第5話 食べる。

それから、意識を取り戻すとーー俺は、ベリアルの膝枕で寝ていた。


驚いて、顔を上げるとベリアルと頭がぶつかった。


「「痛い……」」


「悪い……大丈夫か?」


「大丈夫です。リオ……様?」


「ああ……本当の名前は、リオンだけど

リオで、良いよ。」


「承知しました。

では、私の事はベルとお呼び下さい。

リオ様!」


「様もつけなくて、良いよ!

別に、俺は白龍ではないし。

詳しい事は、後で話すから……」


「でも……では、リオ……

助けて頂き、ありがとうございました。」


「それも気にするな。

半分は、俺のせいだから……

一つ聞いて良いか? 俺は、どのくらいて寝ていた?」


「……分かりませんが、私が起きてからはーー

数時間ほどで目覚めましたが。」


「それは、そうだ。

にしても……よく魔物に襲われなかったな。」


「そうですね。

もともと、魔物は少ない森ですが……全く居ないって訳では、ありませんからね。」


ぐぅ〜〜……


話の途中で、ベリアルのお腹がなった。


「アハハハハハッ! 確かに、お腹空いたよな。」


「いえ、これは……」


そう言って、顔を真っ赤にするベリアル。


「俺も腹が減ったから、もう少し休んだら。

街に向かおう。」


「はい……。」


すると、俺の中から声が聞こえて来る!


『腹が減った…………食べる……食べる……食べたい……食べたい食べたい……………』


そして、俺は豹変してベリアルに襲いかかった。


体には、薄らと鱗が現れ! 鋭い爪でベリアルを押さえつけると……爪がベリアルの腕に食い込みーー血が流れ出す。

そして、野獣の様に息を荒げて! ベリアルの首元にかじりついた。


「あっ…………ぁあぁぁ………………………………」


「ヴグゥゥゥ………フゥー……ヴヴヴヴ…………

ジュルッ………………ズズズズズズッ……………」


「……わたし……は……………たべ………ぁ……」


『おいコラ! お前さんは、何やってるんじゃ!

せっかく助けた娘を食べたら、助けた意味がないじゃろうが!!! 正気を取り戻せ!!! 小僧……小僧……リオン!!!』


「わたしは……あなたのモノです…………………どうぞ…………お好きになさって下さい………ゴフゥ…………」


『リオン……リオ………………リオ……………り』



『俺は、どうしたんだ?

また、気を失ったのか……?

何だ? この体の奥底から湧き上がる気持ちは………』



「…………血の匂い…………誰の…………?

腹が減った…………血が美味い。


血が美味い? 誰の血だ!?」


意識が戻り……

目の前の光景をすぐには、理解出来ない……。


「俺が……ベリアルを押さえつけて、首元に噛み付いている……」


「リオ…‥リオン!!! しっかりしろ!!!」


「ごぉふ………………」


ベリアルの口からは、血が溢れていた。


ガハッ……


俺は、急いでベリアルから手を離すと……


血だらけの口元から血が滴り落ちる。


「何だこれ!? 俺は、どうしちまったんだ!!!」


「……大丈夫です。リオ…………ゴフッ…………

私は……食べられる………………事…………………

ゴフッ…………ゴホォ…………………………覚悟…………」


「ち……違うんだ! 体が、勝手に………………

俺は……俺は………………………」


「リオン! いいから、回復魔法を!!!」


「そうだ! 回復…………まずは、回復を」


俺は、ベリアルを急いで回復させた。


ベリアルは、もともと白い肌から血の気が引き……よりいっそう白く見えた。


「俺は……なんて事を…………」


『今は、余計な事を考えるな!

距離にして、数十キロ! 十時の方向に、魔物の群れがいる。そこへ迎え!』


俺は、言われるがままに

そこへ向かうと……


魔物を切り裂き、焼き殺すとーーそれを捕食した。


そして、ベリアルの元へ急いで戻ると……

彼女が起きるのを静かに待った。

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