第4話 転生と勝ち取ったスキル

何故か出てきた応接コーナーで私と名前の長いポンコツな神が向かい合って同時にため息をついた。


「あのね、ため息つきたいのは私なんだけど?間違って殺されるとか。どうしてくれるのよ」

「うう、すみません」


「ねえ、本当にもう戻れないの?」

「……はい」


私は天を見上げた。

ああ、お父さん、お母さんごめんなさい。

彼氏とかいなかったからまあ、そこは良いけどさ。

……加奈子もびっくりしただろうな。


そんな様子を覗いながら神は私に問いかけてきた。


「あのー、舞奈様?……取り敢えず転生しませんか?……ここには長くいられないんですよね」


私はジト目で睨み付ける。


「うっ、そのですね、ここってほら、神の場所なんですよ。その、普通の魂だと、だんだん消耗しちゃって、消えちゃうんですよね……ははっ、は…」


「サービスしてくれるのよね」

「っ!?そ、それはもう、存分に」


私は大きくため息をつく。

神がビクッと肩を跳ねらせる。


「ねえ、違う世界にも行けるの?」

「あーすみません。無理です」

「ふううううう」


「ううっ」


私は腕を組み考える。

確かコイツはあのクソゲ―の第2部とか宣(のたま)っていた。

私はついこの前、完全クリアーをしスチルを回収し終えたところだ。


無駄にもったいない精神が高い私は隅々までクリアーしている。

きっとこいつよりも知識は多いはずだ。


「鑑定ちょうだい」

「えっ?」

「んーあとストレージと健康、それから……問題ない立場と後ろ盾も」

「あっ、そのですね、付与できるのは一つの立場と、中級のスキルなんだよね」


私は神を睨み付ける。


「勝手に間違って殺したのは誰かしら?」

「うぐっ」

「ああ、そうだわ。創造系と隠蔽系も欲しいな。あと転移とか時間移動があったら楽よね」

「っ!?いやいや、あの世界の魔法は小さな火を出したり、風を起こす程度なんだよ?転移魔法なんて、ない世界なんだよ?時間移動とか在りえない!」


慌てふためく神。

私は勝ち誇った顔でいくつかの情報を与えてやる。


「基本の設定の中にいる大魔法使いのレギウスが使えたはずよね。まあ、おとぎ話だけど」

「えっ、なんでそんなことまで……」


「38歳の社会にもまれた社畜を舐めないでもらいたいわね。貰えるものは根こそぎもらうわよ」


「い、いや、でも……」

「ふふっ、あなた『新進気鋭』なのでしょ?……上司、いや、より上位の神様いらっしゃるわよね」


みるみる冷や汗を流し始める無駄に名前の長い神。

大きなため息を吐いてこちらを真直ぐ見つめてきた。


「あの、一応ゲームが元の世界とはいえ、あそこの住人たちは生きています。生活しているのですよ。……滅ぼさないと約束だけはして欲しいのですけど……」


「あのねえ、わたしを何だと思っているのよ。そんなつもりあるわけないじゃない。それで?くれるの?くれないの?……他の神様呼ぶ?」


「はあ、わかりました。……でも、転移はダメです。あれは世界の摂理を捻じ曲げる物だから。時間移動なんてタイムパラドックス引き起こして世界が滅んでしまいますよ。他はまあ、しょうがないので……」


「ああ、あと一つ」

「っ!?まだなにか?」


「向こうの世界からあなたと繋がる手段を頂戴」

「っ!?」

「だって本当にくれるか今確認できないのでしょ?」


神はがっくりと膝から崩れ落ちた。


「ふぉっふぉっふぉ、あきらめろ。このお嬢さんはお前より数段上手じゃ」


突然神々しい光に包まれて、いかにもといった美しいお爺さんが顕現した。

美しいお爺さんってなんか変な表現だけど、他に適切な言葉が今の私には無かった。


「あう、創造神ゼナラナス様」


思わず土下座の体制になる神。

どう見ても偉そうに見えるお爺さん神が面白そうに顔を緩め、わたしを見つめてきた。


「すまないのう。今回は完全に我らの不手際じゃ。コイツの言う通り地球に戻すことはできん。じゃからお前さんの希望は可能な限りかなえよう。そして……」


「っ!?」


突然私の中にこのお爺さん神の言葉が響き渡る。


『念話という特別なスキル、というか能力じゃ。これでいつでもわしと話が出来る。これで勘弁してくれるかのう』

『……わかりました。謹んでお受けいたします。私のわがままを聞いてくださり、ありがとうございます。絶対に世界を滅ぼすことはしないと誓います』

『うむ。……賢い子じゃな。安心した。……まあ好きにしなさい。気に入らないことは人を殺めぬ範囲であれば見逃そう』


「おい、オルゴイルドよ。話はついた。さっさと付与して転生させるんじゃな」

「は、はい。直ちに」


無駄に名前の長いクソ神が、真面目な顔して私に向き合う。

まあ、確かにとんでもない美形だ。


見つめられ不覚にも顔が赤くなってしまう。


「えっと舞奈様、それでは付与と、転生の儀式を始めます」

「はい、お願いします」

「……本当に申し訳なかった。……幸せになってください」

「……色々無理言ってごめんなさい。……ありがとう」


私は光に包まれ、ゲームの舞台であるルイラート王国へと飛ばされたのだった。

私は多くのスキルを勝ち取った。

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