第47話 地球の私、俊則のお母さん
認識できないような不思議な空間に私と俊則は手をつないでいつの間にか居た。
私はもう何度か来ているからあまり驚かなったけど、俊則があまりにも落ち着いているから逆に驚いた。
「俊則?驚かないの?初めてでしょ、ここ」
「うん?あー、驚いているよ。けど隣に舞奈がいるからね。何も怖いものなんてないよ」
「っ!?……もう♡……好き♡」
「うん。俺も舞奈大好きだよ」
ああ、なんでこの男こんなにかっこいいの?
私もう凄く色々経験したけど……いつまでも新鮮な気持ちで俊則の事どんどん好きになっちゃう。
本当に運命だったんだね。
私たち。
私は自然に俊則に抱き着いていた。
優しく抱きしめてくれる彼の体温が、幸せな気持ちを湧きたててくれる。
「コホン。あー。良いかのう?」
「「うわっ!」」
突然声を掛けられ、二人同時に驚いちゃった。
もう、おじいちゃん!?
笑っているし……
「はははっ、ええのう若いもんは。初めましてじゃな俊則くん。わし舞奈の祖父じゃ。よろしくの」
「は、はい。お孫さんとお付き合いさせていただいております本田俊則です。まだまだ未熟ですけど、精一杯愛すると誓います」
「ほっほっ、真面目な子じゃな。うん、わかっているよ。……かわいい孫を頼む」
「はい」
うわー。
俊則真面目かっ!
もう、恥ずかしいじゃん。
……スッゴク嬉しいけど。
「舞奈」
「う、うん。なに?おじいちゃん」
「デレデレじゃの」
「っ!?…もうっ……うん♡」
おじいちゃんはすごく優しい顔で楽しそうに笑う。
そして私の手を握った。
「舞奈と俊則くんのおかげで、わしの最後の力を使わずに済んだのじゃよ。じゃから少しだけ若い二人にプレゼントしたくてな」
「えっ?……カエルじゃないよね?」
「はっはっは、もう少しいいもんじゃよ。……お前たちの不安を少しじゃが解消できるものじゃ……それっ!」
「「!?」」
※※※※※
見覚えのあるオフィスビルの一角。
多くの人があわただしく動いている。
その中で一人の女性が笑顔を浮かべながら電話で話をしていた。
※※※※※
「はい。ええ、その件はすでに了解を頂いております。はい。ありがとうございます」
「ふう。オッケーだね」
私は受話器を置いて加奈子に視線を向けた。
「すごいじゃん舞奈。今月何件目?こりゃ記録更新しそうだね」
電話を切り大きく伸びをする私に加奈子が笑いながら話しかけてきた。
…だからエロいってば加奈子。
ほら、また部長がいやらしい目であんたのおっぱいばかり見てるし……
「んー?なんか最近調子いいんだよね。ほらわたし仕事に生きるしかないからね」
「どんな決意よ。全く。……ねえ、でもさ、最近田辺さんと良い感じじゃないの?」
「ん?田辺さん?……ああ、ないない。だってあの人女恐いらしいよ。なんか過去に酷く振られたらしいし」
「ふーん。あーそーなんだ。へー」
「っ!?な、なによ、その言い方……ほ、ほんとだよ?たまにご飯行くくらいだし」
「ソウデスネ」
「もー、加奈子」
※※※※※
「えっ、これって……私?えっ?だって……」
私と加奈子が働いている風景が頭の中に流れてきた。
しかも私の記憶にない光景だった。
「うむ。実はな舞奈。お前さん地球で生きておるんじゃよ。まあ一部がこっちに来たという事じゃな」
「えっ?」
「……心が不安定じゃったろ。俊則くんと会うまで」
「っ!?……確かにおかしかった気がする。すぐ泣いたりしたし……」
「すまんな。言うつもりはなかったんじゃがな。お前さんの懸念を消してあげたかったのじゃよ。これで問題ないじゃろ」
確かに私は加奈子の事とかお父さんお母さんに後ろめたさがあった。
だからおじいちゃん……
「ありがとうおじいちゃん。嬉しい。……この世界で一生懸命生きていくよ」
「ああ、そうしなさい。……俊則くん。手を」
「は、はい」
「お主の場合は、こういうことはできんかった。悪神が絡んでしもうたからの。じゃからせめてもの罪滅ぼしじゃ。見るといい」
※※※※※
「ねえ、ママ先生。抱っこ」
「ふふっ、甘えん坊さんね」
「うん。ママ先生大好き♡」
小さな私設のような保育施設に俊則の母、洋子はいた。
彼女は夫を亡くし、最愛の息子を奪われ心が壊れてしまった。
だがかつての創造神であった神薙大輔の渾身の能力使用により、心は修復され、辛い気持ちを心の支えになるように改変していた。
事実は同じだが感じ方を変えていた。
そして絵美里の父により、多額の賠償金と働き先を紹介されたことにより、彼女は深い悲しみを抱えながらも、毎日を大好きな小さい子供たちに囲まれ、幸せに暮らせていたのだった。
「…母さん……グスッ……よかった……ヒック……ああ、幸せそうだ……うあ…」
「…俊則……よかったね……わたしも嬉しい」
「……う、ん…ありがとうございます。……俺ももう懸念はありません。舞奈たちと幸せに生きていきます」
「すまないな。これが精いっぱいじゃ。許してほしい」
「頭を上げてください。こんなに嬉しいプレゼント……感謝しかありません」
「…君は優しい子だな。流石あいつが選んだだけはある」
遠い目をするおじいちゃん。
ん?
あいつ?
「そうじゃ。最後に一つ」
にやりと悪戯そうな顔をして、おじいちゃんが体を薄くしながら私たちを見る。
「もう会う事はないじゃろう。わしも違う世界でばあさん、『美奈』と暮らすでのう。……俊則くん。近いうち再会があるぞよ。『ざまあみろ』とわしが言っていたと伝えてほしい」
「えっ、出会い?……誰とですか……まさか!?」
「ほっほ、それは言えんが……なあに、すぐわかる。舞奈」
「うん」
「じゃあの。幸せになりなさい」
「……グスッ……うん」
気が付いた時私と俊則は抱き合いながら私の自室にいたんだ。
きっともうあの空間に行く事はないのだろうと私は感じていた。
でも。
ありがとうおじいちゃん。
大好き。
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