状が届きました。これを見てください。」直子は震える手で鞄から一通の封筒を取り出し、香織に渡す。


香織は封筒を開け、中に入っていた予告状を取り出した。そこには、怪盗シャドウの特徴的なマークと共に、挑戦的なメッセージが記されていた。


「本日正午、門司港美術館から『光のオーブ』をいただく。—シャドウ」


---


「正午って、あと2時間しかないじゃない!」涼介が驚きの声を上げる。


「そうなんです。美術館はパニック状態で、どうすればいいのか…」

直子が不安げに言う。


「分かりました。すぐに美術館に向かいましょう。村井さん、私たちに任せてください。」

香織が冷静に指示を出す。


「涼介、すぐに出発しましょう。」


---


二人は急いで美術館へ向かう。途中、涼介が車を運転しながら話しかける。


「シャドウが本当に現れるとなると、かなりの準備が必要だな。どう対処する?」


「シャドウは巧妙で予測不可能だけど、必ずしも完璧じゃないはず。今回は彼の一手先を読んでみせるわ。」

香織が自信を持って答える。


美術館に到着すると、警備員たちが慌ただしく動き回っていた。展示室には厳戒態勢が敷かれている。


「シャドウが本当に現れるのか?」

涼介が警備員に声をかけると、彼は怯えた表情で頷いた。


「予告状が届いてから、全員が緊張しているんです。彼は本当に現れるんでしょうか?」


香織は展示室を見渡しながら、冷静に指示を出す。「警備を強化して、異常があればすぐに知らせて。私たちはここで待機する。」


---


突如、館内の照明が一瞬消え、再び点灯した時には、シャドウが展示ケースの前に立っていた。黒いマントを纏い、顔を隠した彼の姿に、全員が息を呑む。


「待っていたよ、三田村探偵。」

シャドウが静かに口を開く。


「ここで終わりよ、シャドウ。」

香織が鋭い視線を向ける。


涼介が一歩前に出るが、シャドウは冷笑を浮かべて手を挙げる。

「焦らないで。今日は少し遊んでみようと思ってね。」


---


シャドウは展示ケースから「光のオーブ」を取り出し、巧みに煙幕を使って姿を消す。涼介がすぐに追いかけるが、彼の姿は既に遠く。


「くそっ、逃げ足が速い!」

涼介が悔しそうに呟く。


「待って、涼介!」

香織が叫びながら、館内の監視カメラの映像に目を向ける。そこには、シャドウが隠し通路に逃げ込む姿が映っていた。


---


香織と涼介はすぐにその通路を追いかけるが、途中で罠にかかってしまう。鉄の柵が彼らの行く手を阻む。


「このままじゃ、シャドウに逃げられるわ!」

香織が焦りを感じながらも、冷静に罠を解除しようと試みる。


「まだだ、俺たちの戦いはこれからだ!」

涼介が奮闘する中、シャドウの笑い声が響く。


「次はもっと楽しませてもらうよ、探偵諸君。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る