第13話 世界にはばたけ百合の会!会長譲渡の儀

私は自室に戻り、ルルに問題が解決したことを告げた。


ルルは膝から崩れ落ち、手で顔を覆い、ぽろぽろと大粒の涙を零す。

私は彼女を抱きしめ、落ち着かせるように優しく背中を撫でてあげた。


暫くして落ち着いたルルが私におずおずと話しかけてきた。


「あの、ロナリアお姉……お嬢様…」

「もう、良いのよ。お姉さまって呼んでちょうだい。わたくしもその方が嬉しいわ」

「!…はい。ロナリアお姉さま♡」


その様子を見て私は覚悟を決めた。

ルルを守りながら私の味方に引き入れる。


「ルル、今から言う事、誰にも言わないと誓えるかしら」


私の雰囲気が変わったことに気づいたルルは、しっかりと目を見開き真直ぐ視線を向けてくれた。


「ありがとうルル。私は頭の怪我を負ったとき、死んだのよ。そして今の私は、高坂舞奈といいます」

「っ!?」

「信じられないでしょうけど、わたしは違う世界からこの子の体に転生したの」

「……だから」

「ええ、違和感あったのでしょう?」

「…はい」

「ふふっ、あなたは賢い子だわ。だからお願いがあります」


ルルはこくりと頷いた。

私は自然にルルの頭を撫でる。


「この世界はある一人の女性によって歪められているわ。お父様も犠牲者の一人ね」

「……そうだったのですね」

「ええ、後で一緒にお父さまと面談しましょう。怖いでしょうけど、わたくしが絶対に守るわ」


ルルの目に力が戻ってくる。

ああ、やっぱりこの子も強い子だ。


「私ね、大好きな人がいたの」

「……」

「そして古臭い考えかもしれないけど、私は魂をその人に捧げたの」

「……」

「だからね、無理やり人の心を歪ませる事を絶対に許したくないのよ」

「はい。どうすれば…」

「貴方の力をわたくしに貸していただけるかしら」


私はにっこり微笑み、ルルの瞳を見つめた。

ルルの頬がうっすらと上気していく。


「はい。私にできることなら」

「嬉しいわ……ありがとう」


そして流れるようにハグ。

やばいな、私もだんだん染まりそうだ。


ちょっと遠くを見ている私にルルがおそるおそる問いかけてきた。


「あの……会長職はどうされるのですか?」


ぐふっ!?

くっ、あの悍ましい組織のこと忘れていた―!!


「あー、えっと……ははは、は……どうしよう」

「あの、舞奈様?お好きではないのですよね?」

「うん。というか私、男の人の経験もないんだよね。なのに女の子同士とか……」


なぜか私はひらめいてしまった。

そして禁断の質問をルルに投げかける。


「あの、ルルさん?あなた、結婚のご予定ございまして?」

「はい?えっ?どうしたんですか、いきなり……わたし、その、男の人……怖いです」

「あー、ごめんね?私いまいちここの常識知らないっていうか……百合はマストなのかしら」

「マスト?」

「あーうん、その、認識されているというか、性癖の一つとして必要というか…」

「???ごめんなさい、難しい事は分かりませんけど、多いですよ。好きな人」

「えっそうなの?…ちなみに私が創設した百合の会って…会員どのくらいいるのかしら」

「舞奈様の会は確か300人くらい会員がいますね」


嘘でしょ?

どんだけ需要あるのよこの世界。


「中規模じゃないですかね。王妃様の会は確か1000人くらいいらっしゃいますよ」


はあ。

おい運営。

おい開発陣よ。

お前らの頭の中を見せてみろ。


きっとピンク90%黒10%なんだろうね!!


「あールル、わたくしのことは今まで通りロナリアでいいわ」

「わかりました」

「取り敢えず会長を誰かに譲りましょうか。流石にノンケの私には荷が重すぎるわね」

「あのお……」

「ん?」


ルルの瞳が瞬きだす。


「もしよかったら……私なっても良いですよ?会長に」

「えっ、本当?……良いのかしら?だって……」

「はい。特に活動もしていませんし、年1回の会合で宣言するだけですよ」


あーうん。

確かにお願いしようとは思っていたけど……あっ。


「ねえ、政治的に影響とかあったりするのかしら?」

「ありませんよ?ただいちゃつくだけですし。男性の方は多分知らないですし」

「そうなのね……本当にお願いしても良いの?」

「はい。お役に立てて嬉しいです」


はあ、まあ良いか。

なんだか分からないけどルルもその気みたいだし。


「じゃあお願いしますね」

「はい。……あのお、一つお願いが…」


なんだか急にルルの色気が増してきたけど……

私の心に何故か危機を知らせるアラートが鳴り始めた。


「儀式だけ、お願いしたいです♡」

「えっ、儀式?」


そして何故かするりと私に抱き着いてくる。

あれ、なんか私も体が熱い?


「お姉さま♡あああ、はああ♡」

「ひうっ」


背中に何かいけない汗が!!


「キスしてください♡それで許します♡」

「待って、待って、ねえ、それ、本当に儀式?したいだけじゃないよね?」


あああ、ルルの可愛らしい手が私の体を……んん♡……やだ、変な声出ちゃう。

ひゃん♡あう、なにこれ?ちょっと、ま、まって、あああ、ふあっ!?


「もう~♡、本当は生まれたままの姿で絡み合いながらのキスなんですから♡このくらいは我慢してください♡…はあ♡……お姉さま、柔らかい♡」


あ、あ、あ、あれえええええーーーーーーーーーーー


こうして継承の儀式は無事終わったのだった。

やばい。


ルルってば、凄く上手……

ガチで気持ち良かった♡


目覚めそうかも………


はっ、ダメよ私。

正気にならねば。

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