第4話厄介な要請

私は友人の米谷との素材収集がひと段落し、数日が過ぎたある日、あるパーティから連絡コンタクトが届く。

梟が届けてくれた伝書紙を広げると文面が電子メールのように浮かんだ。


【件名:我らには無理なんだ……助ケテぇ……】

【内容:俺があいつらに無茶させたばっかに……エイジぃ……報酬はあんたの望むもんをやる。だからァ……俺らンとこに至急来てくんねぇか?頼むよぉー……(土下座をしている絵文字が忙しなく動いている)。 送信者:マルグス】


私は頭を掻き、ため息を吐いた。

「はぁー……私はあんたらよりレベルが低いのに、高レベルプレイヤーが底レベルにってほんとおかしいって。でも……まぁ、あのパーティらには美味しい思いさせてもらってる。うぅ〜んなぁーんか、進まないぃ……舞歌ちゃんに声、掛けてみよ。高確率で断られるけど……ハハッ」

諦めきった弱々しい笑い声を漏らしながら、米谷に連絡をした。

5分程経っても返事がないので、ログインすらしてないようだ。

私はマルグスに短い返事を届け、マルグスらのパーティがアジトにしているツリーハウスへと赴く。

私はログハウスを出て、〈紫誘の大砂漠〉へと向かった。

〈紫誘の大砂漠〉では巨大トカゲを調教テイムし、調教鞭テイムウィップで巨大トカゲの乗り心地はマシになった。

普段いるフィールドより渇きが早く、水筒が空になるのが早かった。

廃城がある国には寄りたくなかったが、寄らざるを得なかった。

とにかく、治安が悪いのだ……そこは。

運悪く、蟻地獄デザートアントに出くわしたが避けられ、HPが無駄に削れることは無かった。


どうにかマルグスが率いるパーティである【もふもふアニマルを愛でる会】が購入ったツリーハウスに到着した。

ツリーハウスとは言っても、皆が想像する住居ではなく、育ち続けている大樹の幹の中をくり抜きプレイヤーが住めるようになっている住居だ。

樹の頂上辺りに小屋を建てるような、それとは違うのだ……このゲーム内でのツリーハウスと呼ばれる住居は。


私はツリーハウスの玄関ドアの隣の呼び鈴を押した。

「おぉーい、マルグスぅ!!来てやったぞぉ、開けろー!!」

「おぉお〜エイジぃ〜!よく来てくれたぁ、ありがと……ありがとよ、エイジ!さぁ、上がってくれ!!」

「おぅあぁっ……くぅ、く、ぐるじぃぃっっ。」

屈強な身体をしたマルグスに大岩でも砕くような力みで抱きしめられ、何処かしらの骨が何本か砕けたような感触を抱きながら、窒息していた私。

レベル58もある彼が、もうじき43に上がる私に要請を出し、何をさせたいんだ?


私はツリーハウスに上がり、会議の際に囲むテーブルのチェアに腰を下ろした。

私はハイポーションを出現させ、コルクを抜き喉に流し、呷った。

骨が何本か実際に砕けてたようで、どうにか治った。

「おいっおまえ!骨が砕けてた、慰謝料寄越せ!!」

「エイジさぁん、おまえ呼ばわりはやめてくだせぇよ!カッカせずに……さあさぁ、粗茶をお飲みくだせぇ。Mai5Aさんはご一緒でないんで?声すら掛けてないんですかい?」

ファンタジーの世界には合いそうもない湯飲み茶碗を私の前に置き、米谷のことを訊いてきた。

「そりゃ送ったよ。でも潜ってなかった……でまたブサイクなモンスター見っけて、手こずってんの?」

「そーすかぁ。ってぇ、ブサイクとは聞き捨てなりませんね!愛らしいもふもふちゃんに対して、そのような——」

顔に似合わずもふもふな動物が好きって……そのニヤけ顔、キモいからやめろ。

「どうでもいいって。でぇ、どこのモンスターよぅ?」

「どうでもいいことはぁっ……——の近辺に棲息してるんです、その魔物


「うぇえーー!ボク、近づきたくないんだけど!!」

「そう言わず……エイジにしか頼めないんすって!!お願いっすよ、ねぇエイジさぁ〜んん!!!」


私はマルグスに懇願され、渋々腰を浮かし、目的地へと彼らと赴いた。


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気ままにプレイしてたら、狙われはじめました 木場篤彦 @suu_204kiba

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