第2話 50年後の奇跡
〜 颯太 〜
オレは毎晩不思議な夢をみる…
妖狐の女の子が泣いている夢をだ…。
人が妖怪などそうそう見れるものじゃない。
ある程度の霊力があったオレは小さな時から見えない者が見えていた。
いまも
思えばいつからだろう…。
子供の頃からだっただろうか?
見た目は確かに天使のようだけど。
綺麗な金の髪の毛に白い羽…左右違う瞳の色
オッドアイっていうのか?
でも、天使の象徴というのだろうかリングが着いてない…。
まあ、どうでもいい。
オレは天使なんて信じてないから。
『ちょっと、
じゃあ、なんて言えば良いんだよ。
「天使だの神さまだのいるわけないだろ?」
『じゃ、目の前に居るボクはなんなのさ?』
「なんだろうな?妖怪変化か?」
『ひどい言い方だなぁ…。』
天使はすこしふてくされた。
(だいたい本当に天使だの神様だのが居てくれたら…。)
『オレの両親は死ななかった…と言うのかい?』
「……!」
オレの両親は小さい時に交通事故で他界した
オレはその時、奇跡的に助かったという…。
その後は父方の祖母の家に引き取られた。
「あぁ〜うるせぇ黙っとけ!」
ガチャ…ドアが開いた…
「あ…ごめん!」
「あ…祐治…。」
祐治と言うのはオレのいわゆる悪友だ…。
この学園に入学してからずっと仲良くしてくれていた。
『クスクス…。』
「ちっ…。」
オレは全寮制の学校に入った。
コレも奇跡だオレみたいな頭の悪いやつが…。
特待生だなんて有り得ない。
ただ、入学金、授業料
その他は免除って条件だった。
(なんか都合が良すぎる…。)
これ以上祖母に迷惑かけたくないってのが本心だ。
「学校行かないのかい?」
「あ?何で行くよ!」
「じゃあ早く着替えて支度しなきゃ寮母さんが朝食べに来ないって怒ってたよ。」
「ご飯は良いや。」
早々に支度してオレは学園へと向かった…。
なぜか、この町で気にいった場所がある…。
町を見下ろせる展望台だ…。
思えばこの町に来たのは2年前…。
でも昔から知っている場所の様に感じた。
「祐治、ちょっと展望台よって良いか。」
「良いけど時間ないよ?」
その少年の行動が…
運命の歯車を回した。
颯太の魂が昇天してから50年が経っていた。
長い銀髪は朝日に照らされ神秘的だった。
「この町の景色は変わってゆく…私の想いは変わらないのに…。」
(だれか来る…?)
ひと気を感じ
今は人の姿で町で暮らしている。
林の中から二人の少年が出てきた。
「おはよう
挨拶をして来たのは同じクラスの祐治さん…。
一緒にいるのは…?
「ちっ先客かよ…。」
「ほら、颯太くん挨拶しなよ。」
(えっ…?颯太…?)
「あ、お、おはよう…。」
なにか不機嫌そうだった。
夜白は気がついた彼はあの颯太の魂をもった人だと。
「あ、あの…あなたは颯太さんなの?」
「あ?そうだけどあんた誰だよ?」
魂は颯太の生まれ変わった存在だった。
育った環境で変わるものだ。
それに前世の記憶など持っているはずもない
別人なのはわかりきっていた。
感じる気配は間違いなくあの颯太のもの
確信がもてずに戸惑いを隠せないのでした。
「颯太くん言い方…!」
「いいえ、私が悪いんです…ごめんなさい。」
夜白は足早に学園に向かった
颯太の魂に会えた嬉しさと驚きとで思わず口に出てしまった。
夜白と胡桃、こむぎは人間界の勉強を兼ねて里から出て来ていた。
人間の年齢にしたら17歳程だった。
だが、それを良しとしない妖狐たちもいた。
人間と交流を再開するなどもってのほかだと
夜白は学園に着くなり深い溜め息をついた…。
「夜白ちゃん、おはよーにゃ!」
「胡桃?おはよーにゃじゃないよ!
何度も起こしにいったのに遅刻ギリギリじゃないまったくもぉ。」
双子の姉こむぎが怒る。
「あはは…ごめんにゃ。」
胡桃は元気のない夜白に気がついた。
「何かあったにゃ?」
「ううん、何でもないの…遅れちゃう行こ!」
その頃、颯太は…。
何かモヤモヤする気分になっていた。
オレはあいつを知らない、でもあいつは…知っている感じだった…。
「何なんだイライラする。」
「祐治悪いオレやっぱり休むな…。」
「ええ〜。」
そう言うと颯太は来た道を戻っていった。
「ちょっと!颯太くん!!」
寮に戻った颯太は着替えも早々にベッドに体を投げ出した…。
『あれ?戻ってきたの?ダメだなぁサボり?』
「だから、うるさいんだよオマエは!!」
『キミが心配だからだよ?』
「あ?何言ってんだよ寝るから起こすなよ!」
颯太くんキミが何者なのか知る時が来るかも知れない。
でも、今はまだその時じゃないんだ。
オレは眠りについた…。
そしてまた同じ夢を見た。
「夜白ちゃんボクはキミが好きだ…。」
いや、夢が変わった?
この場所は…町はずれの神社?
この少女は「夜白?」…いや…に似てる…?
そして、キツネを助けて死んでしまった
少年の夢も見てしまう。
「うわぁぁぁ!!」
目が覚めガバッと起き上がった。
そこには不安気に覗き込んでいた天使の顔が…。
ガツン!
『ぎゃっ!!』
『ひどいじゃないか!いきなり何するんだよ〜。』
「いってー!」
「何してるんだよオマエは!」
『うなされていたから心配だったんだよ〜。』
「まさか、オマエの
『なにが?ボクは知らないよ?』
少し寝るつもりが時計の針は既に16時を回っていた。
(神社かぁ…気になるな…出かけてくるか…。)
支度をしていると
『颯太くん、学校サボってお出かけ?』
「ちょっと買い物にな…。」
『ふ〜ん…。』
天使にはわかっていた。
颯太が夢で見た神社へ行こうとしているのを…。
『ボクはキミに幸せになって欲しい…。』
「急に何言ってんだ?」
『いや…何でもない気をつけて。』
(ボクがしっかりしていればキミのご両親は…。)
なにを言いだすんだか…。
オレが幸せじゃないみたいな…。
いや…きっとそうなんだろうな。
それにしてもあの夢…妙にリアルだったな。
キツネを自分を犠牲にして助けるなんて
いまのオレにはできないな…。
だけど夜白って何者なんだ?
なぜオレにこんな夢を見せるんだ?
神社についた…。
19時を過ぎていた。
さすがにこの時間は
静けさのせいか少し薄気味悪い雰囲気だった。
鳥居をくぐり抜け境内に入ると更に空気が変わる…。
なんとなくだけど空気が重い。
「ここが賑やかなのは夏祭りのときだけだな。」
あれ…夏祭り…?
なにか大事な事を忘れている気がする…。
何を忘れていのだろう…。
第3話につづく…。
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