「小さい箱。」~10代から20代に書いた詩~
天川裕司
「小さい箱。」~10代から20代に書いた詩~
「小さい箱。」
少年の家には、小さな箱があった。その箱は、物置きのすみの方に置かれていた。いや、置かれていた、というよりは放り出されていた、と言った方が適切だろう。
少年はその箱がずっと以前から気になっていた。というのは、以前、その箱をまだその家で使っていたいた頃、目上の人達から“あの箱には絶対触れるな、”と言われていたので、一体何が入っているのか、と気になっていたからである。その少年の家は父親方の家に入ったので、その父親方の兄弟の多さからして、たくさんの人がいる大家族だった。
だから、少年がその箱に近づくのを見る度、“それに触れるな.”というので、少年の好奇心はますますふくれ上がっていた。しかし、今はその箱の代わりにもう少し大きな箱が家に来たので、それまで使っていたその箱は、物置き小屋にしまっている。
少年は今がチャンスだ、と思い、その箱のある物置き小屋に走って行った。―――――――――――――――‐
―――――-雨の降る晩のこと、その家にドロボウが忍び込んだ。その家は人がたくさんいるので、給料日になると、金が入るのだ。犯人はそのことを知っていた。
その金庫がどこにあって、どうすれば開くかも知っていた。犯人はその家の住人だったのだ。その家族の少年の父親の末弟であるKだった。そのKは仕事についたばかりで金がなく、上の兄弟が多額の収入を得ているのを見ていて、イラ立ったのだ。そして、Kは金庫に手をかけた。
すると、雨は急に小雨になった。Kは“まずい..”と思いながら、手早く金庫を開けにかかった。あせったせいか、金庫の横に置いていた置き物が手にあたって、床に落ちた。
窓の外ではまた次第に雨が大降りになっていた。その音を、一番近くの部屋にいたM(少年の母)がかすかに聞いていた。Mは立ち上がって明かりをつけ、金庫の方に歩いて行った。
Kはその足音に気づきすばやく、金庫のある部屋の中央にあるドアの中に入った。もう金は盗った後である。その中央のドアの向こうの部屋には少し小さい窓があり、体の小さかったKはそこから逃げようと考えた。Mは金庫のある部屋まで行き、明かりをつけるスイッチが中央のドアの横にあるのでそこまで歩いて行った。Kはひたすら逃げようと無理矢理、体を窓のすき間に押し入れた。
すると、窓が外れ、下に落ち“ガチャン!”という音と共に窓ガラスは割れた。Kは“マズイ!”とこれ以上なくあせり、一刻も早くそこから逃げようとした。その音に驚き、Mは思わずドアを開けた。その正面にはガラスの破片を持ったKが立っていた。
そのガラスの音で駆けつけた父親とその次男のSが見たものは、少年の母(M)の死体だった。Kはもうあとに戻れないことを悟り、逃げながら、“大丈夫、僕が下宿先にいる、というアリバイはある。みつかるものか.”と開き直った。その窓から、家の庭に出た時、Kは物置き小屋のガラクタに目がいった。そこに捨てられてある、小さな箱の中に、持っていたガラスの破片を入れようと、そのガラクタに走り寄った。破片を入れたあと、盗んだ大金を持って、自分の下宿先へと急ぎ帰った。――――――――――
―――翌日、Kは下宿先で寝ていた。A・M9時過ぎくらいに電話が鳴った。Kは起き上がり電話をとった。
少年の父親からだった。少しあせりはしたが、話している内に目が覚め、落ちついて対応した。Mの葬式のことであった。
今晩、通夜をするから…との話で、葬式の準備のことで皆で相談するから今から来てくれ、とのことだった。Kは車に乗り、家に帰った。家に着くと、皆が集まっていた。少年もその中にいた。少年は子供故にその状況が飲みこめず、走りまわっていた。そして、皆は一同、広間に集まり、盗まれた金庫の話から、強盗の仕業だという話になり、警察に届けようという相談をしていた。Kも、アリバイがあることを確認した上で、賛成していた。
その時、少年は父親の横に座っていた。落ち着きはないものの、家族の一員として、広間に居た。Kは仕事を始めたばかりだったので忙しく、その家にもあまり居なかったたため、少年があの小さい箱に興味があることを知らなかった。
話はまとまり、警察に届けよう、ということと、葬式は明日にしようということで、その準備をし始めた。少年は、話し合いが終わったと察知して、一もくさんに広間から飛び出て、また走り回り出した。一同も広間から出て、電話をかける者、話をしている者、庭に出ている者、様々にわかれた。
その日はカラッと晴れ上げっていたので、庭は気持ち良かった。少年は不意に小さい箱のことを思い出し、物置きに走って行った。それ以前に絶対触れるな、と言われていたので、走り寄る早さは、とても早かった。Kはその時、家族のひとりと話をしていた。話をしながら、ふと庭の方に目をやった。2、3人が集まっていたのだ。
近寄って見てみると、あのMを殺した時に使ったガラスの破片を持っている少年がいた。そのガラスには、まだ血のりがついてあり、その血のりの上にうっすら、指紋が残っていた。
Kは心臓が止まる程に驚き、安定さをとり戻すのにひたすら努めた。一同はその破片の血のりから見て、Mを殺した時に使ったものだと見て、警察に届けることにした。その時、Kは一時的にそうすることに賛成していた。そして、スキを見てその破片を奪おうと考えた。少年の父親がその破片を持っていた。そして、父親が、その破片を警察に渡す用に、大切に保管しようと自分の部屋に向かうのを見て、Kはあとをつけた。
気づかれないように、あとをつけて行き、父親が置いたその破片をつつんだ包の場所を確認すると、Kはまた一同の元に戻った。しばらくして父親は一同のところへ来た。“よし、警察に電話しよう.”と一同は電話の方へ行った。Kは便所へ行く、と言い、その破片のところへ向かった。
なんとか指紋をわからなくしようと思っていたKは布を持ち、足早に父親の部屋に入った。少しふしんに思ったSはKのあとをつけていた。父親の部屋に入っていった瞬間から、疑惑は確信にかわり、走って、部屋まで行った。“貴様!”SはKの背中から飛びかかりおし倒した。
“貴様だったのか!”
Sが言う憎音に、“仕方なかったんだよ..”と小声でKは返答した。内心Kはもう何が何だかわからなくなっていて、絶望、この2文字だけがポッカリ浮かび上がっていた。
その大声に引き寄せられてきた一同は、その意外に驚いていた。ある者は泣き悲しみ、ある者は憤っていた。気がすまなかった(少年の)父親は、とにかくなぐりつけようと、Kの前へ出た。
Kを無言でにらみつけると、狂ったようになぐりかかった。Kは大声をあげて、“ごめんなさい!”“仕方なかったんだ、許してくれ!!”と何度も叫んだ。が、父親の耳には入っていなかった。
Kは突然、ヤケになり、“あ~~~!!”と叫んで、父親に飛びかかり、父親の首を持っていたガラスの破片で刺した。一同は急な現状に青ざめ、2人を引き離しKの手からガラスの破片をとり上げた。血は、その部屋一面程にとび散った。中には気を失った者もいた。やがて警察はその家に来た。―――――――――――――――――――――――――――その小さい箱には以前、その家の印かんと貯金通帳が入っていたのだ。―――
「小さい箱。」~10代から20代に書いた詩~ 天川裕司 @tenkawayuji
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