第49話 兄嫁の出産、そして

「ふう、こんなに緊張するとはな。どうやら私もまだまだ精進が足りないようだ」


心配過ぎてずっと寝ていないのに相変わらずお兄様はカッコいいわね。

なんか目がイッチャてるけど…大丈夫かな。


なんか椅子に足乗せてポーズ取っているけど。

無意識らしいから恐ろしいわ……

これだからカッコいい男は……


※※※※※


今日私と俊則は、王国貴族病院に来ている。

お兄様の奥様、ラナお姉さまの出産の日だ。


初産で少し時間がかかっているけどお母さま曰く

「レイナルドの時なんか2日かかったのよ?大丈夫。心配いらないわ」

とのこと。


流石3児の母だ。

言葉の重みが違うね。


今は病院長のご厚意に甘え特別貴賓室で寛いでいるところだ。


「お母様、お茶淹れますね」

「ええ、ありがとう。……次はロナリアかしら?それともミリー?ルルかしらね」

「っ!?もう、な、何言って…」

「ふふっ、沢山可愛がってもらっているのでしょう?楽しみだわ」

「むう。お、お母様、からかわないでくださいまし」


急にそんなこと言うから顔が赤くなっちゃうじゃない。


……えっと、うん。

きっとできたと思う。

だって、その、つ、月の物が……


その時ドアがノックされ看護師さんが声をかけてきた。


「おめでとうございます。可愛らしい男のお子様ですよ」

「っ!?…おお、神よ……ありがとうございます」


あ、お兄様涙流しながら祈っちゃってる。

おもむろにお母様がお兄様の頭をしばく。


「馬鹿なこと言ってないで行くわよ。早くラナさんをねぎらってあげなさい」

「っ!?そうですね。ありがとう母上」

「…おめでとうレイナルド」

「はい」


お兄様とお母様二人は看護師さんに連れられてラナお姉さまがいる病室に向かっていった。

残された私たちは自然に笑い合う。

ああ、良いなこういうの。

凄く安心する。


「よかったね舞奈。男の子か。レイナルドさんに似ればメチャクチャいい男だろうね」

「うん。たくさん女の子泣かすのかな」

「ははっ、そんなことないよ。きっと優しい子だと思うよ」


私たちは自然に手を取り合う。


「ねえ俊則」

「うん?」

「……たぶんだけど……できたみたい」

「………えっ……ほ、ほんと?」


私はこくりと頷く。

まだ確認はしていない。

でも、そんな気がしていた。


私は俊則を見て驚いてしまう。

泣いている!?


「あ、あの、と、俊則?まだ絶対ってわけじゃ…」


突然優しく抱きしめる俊則。

凄く優しく、まるで始めて抱きしめてくれた時みたいな…

高校生の時、初めて家に来てくれた日みたいに……とても優しく。


「舞奈。うれしい。……ありがとう。大好きだよ……愛してる」

「っ!?……うん」


ああ、やっぱりこの人だ。

私の運命の人。


優しくて。

真直ぐで。

ちょっと不器用で。

そして私を大切にしてくれる……


ああ、

本当に幸せだよ


おじいちゃん。


ありがとう。


※※※※※


あの後、お母さまに相談したらすぐお医者様呼んでくれて……

3か月だそうです。


えっとね。

うん。

魔王倒した日だね。


いっぱい俊則愛してくれたんだよね。

今思い出しても……本当にすごかったの……あの日。

だってさ、世界救ったんだよ?

おじいちゃんとも会ったし。

そして懸念も消えて……


だから、その……

うん、二人凄く盛り上がったの……


絵美里とルルにも怒られたんだよね。

私独占しちゃったから……


あうう♡


※※※※※


あれから1か月が過ぎた。

お医者様に確認したら

「特に普通でいいですよ。性交も問題ありません。あーでも激しいのは控えてくださいね」

とか言われたけど。


もう、俊則。

凄く優しくしてくれるけど……


ああ、私毒されちゃってるのかな。

少し物足りない。


「舞奈、その、4人でのはやめようね。どうしても、その、興奮しすぎちゃうから……赤ちゃん心配になるよ」


顔を赤くしてちらちら私を見る俊則。

私のお腹ばかり見るし。

まだ目立たないよね?


まさか太った!?


「ひうっ」


そんなこと考えてたら俊則が優しく私のお腹をさすってくる。


「ああ、ここにいるんだね。俺たちの可愛い赤ちゃんが……パパだよ、ははっ、まだわからないかな?」


凄く優しい顔でつぶやく。

もう。


まだに決まってるじゃん。

でも……すごくうれしい。


私はそっと彼の手を握る。


「俊則、いいパパになってね。でも、甘やかすだけじゃだめだからね」

「う、うん。もちろんだよ」


はー、でもきっとでろでろに甘やかしちゃうんだろうな。

俊則優しすぎるもんね。


「あ、そう言えばエリスがね、今度カイザーさんに会いに行くって言っていたよ」

「良かった。彼、きっと喜ぶよ。だってエリスさんの事、心から好きみたいだし」


あの日鑑定したカイザーさんは。

エリスの事を心から愛していた。


絵美里の精神魔法だと思っていた、色々おかしくなっていたのは悪神の誘導だった。

そして蝕まれた心は殆ど壊れていたけど、エリスを思う最後の心が奇跡的に彼の心をつないでいたんだよね。


伝えた時エリスは、


「えっ、そ、そうなのですね……へえー♡」


なんかかわいい顔していた。


彼女たちは出会って13年一緒にいたんだよね。

もうどうでも良いなんて言っていたけど……


うん。

エリスにも普通の幸せ掴んでほしいと思う。


カイザーさんも今王国の騎士団で鍛えなおしているんだよ。

もう手なんかカッチカチだしね。

体もなんだか一回り大きくなったし。


俊則ほどじゃないけどカッコいいしね。


※※※※※


「はあーマジか。俺幸せすぎて逆に怖い」


俊則のテンションがおかしい。

さっきからうろうろしてるし。


まあね。

私も嬉しいもん。


絵美里とルルも懐妊が確認されました。


俊則来年にはいきなり3児のパパになるのよね。


ふふっ、がんばってね。

パパ。


私は大きくなってきた自分のお腹をさすりながら、この愛おしい世界に感謝していたんだ。


俊則と巡り会えたこの世界。

さんざん悪口言っていた開発陣と運営様。


本当にありがとう。

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